著作隣接権の理論

著作隣接権の理論

本山雅弘 著
定価:7,700円(税込)
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  • 発行:
    2021年03月20日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    464頁
  • ISBN:
    978-4-7923-3407-9
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内容紹介

目 次

 はしがき i

第1部 問題の所在

第1章 「著作隣接権」概念の意義に対する疑問―本書の課題3

第2章 本書の構成10

第2部 ドイツ著作隣接権概念の意義

序章 考察の方法と用語17

第1章 著作隣接権概念の生成背景19

第2章 著作隣接権概念の生成26

第1節 給付保護権(Leistungsschutzrecht)概念の誕生期26

第1項 エルスターの問題提起26

⑴ 序26
⑵ 「著作権の競争的限界づけと内的限界づけ」(Die wettbewerbliche und
die immanente Begrenzung des Urheberrechts, GRUR 1926, S. 493 ff.)27
⑶ 「二次創作的芸術家の著作権なるものは存在するのか?」(Gibt es ein
Urheberrecht des nachschaffenden Künstlers?, GRUR 1927, S. 42 ff.)30
⑷ 「著作権に代わる雛形保護―間近に迫った法改正にとっての緊要な課題」(Musterschutz statt Urheberrecht―Eine dringende Frage für die
bevorstehende Gesetzesreform, JR 1928, S. 276 ff.)34
⑸ 「著作権の真の国際的統一および個別の国内著作権法の改正に向けた必須の
基礎的問題」(Notwendige Vorfragen für eine wirkliche internationale
Angleichung des Urheberrechts, sowie für die Reform einzelstaatlicher
Urheberrechtsgesetze, GRUR 1929, S. 71 ff.)38
⑹ 「実演家の給付保護権」(Das Leistungsschutzrecht des ausübenden
Künstlers, UFITA 1930, S. 574 ff.)40
⑺ エルスター所説の総括43

第2項 学説の反応45

⑴ 序45
⑵ ホフマンの見解①(Studien zur Revision der Rev. Berner
Uebereinkunft, Ⅴ. Das Urheberrecht des nachschaffenden
Künstlers, GRUR 1927, S. 69 ff.)47
⑶ ホフマンの見解②(Gedanken zur Systematik eines deutschen
Urheberrechtsgesetzes, GRUR 1931, S. 706 ff.)49
⑷ ホフマンの見解③(Das Schallplattenkonzert der
Rundfunkgesellschaften, GRUR 1932, S. 44 ff.)52
⑸ バウムの見解(Rundfunk und Schallplatte, GRUR 1932, S. 259 ff.)53
⑹ 学説反応の総括55

第3項 まとめ56

第2節 給付保護権概念の揺籃期58

第1項 序58

第2項 産業的権利保護としての給付保護権60

第3項 ホフマンの法律草案62

⑴ 序62
⑵ 給付保護概念の成文化62
⑶ 給付保護概念の意義65

第4項 エルスターによる理論展開67

⑴ 価値的基準論の支持67
⑵ 「隣接的権利領域」の概念の発見71
⑶ 著作権法体系の基本構想と著作隣接権概念の生成73

第5項 法改正の提案内容にみる新概念の使用78

⑴ 1931年GRUR協会陳情書78
⑵ 1932年・1934年ライヒ司法省草案80
⑶ 1939年ドイツ法アカデミー草案84

第6項 まとめ88

⑴ 給付保護権概念の理論射程の拡大89
⑵ 価値的基準論の生成と給付保護権概念の意義の再構成90
⑶ 著作隣接権概念の生成と同概念を要する問題意識の一般的共有91

第3節 総 括92

第1項 著作隣接権概念の生成意義92

第2項 生成意義解明作業の位置づけ―先行ドイツ法研究の不在96

第3項 再びホフマンの見解と新たな課題100

第3章 著作隣接権概念の確定―複合的意義の探究104

第1節 本章の課題104

第2節 著作隣接権概念の生成意義の展開106

第1項 意匠ないし応用美術の保護106

⑴ 意匠保護制度の著作隣接権の枠組みへの位置づけ106
⑵ ドイツ意匠法の性質―著作権法との段階的な関係107
⑶ 著作権法と旧意匠法の体系的関係と著作隣接権概念112

第2項 写真の保護113

⑴ フープマンの体系論とウルマーの体系論113
⑵ 現行法の立法過程にみる写真の著作隣接権制度の意義116

第3項 実演の保護119

⑴ フープマンの見解120
⑵ ウルマーの見解122
⑶ LUG 2条2項の性質論に関する最高裁判決125
 ① 「フィガロの結婚」事件125
 ② 「グラウンケ・オーケストラ」事件129
 ③ 旧実演保護制度の人格権構成論による理解131
⑷ 現行法立法理由書の見解と現行法下の下級審裁判例における解釈論133
 ① 現行法の立法理由書にみる見解133
 ② 下級審裁判例における解釈論135
⑸ 学説の論争―解釈行為保護説と人格権保護説137
 ① デュンバルトの解釈行為保護説137
 ② ヘルティンの人格権保護説140
⑹ 連邦通常裁判所による解釈行為保護説の採用141
⑺ 実演保護における著作隣接権概念の意義145

第4項 まとめ―生成意義の承継・維持146

第3節 著作隣接権概念の発展的意義の解明149

第1項 発展的・副次的意義の萌芽149

第2項 レコード盤の著作隣接権とその意義152

第3項 放送の著作隣接権とその意義156

第4項 映画製作者に関する著作隣接権の発見とその意義161

第5項 まとめ―発展的意義の内容167

第4章 著作隣接権概念の意義169

第1節 生成意義と発展的意義169

第2節 結論とドイツ法学説および近年の法展開に照らした

その評価172

第1項 結 論172

第2項 ドイツ法学説の到達状況に照らした評価173

第3項 近年の法展開に照らした評価176

⑴ 生成意義と近年の法展開176
⑵ 発展的意義と近年の法展開180
⑶ 著作隣接権概念の複合的意義の今日的評価181

第3部 1961年ローマ条約と著作隣接権概念との関係

第1章 検討課題185

第2章 ローマ条約の概観187

第1節 条約成立の沿革187

第2節 最終草案および条約採択をめぐる議論192

第3節 条約成立の背景に窺う著作隣接権概念の位置づけ196

第3章 ローマ条約の規定内容と著作隣接権概念の欠缺199

第4章 ローマ条約の規律対象と国内法の関係

―その規律意図の存否201

第1節 条約の原則的規律対象としての渉外関係
(international situations)201

第1項 規律対象の原則201

第2項 内国民待遇の定義202

第3項 内国民待遇の限界203

第4項 国内法に対する規律意図の欠如206

第2節 条約の規律対象(渉外関係)の理解をめぐる議論206

第3節 まとめ209

第5章 「著作隣接権」概念の意義解明の手掛かり210

第4部 日本の「著作隣接権」概念の意義

第1章 問題の所在および考察の方法215

第2章 「著作隣接権」概念の他律的存在理由の存否220

第1節 著作権保護基準―高度創作性を要請する創作性の

程度論の存否220

第1項 「著作隣接権」概念導入前の議論―学説221
⑴ 水野錬太郎博士の見解221
⑵ 勝本正晃博士の見解222
⑶ 城戸芳彦博士の見解224
⑷ 小林尋次弁護士の見解225
⑸ 山本桂一博士および現行法立案者の見解226

第2項 「著作隣接権」概念導入前の議論―裁判例227

⑴ 明治40年「逓信省絵葉書複製」事件229
⑵ 大正3年「桃中軒雲右衛門」事件229
⑶ 大正8年「職業別電話帳」事件232
⑷ 昭和12年「訟廷日誌」事件234
⑸ 昭和26年「学習用日本地図」事件236
⑹ 昭和35年「簿記仕訳盤」事件237
⑺ 昭和35年「住宅案内図帳」事件238
⑻ 昭和36年「昆虫さし絵」事件239
⑼ 昭和46年「地球儀用世界地図」事件240
⑽ 施行後間もない現行法下の裁判例241

第2節 著作権帰属論―職務著作制度243

第1項 現行法の立法論議244

第2項 制度創設前の学説247

第3節 著作権帰属論―映画著作権の法定譲渡252

第1項 現行法の立法論議253

第2項 制度創設前の学説257

第4節 まとめ―他律的存在理由の欠如261

第3章 「著作隣接権」概念の自律的存在理由266

第1節 考察の方法266

第2節 「著作隣接権」の保護対象と創作的要素268

第1項 立法資料の記述268

第2項 旧著作権法上の対応制度とその趣旨継受272

⑴ 旧実演保護制度の趣旨272
⑵ 旧レコード保護制度の趣旨273

第3項 放送法制上の放送保護制度との相違275

第4項 保護対象の特色からみた「著作隣接権」の制度趣旨278

⑴ 保護対象としての創作的要素278
⑵ 創作保護としての制度趣旨の理解とローマ条約との関係280
⑶ 出版保護に関する「著作隣接権」の創設論との関係282
⑷ 伝達行為保護説の当否検討に要する課題284

第3節 「著作隣接権」の保護対象と投資利益285

第1項 投資利益を保護対象とする考え方のルーツとその評価285

第2項 投資利益を保護対象とする立法論の可否290

⑴ 投資保護説の典型例としてのレコード保護制度290
⑵ 投資保護制度としてのドイツのレコード著作隣接権291
⑶ わが国におけるレコード投資保護の否定例―ドイツ法との対照性293
⑷ 不法行為理論の展開とレコード投資利益295
⑸ 投資利益は不法行為法上の補充的な救済対象となり得るか?296
⑹ 新たな知的財産の不法行為救済に要される解釈論の蓄積298
⑺ 「著作隣接権」創設時におけるレコード投資保護の立論可能性?300

第4節 「著作隣接権」の保護主体300

第1項 実演の保護主体301

第2項 放送の保護主体302

第3項 レコードの保護主体304

第4項 保護主体の特色からみた「著作隣接権」の制度趣旨309

第5節 まとめ―「著作隣接権」概念の複合的趣旨310

第4章 「著作隣接権」概念の解釈315

第1節 「著作隣接権」概念の理論的意義315

第1項 これまでの考察成果と演繹の方法315

第2項 他律的存在意義の欠如316

第3項 自律的存在意義の欠如316

⑴ 保護対象に関する機能の著作権概念による代替可能性317
⑵ 保護主体に関する機能の著作権概念による代替可能性321
⑶ まとめ322

第4項 結 論323

第2節 「著作隣接権」概念の社会的存在理由326

第1項 社会的存在理由の探求の試み326

第2項 日本人の法意識研究からの示唆327

⑴ 「日本人の法意識」研究327
⑵ 「著作隣接権」概念の社会的な存在理由329

第3項 理論的な存在意義の解明は何ゆえに意味を持ち得るか332

第3節 「著作隣接権」概念の実践的意義―米国著作権法の

著作権概念との比較334

第1項 本節の課題334

第2項 実演の保護337

⑴ 音声実演337
⑵ 映像実演338
⑶ まとめ340

第3項 レコード(sound recordings)の保護341

第4項 放送番組および番組編成行為の保護346

第5項 米国法上の著作権概念との実質的同等性347

第5部 「著作隣接権」概念をめぐる実践的解釈論

第1章 考察の課題と順序353

第2章 実演の創作的要素356

第1節 実演における創作的再現方法356

第2節 制定法上の根拠361

第3節 実演の保護内容と保護範囲364

第4節 実演概念と著作物利用行為概念との関係368

第3章 レコードの創作的要素370

第1節 レコードによる原音の再現とその創作的要素370

第2節 レコード製作者の解釈376

第1項 裁判例における解釈対立376

第2項 「職務レコード」承認論と投資負担者説との相違379

第3項 投資負担者説の解釈論としての限界381

第3節 レコードの複製権の解釈とサンプリング問題384

第1項 複製権の効力範囲384

第2項 サンプリング行為と複製行為の関係386

第4章 放送「著作隣接権」の実践的意義と放送法制による

その代替的保護392

第1節 問題の所在―放送「著作隣接権」をめぐる重複問題392

第2節 「著作隣接権」が放送事業者を保護する意義396

第1項 考察の課題396

第2項 著作権の保護対象としての放送に係る音声・影像397

⑴ 個々のまとまりを持った音声・影像としての放送番組398
 ① 著作物の要件と放送番組398
 ② 生の放送番組とその著作物該当性400
 ③ 裁判例403
 ④ 小 括406
⑵ 複数の放送番組の集合物としての番組編成406

第3項 放送に係る音声・影像に対する「著作隣接権」保護の

実践的意義409
⑴ 放送事業者がその制作に係る放送番組・番組編成を放送する場合411
⑵ 放送事業者が他者制作の放送番組をその番組編成のなかで放送する場合412
⑶ 放送事業者が外部制作の視聴覚作品または外国制作の放送番組を放送する
場合413

第4項 放送「著作隣接権」の実践的な存在意義に対する疑問414

第3節 放送「著作隣接権」の代替的制度としての放送法の可能性417

第1項 放送法と放送事業者の私益保護418

⑴ 検討の対象418
⑵ 旧放送法6条の再送信の同意制度の趣旨419
⑶ 旧有規法5条の再送信の同意制度の趣旨420
⑷ 旧有テレ法13条2項の再送信の同意制度の趣旨422
 ① 旧有テレ法立法時の論議422
 ② 同意裁定制度の導入論にみる放送事業者の保護法益424
⑸ 放送法による放送事業者の私益保護の可能性426
 ① 再送信同意制度による放送事業者の私益保護426
 ② 近時の知的財産高等裁判所の解釈論との関係427

第2項 放送法による代替的保護の妥当性430

⑴ 放送の公益性430
⑵ 現に放送「著作隣接権」が放送法に後退している状況432
⑶ 著作権法の観点からみた妥当性434
⑷ 本書が代替的保護を検討することの意義435

第4節 結論と残された課題437

結び 441

事項索引 446