金融法の現在と未来

金融法の現在と未来

神吉正三 著
定価:7,700円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2020年09月10日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    464頁
  • ISBN:
    978-4-7923-2756-9
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内容紹介

《目次》

Ⅰ 協同組織金融機関における地区の意義

序章 問題の所在 ………………………………………………………… 3
第1章 産業組合とは ………………………………………………………… 9
第2章 協同組織金融機関と人的結合のための要素 …………………………………… 14
  1.各協同組織金融機関法における人的結合のための要素 (14)
 2.人的結合のための要素の必要性 (18)
 3.産業組合・協同組合と地域性 (21)
 4.人的結合のための要素としての地域性 (27)
第3章 産業組合法における地区の取扱いとその変遷 ………………………………… 31
  1.産業組合法制定時の信用組合の地域性 (31)
  2.産業組合法9条1項3号ノ2の追加 (34)
  3.市街地信用組合制度の創設 (36)
 (1) 市街地信用組合制度創設の経緯 (36)
  (2) 市街地信用組合制度創設の意義 (43)
  (3) 市街地信用組合における区域の意義 (45)
 4.市街地信用組合法の制定 (49)
第4章 協同組織金融機関における地区 ………………………………………………… 55
 1.地区を定めることの意義と効果 (55)
 2.地区を定める必要性 (58)
第5章 労働金庫における地区 ………………………………………………………… 64
結章  結語に代えて ………………………………………………………… 69

Ⅱ 銀行業と商業の分離政策と異業種による銀行業への参入 -ワンウェイ規制を見直すべきか? -

序章 ………………………………………………………… 79
第1章 銀行業と商業の分離 ………………………………………………………… 81
第2章 異業種による銀行業への参入ルールの整備 …………………………………… 83
第3章 ワンウェイ規制に対する評価 …………………………………………………… 87
第4章 ワンウェイ規制を見直すべきか ………………………………………………… 89
結 章 ………………………………………………………… 93

Ⅲ 銀行株式会社とその株主権に関する序論的考察

序章 ………………………………………………………………………………………… 99
第1章 銀行が株式会社であることの意義 …………………………………………… 104
第1節 立法趣旨 …………………………………………… 104
第2節 学  説 …………………………………………… 108
第3節 本章のまとめと若干の考察 …………………………………………… 109
第2章 銀行株式会社における株主及びその株主権 ………………………………… 115
第1節 株主及び株主権の取扱い …………………………………………… 115
  1.取締役等の適格性要件 (115)
2.利益準備金の積立ての強化 (116)
3.株主等の帳簿閲覧権の否定 (117)
4.銀行主要株主に係る認可制 (117)
5.銀行主要株主の株主有限責任の否定 (119)
第2節 本章のまとめと若干の考察 ………………………………………………… 120
結章 ………………………………………………… 124

Ⅳ 預金者の法的地位 -銀行のコーポレート・ガバナンスの視点から-

第1章 問題の提示 ………………………………………………… 127
第2章 債権者としての地位 ………………………………………………… 133
 第1節 予備的考察 ………………………………………………… 133
  1.預金の定義および法的性質 (133)
2.預金の機能 (136)
3.預金の元本保証 (140)
4.預金者に対する銀行の義務 (142)
(1) 一般的義務 (142)
(2) 預金の保管に際しての注意義務 (143)
第2節 預金者の法的地位 ………………………………………………… 146
1.一般的考察 (146)
2.社債権者との対比 (147)
3.債権者としての責任追及 (149)
第3章 金融監督法による保護の対象としての地位 ………………………………… 152
 第1節 予備的考察 ………………………………… 152
1.預金者が保護される理由 (152)
(1) 学説の整理 (152)
(2) 預金者保護に関する視点 (154)
(3) 預金者保護の意義の捉え方 (157)
  2.預金者保護の内容 (158)
(1) 「預金者の保護」と「銀行経営の健全性」維持との関係 (160)
(2) 「銀行経営の健全性」に言及する銀行法の条文 (161)
 第2節 預金者の法的地位 ………………………………… 166
1.一般的考察 (166)
2.預金者と監督当局との関係 (168)
第4章 ステークホルダーとしての地位 ………………………………… 173
 第1節 予備的考察 ………………………………… 173
1.銀行株式会社のステークホルダーと株主利益最大化 (173)
2.銀行の貸借対照表の特徴 (175)
3.銀行株式会社における株主利益最大化原則 (177)
4.銀行における企業価値の最大化 (180)
第2節 預金者の法的地位 ………………………………… 182
1.銀行株式会社における株主と預金者のコントロール権の調整 (182)
(1) 一般的考察 (182)
(2) 銀行株式会社において株主から預金者にコントロール権の移る時期 (185)
2.資本代替的な預金の存在と預金者の銀行経営への関与 (188)
第5章 市場規律の担い手としての地位 ………………………………… 191
 第1節 予備的考察 ………………………………… 191
 第2節 預金者の法的地位 ………………………………… 193
1.市場規律における預金者の役割 (193)
2.情報開示に関する問題 (196)
第6章 結語 ………………………………… 201

Ⅴ 大口信用供与規制の遵守と銀行取締役の責任

序章 問題の提示 ………………………………………………… 205
第1章 大和信用組合事件判決 ………………………………………………… 208
第1節 事実の概要 ………………………………………………… 208
第2節 判決の概要 ………………………………………………… 209
1.善管注意義務違反の判断基準 (209)
2.大口信用供与規制違反に対する評価 (210)
3.善管注意義務違反の有無 (211)
4.損 害 額 (211)
第3節 若干の考察 ………………………………………………… 211
第2章 大口信用供与規制の意義とその歴史 ………………………………………… 213
第1節 銀行規制の意義と大口信用供与規制の位置付け ………………………… 213
第2節 大口信用供与規制の歴史 ………………………………………………… 216
1.銀行条例の制定と第5条の削除 (216)
2.旧銀行法の制定と大口信用供与規制 (220)
3.大蔵省による行政指導と大口信用供与規制 (225)
第3節 大口信用供与規制の概要と規制の目的 …………………………………… 232
1.大口信用供与規制の概要 (232)
2.大口信用供与規制の目的とその評価 (234)
第3章 アメリカ法における大口信用供与規制 ……………………………………… 239
第1節 規制の概要と規制の目的 ………………………………………………… 239
第2節 違反の効果 ………………………………………………… 241
1.概   要 (241)
2.制定法上の民事責任 (242)
(1) 1回の取引で限度額を超過した場合 (243)
(2) 複数回の取引で限度額を超過した場合 (245)
3.銀行監督権限に基づく制裁 (246)
(1) 排除命令(cease and desist order) (247)
(2) 解任と停職の命令 (247)
(3) 民事制裁金(civil money penalty) (248)
第3節 小   括 ………………………………………………… 249
第4章 日本法における大口信用供与規制 …………………………………………… 251
第1節 法令遵守義務 ………………………………………………… 251
1.会社と取締役の法令遵守義務 (251)
2.銀行と銀行取締役の法令遵守義務 (252)
(1) 厳格な法令遵守義務 (252)
(2) 銀行と銀行取締役の法令遵守義務の意義 (256)
第2節 銀行法13条の規制構造に関する評価 ……………………………………… 258
1.罰則のない点に関する評価 (258)
2.政令への委任事項を含む点に関する評価 (260)
第3節 商法266条1項5号の「法令」の意義  …………………………………… 261
1.学説の状況 (262)
2.判   例 (264)
3.私   見 (266)
第4節 大口信用供与規制違反と銀行取締役の責任 ……………………………… 269
1.銀行取締役の銀行に対する責任 (269)
2.信用組合の理事の組合に対する責任 (273)
3.決裁権限に関する問題 (276)
(1) 大口信用供与規制の遵守体制 (276)
(2) 取締役会の権限との関係 (278)
第5節 大口信用供与規制違反と銀行の損害 ……………………………………… 282
1.融資実行における銀行の損害 (282)
2.大口融資規制違反における銀行の損害 (284)
第6節 銀行監査役の責任と監督当局による監督 ………………………………… 285
結章 ………………………………………………… 287

Ⅵ 銀行法上のアームズ・レングス・ルールに関する総合的研究

序章 ………………………………………………… 293
第1章 アームズ・レングス・ルールの内容とその歴史 ……………………………… 296
第1節 アームズ・レングス・ルールの概要 ……………………………… 296
第2節 アームズ・レングス・ルールの歴史 ……………………………… 297
1.1993(平成5)年金融制度改革 (297)
2.1998(平成10)年の持株会社制度の解禁に伴う銀行法改正 (299)
3.2002(平成14)年と2006(平成18)年の銀行法改正 (302)
4.2016(平成28)年の銀行法改正 (304)
第3節 アームズ・レングス・ルールの意義と規制の内容 ………………………… 306
1.アームズ・レングス・ルールの意義 (306)
2.条文における規制の構造 (310)
3.規制の対象となる相手方 (311)
(1) 特定関係者 (311)
(2) 特定関係者の顧客 (314)
4.規制の対象となる取引の内容 (315)
(1) 13条の2第1号(施行規則14条の10) (315)
(2) 13条の2第2号(施行規則14条の11) (316)
(3) 取引・行為の具体的内容 (318)
5.アームズ・レングス・ルールの適用除外 (321)
(1) 「やむを得ない理由」(施行規則14条の8第1項) (321)
(2) 「要件」(施行規則14条の8第2項) (323)
(3) 適用除外に関するまとめ (324)
6.監督指針におけるアームズ・レングス・ルールの取扱い (324)
7.バーゼル銀行監督委員会とアームズ・レングス・ルール (327)
(1) コア・プリンシプルの内容 (327)
(2) コア・プリンシプルとわが国の法制度との対比 (330)
8.金融検査におけるアームズ・レングス・ルールに関する指摘 (334)
第4節 アームズ・レングス・ルールに関する評価と考察 ………………………… 338
1.規制の目的 (338)
2.規制構造の複雑さとわかりにくさ (339)
3.規制の厳格さ (341)
4.特定関係者とその顧客の範囲の広さと銀行側の管理の困難性 (342)
5.「取引の通常の条件」を確定することの難しさ (344)
6.グループ経営の円滑な遂行との関係 (348)
(1) グループ経営とアームズ・レングス・ルールとの関係 (348)
(2) 会社法120条とグループ経営との関係 (349)
(3) アームズ・レングス・ルールをグループ経営にどのように機能させるか (350)
7.銀行取締役の善管注意義務・忠実義務との関係 (353)
8.他の規制方法に関する検討 (355)
第5節 本章のまとめと考察 ………………………… 358
第2章 関連当事者との取引の開示 ………………………… 362
第1節 制度の概要 ………………………… 362
1.制度の概要と趣旨 (362)
2.注記が果たす機能と役割 (364)
第2節 「関連当事者」の範囲 ………………………… 367
第3節 注記すべき事項 ………………………… 370
1.関連当事者に関する事項 (370)
2.取引に関する事項 (371)
3.小括 (373)
第4節 注記の実例 ………………………… 373
第5節 関連する制度とその内容 ………………………… 377
1.親会社等との間の取引 (377)
2.コーポレートガバナンス・コード (380)
第6節 本章のまとめと考察 ………………………… 380
1.本章のまとめ (380)
2.関連当事者との取引の開示とアームズ・レングス・ルールとの関係 (381)
第3章 利益相反取引とアームズ・レングス・ルール ………………………… 384
第1節 利益相反取引の規制に関する概観 ………………………… 384
第2節 利益相反取引の類型化 ………………………… 385
1.自己取引・双方代理に関する規制 (386)
2.専門家責任 (388)
3.他人の財産を管理する者 (390)
4.金融商品取引業者 (392)
5.その他一定の「業」を営む者 (393)
6.忠実義務に関する解釈と取扱い (394)
第3節 銀行法における利益相反取引 ………………………… 395
第4節 本章のまとめと考察 ………………………… 397
1.利益相反取引に関するまとめ (397)
2.銀行法13条の3の2とアームズ・レングス・ルール (398)
結章 ………………………… 400
第1節 アームズ・レングス・ルールに関する評価 ………………………… 400
第2節 関連当事者との取引の開示制度と利益相反取引の規制との関係 ………… 403

Ⅶ メインバンク関係の将来展望  -法律学の立場から-

序章 ………………………… 407
第1章 メインバンク関係を扱う判例 ………………………… 411
第1節 メインバンクの関係当事者に対する法的義務に関する判例 ……………… 411
1.東京地判昭和63年5月26日金判823号27頁 (411)
2.札幌地判平成9年5月26日判タ961号185頁 (412)
第2節 メインバンクのメインバンク先に対する融資の決裁に関する判例 ……… 414
1.東京地判平成14年7月18日判時1794号131頁(日本長期信用銀行EIE第一次訴訟第一審判決) (414)
2.東京地判平成16年3月25日判時1851号21頁(日本長期信用銀行ノンバンク事件) (415)
第3節 小括 ………………………… 416
第2章 メインバンク関係の形成要因 ………………………… 418
第1節 緒   言 ………………………… 418
第2節 倒産の概念 ………………………… 418
第3節 倒産に対するわが国社会の対応 ………………………… 420
第4節 メインバンク関係を構築する企業側の動機 ………………………… 422
第3章 倒産をめぐる環境の変化-倒産回避から事業の早期再生へ- ………… 424
第1節 手形離れの急速な進行 ………………………… 424
第2節 倒産処理手続の動向 ………………………… 424
第3節 企業の延命から早期事業再生へ ………………………… 426
第4節 メインバンクの地位の後退 ………………………… 427
第4章 メインバンク関係をめぐる環境の変化 ………………………… 429
第1節 取引慣行の変化-新しい融資慣行の広がり ………………………… 429
第2節 銀行をめぐる経営環境の変化 ………………………… 430
第5章 銀行をめぐる法的環境の変化 ………………………… 431
第1節 法律の改正による銀行に対する規制の強化 ………………………… 431
1.独占禁止法の改正と運用の強化(優越的地位の濫用規制) (431)
2.銀行法の改正 (434)
(1) 優越的地位の濫用規制 (434)
(2) 利益相反管理体制の構築 (434)
 第2節 裁判実務の動向 ………………………… 436
1.融資決裁における銀行取締役の注意義務 (436)
2.代表訴訟 (439)

結章 ………………………… 442


初出一覧

Ⅰ 協同組織金融機関における地区の意義
RESEARCH(労働金庫研究所)21号(2010年)3頁?50頁

Ⅱ 銀行業と商業の分離政策と異業種による銀行業への参入-ワンウェイ規制を見直すべきか?
村田彰先生還暦記念論文集編集委員会編『現代法と法システム』(酒井書店、2014年)445頁?461頁

Ⅲ 銀行株式会社とその株主権に関する序論的考察
流経法学4巻2号(2004年)1頁?30頁

Ⅳ 預金者の法的地位-銀行のコーポレート・ガバナンスの視点から
流経法学5巻2号(2005年)1頁?86頁

Ⅴ 大口信用供与規制の遵守と銀行取締役の責任
序章?第3章  流通経済大学法学部開校記念論文集編集委員会編『流通経済大学開校記念論文集』(2002年、流通経済大学出版会)125頁?176頁
第4章?結章  流経法学2巻1号(2002年)1頁?42頁

Ⅵ 銀行法上のアームズ・レングス・ルールに関する総合的研究
序章?第1章  龍谷法学52巻1号(2019年)33頁?52頁
第2章以下   書き下ろし

Ⅶ メインバンク関係の将来展望-法律学の立場から
小出篤=小塚壮一郎=後藤元=潘阿憲編『前田重行先生古稀記念 企業法・金融法の新潮流』(商事法務、2013年)427頁?462頁
※ただし、第1章は初出。

初出以外の論文は、本書への掲載に際して加除修正を行うとともに、平成17年改正前商法や平成18年改正前証券取引法といった法律の引用に際して、現行法の名称と条数を可能な限り〔 〕内に注記した。