佐賀大学経済学会叢書第21号
競争法における「脆弱な消費者」の法理
顧客誘引に対する規制と規律の複線化の考察岩本 諭 著
定価:12,100円(税込)-
在庫:
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発行:
2019年09月01日
-
判型:
A5判上製 -
ページ数:
534頁 -
ISBN:
978-4-7923-2737-8
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内容紹介
[目 次]
はしがき i
初出一覧 xviii
序 章 考察の背景と目的 1
第1節 本書の考察の背景とモチーフ 1
第2節 本書における考察の視座 7
(1) 競争法における「消費者概念」としての「脆弱な消費者」概念の意義に関する考察 7
(2) 競争法の消費者保護機能に関する考察 8
(3) 「脆弱な消費者」の権利と利益の実現に向けた法制度の考察 9
(4) 「消費者の年齢その他の特性への配慮」を実現するための行政規制と民事規律の「複線化」の基盤整備に関する考察 9
(5) 個々の消費者の特性を前提とした権利の実現に向けた知的基盤整備に関する考察 10
第1部 競争法と「脆弱な消費者」―問題領域の俯瞰
第1章 競争法における消費者保護の射程と「脆弱な消費者」をめぐる問題 13
第1節 本章における考察の対象 13
第2節 日本における消費者保護の法制度の生成と展開 15
(1) 消費者問題の性格・領域 15
(2) 消費者保護法制の成立と展開 17
(3) 独占禁止法の消費者保護機能をめぐる公正取引委員会の考え方 22
第3節 競争法における消費者の立ち位置 ―利益と権利の「はざま」の消費者 24
(1) 利益を享受する主体/利益を確保される客体としての消費者 25
(2) 権利の主体としての消費者 26
(3) 小括―日本の競争法における「脆弱な消費者」概念に関する議論の下地はあるか 27
第4節 「脆弱な消費者」をめぐる競争法制度の構築に向けた社会的要請 29
(1) 若年者の消費者被害の傾向と民法における成年年齢の引下げ 29
(2) 顧客誘引の秩序化に対する消費者教育の観点からの要請 34
第5節 「脆弱な消費者」問題に対する競争法の対応をめぐる論点整理 38
(1) 「消費者の年齢その他の特性への配慮」の理念と独占禁止法・景品表示法 39
(2) 競争法における顧客誘引行為の性格の再検討と法秩序形成 42
第6節 本章のおわりに 45
第2章 競争法の体系 ―ドイツ・EUの法制度の概観と日本法との比較 47
第1節 「競争法」の定義 48
第2節 競争法の目的―競争の「公正」と「自由」の確保 51
(1) 「公正競争」保護の沿革 51
(2) 自由競争の確保―市場競争秩序の形成 53
(3) 二つの競争の確保と消費者利益 55
第3節 競争法の射程と消費者保護 57
(1) 競争法と消費者問題 57
(2) EUにおける公正競争法と消費者保護 57
(3) ドイツの競争法の沿革と公正競争法における消費者保護 62
第4節 日本における競争を保護法益とする法制度63
(1) 不正競争防止法と独占禁止法の関係について 63
(2) 日本の独占禁止法と消費者法 ―両者の接点と問題解決アプローチの相違 66
第5節 「競争法」の捉え方 ―ドイツ・EUと日本の異同について 68
第3章 競争法における消費者概念 ―「脆弱な消費者」と「平均的な消費者」 71
第1節 本章の視点 ―多様な消費者と法律における消費者概念 71
第2節 ドイツ競争法(公正競争法)とEU指令の消費者の「定義」 72
(1) ドイツ不正競争防止法における消費者の「定義」 72
(2) ドイツ競争制限防止法の場合 74
(3) EU指令(2005年不公正取引慣行指令)における消費者の「定義」 74
第3節 ドイツとEUにおける「消費者概念」 75
(1) ドイツにおける初期の消費者像―消費者概念 75
(2) EUにおける消費者像―消費者概念 76
第4節 ドイツ不正競争防止法における消費者概念の導入と「子ども」概念 84
(1) EU指令に基づく不正競争防止法改正の動向 84
(2) ドイツ不正競争防止法における公正概念と消費者概念 88
(3) 「子ども」の概念 97
第5節 消費者像 ―消費者概念を持たない日本の競争法への示唆 98
(1) 競争法における消費者像=消費者概念の「不在」が持つ意味 98
(2) 消費者基本法を手がかりとする消費者像―消費者概念についての問題提起 103
第4章 「消費者の権利」と消費者概念 105
第1節 問題の所在と検討の視角 105
第2節 ケネディ特別教書と「消費者の権利」の国際的潮流 108
第3節 日本における「消費者の権利」をめぐる状況 109
(1) 消費者基本法以前における「消費者の権利」をめぐる議論 109
(2) 消費者基本法における8つの権利の規定 112
第4節 「消費者の権利」の性格 113
(1) 消費者概念と「消費者の権利」 113
(2) 請求権としての「消費者の権利」 115
(3) 消費者基本法における8つの権利の性格 116
(4) 消費者政策の評価指標としての「消費者の権利」 117
第5節 「消費者の権利」と競争法の関係と課題119
(1) 一般消費者の利益と「消費者の権利」の関係性 119
(2) 「消費者の権利」から見た独占禁止法と競争政策の課題 124
第6節 本章の総括 ―日本における「消費者の権利」の意義と機能の再確認の必要性 133
(1) 独占禁止法における行政規制と民事規律の複線化の視点 133
(2) 消費者基本法の理念に基づく独占禁止法のあり方の視点 135
第2部 ドイツとEUにおける子どもを対象とする顧客誘引に対する規制と規律
第5章 ドイツ・EUの競争法における顧客誘引規制と消費者保護 139
第1節 本章における問題認識と考察対象 139
第2節 ドイツにおける景品令の制定 140
(1) 景品・懸賞付販売と公正競争概念 140
(2) ドイツ不正競争防止法の制定 142
(3) ドイツ景品令の制定 144
(4) ドイツ景品令の内容 147
(5) ドイツ景品令の目的・保護法益と性格 148
第3節 EUにおける競争と消費者保護をめぐる動向とドイツ景品規制の転換 151
(1) 利益広告に対する規律の展開と景品規制 151
(2) EU不公正取引慣行指令のインパクト 153
(3) EU不公正取引慣行指令における景品・懸賞付販売に対する考え方 154
(4) EU不公正取引慣行指令における公正概念の一般化と景品・懸賞付に対する規律 155
第4節 競争法におけるポイントサービスの捉え方 157
(1) ドイツ不正競争防止法におけるポイントサービスに対する規律 157
(2) ドイツ競争制限防止法におけるポイント提供型顧客誘引 161
第5節 ドイツおよびEU競争法における景品・懸賞付販売に対する規律からの示唆 163
(1) 公正概念の下での景品・懸賞付販売に対する規律 163
(2) 日本法への示唆 164
第6章 子どもを対象とする顧客誘引に関する法秩序 167
第1節 問題の所在と検討の視角 167
第2節 広告と消費者問題―日本における問題の意味の確認 168
(1) 消費者問題としての子ども向け広告 168
(2) 子ども向け広告と消費者教育の立ち位置 169
第3節 EUとドイツにおける子どもを対象とする広告と法秩序 171
(1) 2005年以前におけるEU及び加盟国の法制度 171
(2) 2005年EU不公正取引慣行指令の概要と特徴 173
(3) 2005年不公正取引慣行指令(付表28号)の「子どもを対象とする広告」に対する規律の特徴 175
(4) 子ども向け広告に関する裁判例 180
第4節 子ども向け広告をめぐる日本の状況と消費者教育の実質化に向けた課題 188
第3部 日本の競争法における顧客誘引規制と「脆弱な消費者」
第7章 日本における景品・懸賞付販売の実態と競争法による規制 193
第1節 問題の所在 193
第2節 日本の景品・懸賞付販売ルールの特徴と課題 195
(1) 景品表示法における景品・懸賞付販売に対する規制制度 196
(2) 景品表示法の規制基準と日本における景品付販売の特徴 197
(3) 景品・懸賞付販売に対する規制の問題点 202
第3節 進化した景品―ボーナスポイント提供型顧客誘引に対する競争法の視点について 210
(1) 日本の法制度におけるポイントサービスの捉え方 211
(2) ポイントサービスに関する判例 217
第4節 本章における論点整理と今後の検討課題 218
(1) 論点の整理 218
(2) 今後の課題 220
第8章 広告規制と競争法 225
第1節 考察の背景―現代における広告問題の多様性と法の対応状況 225
第2節 景品表示法における広告規制 ―「表示としての広告」に対する規制 227
(1) 景品表示法の規制制度 227
(2) 広告規制における景品表示法の特徴と限界 229
第3節 独占禁止法と広告規制 234
(1) 不当な顧客誘引に対する規制の枠組 234
(2) 「顧客誘引行為としての広告」規制 235
(3) 一般指定8項の立ち位置 236
(4) 「力の濫用行為としての広告」規制 236
第4節 日本における広告規制の視点 ―「消費者の年齢その他の特性への配慮」について 237
第9章 日本の競争法における消費者保護機能の射程と課題 241
第1節 独占禁止法による「力の格差」への対応状況 241
(1) 独占禁止法の消費者保護機能の変遷 241
(2) 消費者取引と表示・広告に対する事業法規制の整備 243
第2節 民法領域における民事消費者法の整備の進展 244
第3節 消費者保護における独占禁止法と景品表示法の機能不全の要因 246
(1) 独占禁止法による「3つの格差」への対応状況―第1の要因 247
(2) 独占禁止法における消費者概念の不在―第2の要因 251
(3) 実定法における「消費者の権利」の取扱い―第3の要因 256
(4) 独占禁止法の運用上および解釈上の制約―第4の要因 257
(5) 独占禁止法違反に対する消費者による民事請求の不調 ―第5の要因 259
第10章 顧客誘引規制における規制枠組の論点 ―独占禁止法と景品表示法の関係 263
第1節 問題の所在―広告その他の顧客誘引に対する規制の枠組 263
第2節 独占禁止法と景品表示法における顧客誘引規制をめぐる立法等の状況 264
(1) 独占禁止法の制定(1947年)から同法・第3次改正前(1953年)まで 264
(2) 独占禁止法・第3次改正(1953年)から景品表示法制定前(1962年)まで 265
(3) 景品表示法制定の目的 266
第3節 景品表示法の消費者庁移管と法改正(2009年および2014年) ―法律の位置付けをめぐる問題点 268
(1) 消費者庁設置以前の枠組―独占禁止法の「特例」としての位置付け 268
(2) 2009年改正景品表示法の概要 271
(3) 2014年景品表示法改正によって導入された新たな制度と規定 276
第4節 改正景品表示法の性格をめぐる問題点の整理 280
(1) 景品表示法の「位置付け」の変化 280
(2) 独占禁止法と景品表示法の「適用」をめぐる問題 282
第5節 一般指定8項及び9項の射程と課題 287
(1) 一般指定8項と9項の射程―景品表示法との関係 287
(2) 消費者取引に適用する場合の「公正競争阻害性」の捉え方 289
第4部 競争法と消費者行政の課題―「消費者の権利」の視点からの考察
第11章 競争法と消費者行政 295
第1節 問題の所在と検討範囲 296
第2節 消費者基本法と消費者行政の展開 299
(1) 消費者基本法の理念 299
(2) 「消費者の権利」規定の導入 300
(3) 消費者行政に現れる「消費者像」と「消費者の定義」 301
(4) 消費者行政理念の中核概念としての「消費者の自立」 311
第3節 消費者基本法における消費者行政の枠組 313
(1) 消費者政策のカテゴリーと国の実施体制―2009年8月まで 313
(2) 消費者庁設置による政策執行に係る業務仕分け ―2009年9月以降 316
第4節 消費者基本法と競争政策 317
(1) 基本法における競争政策 317
(2) 基本法制定当時の公正取引委員会の考え方(1) ―競争政策のグランド・デザイン 318
(3) 基本法制定当時の公正取引委員会の考え方(2) ―消費者取引と競争政策 319
第5節 消費者庁設置を契機とする競争政策と消費者政策の関係性の変容 322
(1) 表示規制を接点とする競争政策と消費者政策 322
(2) 景品表示法の移管後の競争政策と消費者政策の課題 327
(3) 消費者取引に対する独占禁止法のスタンス 330
第6節 行政規制と民事規律による競争秩序の確保 336
第12章 自治体における競争政策と消費者政策 341
第1節 自治体における競争政策 342
第2節 自治体における消費者行政の特徴 ―(1)法律に基づく委任行政 346
(1) 自治体の消費者行政の沿革と現状 346
(2) 自治体における法律に基づく行政の現状 348
第3節 自治体における消費者行政の特徴 ―(2)条例に基づく自治行政 354
(1) 消費生活条例に定められている主な内容 354
(2) 消費生活条例の特徴と傾向 364
第4節 消費生活条例の意義と自治体行政の本旨 368
(1) 自治体消費者行政の「本旨」と消費生活条例 368
(2) 消費生活条例に関わる問題整理 369
第5節 おわりに―自治体における消費者行政の喫緊課題の確認 381
(1) 自治体における「消費者の年齢その他の特性への配慮」規定の具体化の要請 383
(2) 自治体消費者行政を補完する適格消費者団体に対する認識の必要性 386
(3) 消費者教育推進政策の実効性の確保 389
(4) 自治体の消費者行政に対する評価・検証と説明責任 ―自主財源の確保のための視点 391
第13章 適格消費者団体の役割と制度上の課題 ―「消費者の権利」と「消費者の年齢その他の特性への配慮」からの問題整理 395
第1節 考察の目的および視角 395
第2節 消費者問題の質的・量的な領域拡大と消費者行政の限界―本考察の背景事情 396
(1) 競争法規制が及ばない問題領域の増加 398
(2) 消費者の「特性」ないし「多様性」への対応の要請 399
(3) 小括―「消費者の自立」支援行政の推進と民事規律の制度拡充 401
第3節 消費者行政のフレームワークとしての消費者基本法の2つの理念 402
(1) 日本における消費者行政の沿革と転換 402
(2) 日本における「消費者の権利」と「消費者の年齢その他の特性への配慮」規定の意味と内容 404
(3) 小括 406
第4節 消費者団体と適格消費者団体制度の関係性 ―消費者運動の変容の視点から 406
(1) 適格消費者団体制度創出に至る背景 407
(2) 消費者団体の設立件数、設立形態の動向 408
(3) 近年(2008年および2014年)の消費者団体の状況 409
(4) 消費者団体の活動内容の変化 410
(5) 適格消費者団体の存在意義 ―「消費者の組織化」の観点からの諸見解 412
第5節 適格消費者団体制度と「消費者の権利」 415
(1) 適格消費者団体制度の趣旨 415
(2) 適格消費者団体の権限と「消費者の権利」 416
第6節 適格消費者団体制度の存続と実質化に向けた課題 419
第5部
消費者政策としての消費者教育の意義と展開
第14章 消費者の「保護」と「自立」 ―消費者政策の方向性と課題 427
第1節 問題の所在と考察の視点 427
第2節 日本の消費者政策の理念としての「自立」の意味 429
(1) 消費者政策の理念と消費者―「保護」と「自立」の関係について 429
(2) 「消費者の権利」と消費者の自立性 434
第2節 日本の消費者政策の理念・方向性と課題 438
(1) 「消費者の自立」から見た独占禁止法に基づく消費者政策 438
(2) 「消費者の自立」から見た景品表示法 440
(3) 「消費者の自立」から見たその他の広告・表示規制―個別法における事前規制型 443
(4) 「消費者の自立」から見た消費者取引と安全確保の法制度 444
第3節 消費者の「自由」と「権利」のための基盤整備の必要性 448
(1) 「消費者の権利」のための消費者行政の構築 448
(2) 消費者教育推進法の目的・理念と「消費者の権利」の関係 450
第15章 消費者基本法と消費者教育の意義 453
第1節 本章の目的―法学の視座からの問題整理 453
第2節 「消費者の権利」と消費者教育 454
(1) 「消費者教育を受ける権利」と消費者教育推進法 454
(2) 消費者行政の理念と消費者教育 457
第3節 消費者教育領域における消費者市民社会の意味と位置付け 460
(1) 消費者教育推進法制定以前の「消費者市民社会」 460
(2) 消費者教育推進法における「消費者市民社会」概念 461
(3) シチズンシップの前提としての市民社会と日本の状況 463
(4) 消費者市民社会を理念とする日本の消費者教育の役割 464
第4節 推進法制定後の消費者教育政策の課題 466
(1) 民法「成年年齢引下げ」に対応した消費者教育の実質化の要請 466
(2) 教育内容の充実化の要請 468
第5節 法学領域における消費者市民社会の受容と検討課題 470
(1) 「消費者の権利」と消費者概念 470
(2) 消費者市民社会と市民社会の関係性について 473
(3) 「消費者の権利」と「事業者の権利」について 475
(4) 法学における「消費者」と「権利」の新たな位置付けに向けて 476
結 章 消費者のための法秩序の構築に向けて477
第1節 「脆弱な消費者」の法理の意味477
(1) 消費者基本法の基本理念と競争法の整合確保の視点 477
(2) 競争法における行政規制と民事規律の複線化の視点 480
第2節 消費者概念の変容 ―今後の検討課題として 483
(1) 「消費者の自立」についての理解の試論 484
(2) 消費者市民社会における「消費者」の捉え方 ―今後の考察のための視点 486
主要参考文献一覧 491
事項索引 510