定型約款の法理

定型約款の法理

―類型づけられた集団的意思のあり方―
吉川吉衞 著
定価:14,300円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2019年11月15日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    648頁
  • ISBN:
    978-4-7923-2745-3
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内容紹介

[目 次]

はしがき  i
総序  iii
略語表  viii

序章 基礎視座   1
はじめに   1
第1節 約款による契約   2
第2節 企業観の変化―1970年代―   4
第3節 現代   6
第4節 業法の諸規定と契約法の変容の一斑   7
第5節 私的モメントと公的モメント―「約款による契約」と「現代における約款による契約」―   9
第6節 法の動態   10
 6.1 課題設定―約款変更の既存契約に対する効力(変更約款の効力)   10
 6.2 裁判例の分析   10
 6.3 結 論   20
第7節 第一義的に当事者の意思   21
むすび   22

第1章 問題の所在   43
 1.1 約款現象の問題性格と問題の提起   43
 1.2 歴史的視角と「多元的」把握   45
 1.3 約款問題へのアプローチ   47

第2章 約款拘束力の法律構成   63
はじめに   63
第1節 法規型の理論構成   64
 1.1 自治法説   64
 1.2 「多元的」把握説   64
第2節 契約型の理論構成   66
 2.1 指定説   66
 2.2 白地慣習(法)説   68
 2.3 制度説   68
 2.4 組入合意説   69
 2.5 客観的意思説   70
 2.6 「意思の推定」説   71
第3節 客観的合意説の展開   72
 3.1 現代保険約款(広義の公企業約款)   72
 3.2 広義の公企業約款のほかの約款   77
 3.3 続く課題   78

第3章 約款解釈の枠組み構築   97
はじめに   97
第1節 約款文言の解釈   98
 1.1 解釈の統一基準としての信義則   98
 1.2 解釈の諸原則   98
 1.3 個別事情考慮の問題   100
 1.4 「修正的解釈」と例文解釈   103
 1.5 まとめと続く課題   104
第2節 約款の内容的限界づけ―約款のいわゆる「一部無効」等―   105
 2.1 問題の提起   105
 2.2 契約自由の限界(公共の利益)説   109
 2.3 社会的法治国家原理説   113
 2.4 私的自治限界説―2017年改正日本民法(定型取引)に通ずるFlume学説   118
 2.5 第一の中間的考察(問題の所在の確認)   128
 2.6 意思-合意限界説   131
 2.6a 第二の中間的考察(Flumeの理論やAGBG、BGB、改正日本民法の規定の共通性:定型取引と正当な無知)   143
 2.7 同意範囲説   144
 2.8 決定自由侵害説    147
 2.9 第三の中間的考察(任意法規の果たす役割)   151
 2.10 諸説の総括   153
第3節 解釈枠組みの提示   154
 3.1 約款の類型づけ   154
 3.2 約款文言の解釈   154
 3.3 約款の内容的限界づけ   157
 3.4 約款のいわゆる「一部無効」   159
 3.5 約款の解釈枠組み   161
 3.6 証明責任   164
 3.7 広義の公企業約款のほかの約款の解釈枠組み   165
第4節 客観的合意説に基づく解釈の具体例   166
 4.1 取引制度の構造と大数の法則―保険料前払方式2つ   166
 4.2 承諾前死亡問題   171
 4.3 「責任持ち」特約問題   173
 4.4 保険料支払場所問題   176
第5節 結論―第1章から第3章までの総括―   179

第4章 定型約款の規定に関する解釈   285
まえおき 希薄な合意と客観的合意   285

(1)問題の所在   285
(2)2006年現在の理論状況   286
(3)中間試案から部会資料75Bへ―表示に関する請求構成   287
プロローグ   288
(1)定型約款の規定の構造   288
(2)定型約款のみなし合意   294
(3)定型約款の内容の表示に関する請求構成   296
(4)定型約款の内容規制(内容的限界づけ)   297
(4a)定型約款の内容規制(内容的限界づけ)の効果―約款一部無効類似問題の発生   300
(5)定型約款の変更   301
(6)規定のあり方〔〈「定型取引」を核心とする規定のあり方〉〕と客観的合意説の位置   304
(7)規定のさらなる解釈のあり方―いちおうの総括を踏まえて   306
第1節 定型約款の組入れ ―「定型取引合意」(合意と表示と公表[特例規定])―   307
第2節 「定型取引合意」における主観的意思と客観的合意   311
 2.1 「定型取引合意」における主観的意思   311
 2.2 「定型取引合意」における客観的合意―平均的顧客   311
 2.3 定型約款準備者の相手方における主観的意思と客観的同意との関係― 一枚のものの表と裏   313
 2.4 「定型取引合意」における主観的意思と客観的合意との関係―関連づけられる、定型約款準備者と相手方の意思(〈関連づけられる意思〉)   313
2.5 まとめ   315
第3節 定型約款の内容規制(内容的限界づけ)における主観的意思と客観的合意 ―定型約款の拘束力の根拠と内容的限界づけの基準―   316
第4節 定義を踏まえた、組入れ、内容規制(内容的限界づけ)のまとめ   317
第5節 「定型約款の変更」における主観的意思と客観的合意   318
 5.1 平均的顧客における通常の意思―定型約款の変更と変更条項の有無   318
 5.2 変更後の定型約款の条項に関する拘束力の根拠   319
 5.3 変更後の定型約款の条項に関する内容規制(内容的限界づけ)の基準   321
 5.4 まとめ    322
第6節 まとめ―定型約款による契約とその継続的取引―   322
エピローグ   324
2014年(平成26年)から2015年(同27年)にかけての民法(債権関係)改正作業―どういう事態であったのか(取引コストの節約と約款規律)   324
補遺1 定型約款の組入れと黙示の合意   327
 1.1 問題の所在   327
 1.2 部会や国会の審議   328
 1.3 「合意」、「あらかじめ……表示」と「公表」との区別と関連(共通性)―黙示の合意   330
補遺2 定型約款の変更と「社会通念」を取り込んだ〈希薄な黙示の合意〉   332
 2.1 問題の所在   332
 2.2 裁判例の分析―「取引上の社会通念」と変更約款の効力   333
 2.3 学説の吟味   349
 2.4 部会や国会の審議―1対不特定多数の取引に関する制度   357
 2.5 〈関連づけられる意思〉―「社会通念」を取り込んだ〈希薄な黙示の合意〉   358
 2.6 まとめ―「合意」のみかた   360

第5章 定型約款と希薄な合意―河上正二の批判―   411
第1節 問題の所在   411
第2節 河上正二の、吉川吉衞客観的合意説に対する3つの批判―山下友信法律行為的合意説との対比において―   412
第3節 「個別事情」―第1の批判と反論―   414
 3.1 フレームの整合性と引換えの、主観的意思と客観的意思の軋轢と、その解消・調和   414
 3.2 個別事情考慮の問題   416
 3.3 まとめ―特約書等による修正がなければ「定型約款」   419
第4節 「擬制の上に擬制」―第2の批判と反論―   419
第5節 組入れ規制と内容規制(内容的限界づけ)の一体化 ―第3の批判と反論―   421
第6節 むすび   424

第6章 定型約款による契約の構造 ―その契約の合意のあり方―   429
第1節 本章の課題   429
第2節 森田(2016b)における約款規制   430
 2.1 分析課題3つ   430
 2.2 「3つの『合意』概念の整理」   431
 2.3 「みなし不合意」   434
 2.4 約款変更   436
 2.5 まとめ―森田(2011)と同(2016b)   439
第3節 内田貴による客観的合意説の評価   440
 3.1 内田の学問   440
 3.2 内田による客観的合意説の捉え方   443
 3.3 まとめ   445
第4節 類型づけられた集団的意思のあり方 ―客観的合意説骨子の再論―   446
 4.1 定型約款による契約の当事者の意思―裁判実務との連続性   446
 4.2 集団的意思(α)―対価性確保の期待   447
 4.3 集団的意思(β)―顧客圏における平均的顧客の一般的な合理的理解可能性   449
 4.4 類型づけられる集団的意思   451
第5節 改正民法における客観的合意説の位置の再確認   453
 5.1 客観的合意説の基本理論(吉川(衞),1978b, 1980a〔第1章から第3章まで〕)の検討と、定型約款に関する規定の分析   453
 5.2 定型約款による契約の合意のあり方   455
 5.3 まとめ―全体として1つの枠組みにおける客観的・合理的基準   458
補遺1 ドイツにおける不意打ち条項規制の解釈の基準との比較 ―日本改正民法制定・公布時点での再考察により得られる結論―   459
 1.1 問題の所在と確認―何故、比較を行うのか   459
 1.2 ドイツにおける解釈の基準   462
 1.3 まとめ―定型約款は、社会の要求(星野英一)を受けとめた新しい概念   468
補遺2 定型約款の「公表」の実態調査に基づく考察 ―JR各社の駅の掲示物―   474
 2.1 鉄道運送法制の概略―旅客営業規則の位置   474
 2.2 JR東日本首都圏   475
 2.3 JR各社   477
 2.4 公表(定型約款による旨と主要条項趣旨の掲示)―提言   481
 2.5 提言の実践と理論   482

第7章 「定型取引」と正当な無知―むすび―   519
第1節 はじめに―〈「定型取引」を核心とする規定のあり方〉―   519
第2節 「定型取引」における正当な無知   520
 2.1 「定型取引」を核心とする約款規制―レモンの市場   520
 2.2 相手方の正当な無知   522
 2.3 市場が求めるオーソライズされたルール   525
第3節 我が国最新学説と客観的合意説   526
 3.1 問題の所在―沖野(2018)、石川(2018)ほか   526
 3.2 個別合意原則と個別合意擬制   529
 3.3 「止揚」―客観的合意説   529
第4節 W. フルーメ学説と客観的合意説   531
 4.1 特別な取引類型または法制度(フルーメの主張)   531
 4.2 自己決定―法律行為の真髄   532
 4.3 定型約款の組入れとみなし合意や黙示の合意、そして定型約款の変更と〈希薄なみなし合意〉や「社会通念」を取り込んだ〈希薄な黙示の合意〉   534
第5節 結語   536


図3-1 内容コントロールの相関図   163
図4-1 契約一般と約款や定型約款による契約   293
図4-2 公共サービス等の取引類型に関する約款や定型約款による契約   293
図4-3 改正民法(要綱仮案(案))   298
図4-4 客観的合意説   305
図4-5 中間試案   310

あとがき   549
引用文献一覧   551
判例索引   619
人名索引   623
事項索引   625