アメリカ憲法叢書3
アメリカ憲法と民主政
大沢秀介・大林啓吾 編
定価:9,900円(税込)-
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発行:
2021年09月01日
-
判型:
A5判上製 -
ページ数:
638頁 -
ISBN:
978-4-7923-0693-9
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内容紹介
《目 次》
Preface i
第1部 投票権および投票権法の展開
Chapter 1 投票の資格要件と投票税──The Story of Harper v. Virginia Bd. of Elections, 383 U.S. 663 (1966) [小谷順子] 3
はじめに 4
Ⅰ アメリカにおける選挙と投票 5
1 アメリカで投票するためには 5
2 投票の権利と憲法,連邦制 7
3 投票税とは 8
Ⅱ 投票権と投票税の歴史 9
1 人種に基づく投票権の否定や制限を禁止する修正15条の成立(1870) 9
2 投票税に関するBreedlove判決(1937年) 11
3 連邦の選挙における投票税を禁止する修正24条の成立(1964) 12
4 修正24条に対抗するバージニア州の試みとHarman判決 13
5 1965年連邦投票権法の成立 14
Ⅲ Harper判決――Harper v. Virginia Bd. of Elections, 383 U.S. 663 (1966) 15
1 争点,原告の主張 15
2 連邦地裁判決――Harper v. Virginia Bd. of Elections, 240 F. Supp. 270 (1964). 16
3 連邦最高裁への飛躍上告 16
4 ダグラス裁判官執筆の法廷意見 17
5 反対意見 19
Ⅳ Harper判決の評価とその後の判例動向 21
1 Harper判決の意義と影響 21
2 投票資格の設定に関する連邦議会の権限 24
3 財力等に基づく投票権付与の合憲性をめぐる判例 25
Ⅴ 投票権の資格制限についての今日の論点――重罪の有罪判決を受けた者の投票資格:バージニア州を題材に 27
1 重罪の有罪判決を受けた者の投票資格の制限 27
2 Richardson v. Ramirez判決(1974年) 29
3 バージニア州憲法の重罪判決者の資格喪失規定 30
おわりに 32
Chapter 2 Voter ID法の合憲性──The Story of Crawford v. Marion County Election Board, 553 U.S. 181 (2008) [山本健人] 35
はじめに 36
Ⅰ Voter ID法の登場 37
1 HAVA法 37
2 カーター=ベーカー報告書 38
3 インディアナ州のVoter ID法 38
Ⅱ Crawford判決 40
1 訴訟の流れ 40
2 先例の枠組み 41
3 下級審 42
4 スティーブンス相対多数意見 44
5 スカリア結論同意意見 49
6 スーター反対意見 50
Ⅲ 分析 53
1 審査枠組み 53
2 Voter ID法の効果 57
3 Crawford判決以降のVoter ID法 61
おわりに 65
Chapter 3 意義ある投票をする権利とバロット・アクセス法の合憲性審査──The Story of Burdick v. Takushi, 504 U.S. 428 (1992) [佐々木くみ] 67
Ⅰ Burdick判決以前の状況 68
1 投票制度の変遷 68
2 Burdick判決以前の連邦最高裁判例における投票権の保障 69
Ⅱ Burdick判決 75
1 事実の概要・下級審の判断 75
2 法廷意見 ホワイト裁判官執筆。レーンキスト,オコナー,スカリア,スーター,トーマス裁判官同意。 77
3 反対意見 ケネディ裁判官執筆。ブラックマン,スティーブンス裁判官同意。 81
Ⅲ 意義ある投票をする権利 85
1 投票権の連邦憲法上の根拠条文 85
2 意義ある投票をする権利 86
Ⅳ Anderson-Burdick審査 87
1 投票権に関する合憲性審査の変遷 87
2 Anderson-Burdick審査の解釈 88
3 Anderson-Burdick審査の残された課題 93
Chapter 4 1965年投票権法の合憲性──The Story of South Carolina v. Katzenbach, 383 U.S. 301 (1966) [小竹 聡] 97
はじめに 98
Ⅰ 1965年投票権法の制定 99
1 1965年投票権法の制定までの出来事 99
2 1965年投票権法の制定過程 104
Ⅱ South Carolina v. Katzenbach判決 109
1 事実の概要 109
2 本件で争われた規定 110
3 法廷意見 113
4 個別意見 120
Ⅲ 判決の評価 122
1 ウォーレンとブラック 122
2 投票権法のその後 125
おわりに 127
Chapter 5 政治的平等と州権──The Story of Shelby County, Alabama v. Holder, Attorney General, et al. (2013) 570 U.S. ___, 133 S. Ct. 2612, 186, L.Ed. 2d 651 (2013) [横濱竜也] 129
Ⅰ 1965年投票権法 130
1 VRA Sec.2・Sec.3における投票差別の是正措置 130
2 VRA Sec.4・Sec.5における適用法域指定方式 130
Ⅱ 前史 132
1 修正15条と投票差別 132
2 VRAの延長と適用範囲拡大 132
Ⅲ Shelby判決まで 133
Ⅳ Shelby判決 134
1 下級審の判決 134
2 連邦最高裁判決法廷意見(ロバーツ長官執筆) 135
3 トーマス裁判官同意意見 139
4 ギンズバーグ裁判官反対意見(ブライヤー裁判官,ソトマイヨール裁判官,ケイガン裁判官同調) 139
Ⅴ 論点整理 142
1 本判決の骨格 142
2 若干の考察 143
Ⅵ 政治的平等とは何か 145
1 運平等主義による政治的平等論 145
2 関係的平等主義と政治的平等 149
Ⅶ シティズンシップ論と政治体の適正規模 151
1 ステークホルダー・シティズンシップとは何か 152
Ⅷ なぜまたどの範囲で州権は重要なのか 160
第2部 選挙制度および選挙資金規正の合憲性
Chapter 6 選挙区再編成革命の幕開け──The Story of Baker v. Carr (1962) [黒澤修一郎] 165
はじめに 166
Ⅰ 当時のアメリカにおける投票価値較差問題の状況 168
Ⅱ Baker判決の概要 170
1 事実の概要 170
2 連邦最高裁判決の概要 171
Ⅲ 先例 174
1 19世紀後半から1930年代まで 174
2 Colegrove判決 176
3 Colegrove判決以後 178
Ⅳ 審理の経過と判決形成過程 181
1 原告団および訟務長官コックスの主張 181
2 連邦最高裁における審理の経過 184
3 法廷意見および個別意見の形成 186
Ⅴ Baker判決へのリアクション 187
1 裁判の動向──各州における動き,差戻し後のBaker事件の経過 187
2 政治的動向 190
Ⅵ 考察 192
1 Baker判決の行動戦略とその形成要因 192
2 選挙区再編成判決の成功を条件づける外在的要因 194
3 日本への示唆 196
おわりに 198
Chapter 7 両院制州議会と「1人1票」原則──The Story of Reynolds v. Sims, 377 U.S. 533 (1964) [見平 典] 199
はじめに 200
Ⅰ 判決の前史 201
1 投票価値の格差に関する先例 201
2 投票価値の格差をめぐるポリティクス 204
Ⅱ 判決の概要 206
1 事実の概要 206
2 法廷意見 208
3 クラーク裁判官同意意見 215
4 ステュワート裁判官意見 216
5 ハーラン裁判官反対意見 216
Ⅲ 判決の考察 217
1 本判決の意義 217
2 議席配分の合憲性の判断基準 218
3 政治部門の動向 229
おわりに 230
Chapter 8 人種的ゲリマンダリング──The Story of Shaw v. Reno, 509 U.S. 630 (1993) [溜箭将之] 231
はじめに 232
1 アメリカにおける選挙と人種 232
2 1965年投票権法 233
3 Shaw判決までの人種的ゲリマンダリング連邦最高裁判決 234
4 南部の人種政治とノースカロライナ 235
Ⅰ 事実と下級審判決の概要 236
1 連邦最高裁判決の適示 236
2 政治的背景 237
3 下級審判決 238
Ⅱ 判決の概要 239
1 法廷意見 239
2 ホワイト(Byron White)反対意見 241
3 ブラックマン単独反対意見 242
4 スティーブンス単独反対意見 242
5 スーター(David Souter)単独反対意見 243
Ⅲ 本判決の意義・特徴 243
1 保守派による 243
2 新たな訴訟原因 245
3 オコナーの法廷意見 247
4 残された問題 247
Ⅳ 1990年代の保守5対リベラル4による判例形成 248
1 人種ゲリマンダリングの再定式化――Miller v. Johnson (1995) 248
2 厳格審査の手法――Shaw v. Hunt (Shaw II) (1996) 249
3 損害と原告適格──Bush v. Vera (1996) 250
4 事実審判断の審査──Hunt v. Cromartie (Cromartie I) (1999) 251
Ⅴ 2000年代の鎮静化 252
1 人種的ゲリマンダー 252
2 党派的ゲリマンダー 253
3 ロバーツコートと投票権法 255
Ⅵ 2015年以降の再活性化 256
1 民主党の巻き返し 256
2 ノースカロライナの泥仕合 258
3 戦線の移動:党派的ゲリマンダリングへ 260
おわりに 261
Chapter 9 選挙区画定の主体としての「立法府」要件と独立委員会──The Story of Arizona State Legislature v. Arizona Independent Redistricting Commission (2015) [紙谷雅子] 263
Ⅰ 合衆国憲法の選挙規定 264
1 選挙周期と選挙区の画定 264
2 選挙区画定委員会の出現 265
Ⅱ アリゾナの場合 268
1 1912年から2000年「提案106」Proposition 106まで 268
2 2000年の人口調査と委員会の選挙区案 270
3 委員会と2010年人口調査結果 277
4 委員会と連邦最高裁判所 Arizona State Legislature v. Arizona Independent Redistricting Commission 280
5 委員会の作成した選挙区案の党派性 Harris v. Arizona Independent Redistricting Commission 285
Ⅲ キャリフォーニアの場合 287
最後に 289
Chapter 10 マッチング資金方式による選挙活動公費助成制度の合憲性──The Story of Arizona Free Enterprise Club’s Freedom Club PAC v. Bennett, 564 U.S. 721 (2011) [築山欣央] 291
はじめに 292
Ⅰ 選挙資金の規制とマッチング資金方式公費助成制度の位置 293
Ⅱ Arizona Free Enterprise事件──その背景と下級審 295
1 アリゾナ州における政治スキャンダルと州の制度改革 295
2 Arizona Free Enterprise事件の下級審までの流れ 299
Ⅲ Arizona Free Enterprise事件──連邦最高裁判決 304
1 法廷意見 304
2 ケイガン裁判官の反対意見 311
Ⅳ 分析 316
1 マッチング資金方式助成制度の捉え方 316
2 修正1条に含まれる利益に関する理解 317
3 選挙資金規正の目的 319
おわりに 321
Chapter 11 寄付金の総額規制──The Story of McCutcheon v. FEC, 572 U.S. 185 (2014) [福井康佐] 323
はじめに 324
Ⅰ FECA以降の政治資金に係る判例の推移 325
1 スタートラインとしてのBuckley判決 325
2 Buckley判決以降その1(レンキストコート時代) 326
3 Buckley判決以降その2(ロバーツコート時代) 328
Ⅱ 事実関係 329
1 寄付に係る法規制 329
2 原告のプロフィール 331
3 地裁判決 331
Ⅲ 判旨 332
1 ロバーツ相対多数意見(スカリア,ケネディ,アリート参加) 332
2 トマス結論同意意見 340
3 反対意見(ブライヤ裁判官執筆 ギンズバーグ,ソトマイヨール,ケーガン参加) 341
Ⅳ 政治資金の規制の正当化事由 344
Ⅴ 政党中心の見返りの概念と総額規制 352
Ⅵ 今後予想される問題 354
1 政府との契約に係る寄付金規制(Pay-to-Play Laws) 354
2 政党のソフトマネー(party soft money) 355
3 政党が設置・運営するスーパーPAC(party-sponsored Super PAC) 356
むすび 357
第3部 政党と選挙制度
Chapter 12 半閉鎖型予備選挙と政党の結社の権利──The Story of Clingman v. Beaver, 544 U.S. 581 (2005) [大沢秀介] 361
はじめに 362
Ⅰ アメリカにおける予備選挙の展開 364
1 大統領候補の選出方法の変化 364
2 オクラホマ州の予備選挙 366
Ⅱ Clingman判決 370
1 事実の概要 370
2 下級審の判断 372
Ⅲ 連邦最高裁の判断 376
1 トーマス裁判官執筆一部法廷意見・一部相対多数意見 377
2 オコナー裁判官法廷意見一部同意・結果同意意見 382
3 スティーブンス反対意見 384
Ⅳ 若干の検討 388
1 先例との関係 388
2 審査基準との関係 397
3 二大政党保護主義と少数政党の関係 401
Ⅴ 結びに代えて 402
Chapter 13 予備選挙は誰のものか?──The Story of California Democratic Party v. Jones, 530 U.S. 567 (2000) [勝田卓也] 405
はじめに 406
Ⅰ 背景 408
1 政党と予備選挙 408
2 カリフォルニア州における予備選挙制度の推移 409
Ⅱ Jones判決 412
1 事実と訴訟の経過 412
2 判旨 413
3 検討 430
Ⅲ 政治的背景とその後の展開 433
1 政治的背景 433
2 その後の展開 436
3 政治的含意 438
おわりに 440
Chapter 14 共和政理念と政党の自律性──The Story of Eu v. San Francisco County Democratic Central Committee, 489 U.S. 214 (1989) [大林啓吾] 441
序 442
Ⅰ 政党の自律 443
1 政党の位置づけ 443
2 政党と法 444
3 政党の両面性──自由と規制 446
4 政党と代議員資格 447
Ⅱ Eu v. San Francisco County Democratic Central Committee 448
1 事案の概要 448
2 連邦最高裁の判断 449
3 スティーブンス裁判官の同意意見 453
Ⅲ 考察 453
1 Eu判決の意義 453
2 司法判断適合性 454
3 本件規制と権利侵害 455
4 州の裁量と審査基準 457
5 政党の自律性に関するモデル 458
6 Eu判決の影響とその後の下級審の動向 461
7 再びマディソンへ 464
8 政党の自律性 466
後序 467
Chapter 15 複数政党による同一候補者指名の禁止と小政党の結社の自由──The Story of Timmons v. Twin Cities Area New Party, 520 U.S. 351 (1997) [青野 篤] 469
はじめに 470
Ⅰ アメリカの選挙とフュージョン 471
1 フュージョンの歴史 471
2 フュージョンが影響を与えた選挙の例 472
3 現在の規制状況 472
4 フュージョンの機能・類型・批判 473
Ⅱ Timmons判決以前の判例 475
1 州最高裁判例 475
2 連邦高裁判例 476
Ⅲ Timmons判決 478
1 事案の概要 478
2 連邦最高裁の判断 479
Ⅳ 考察 487
1 Timmons判決の意義と射程 487
2 Timmons判決の特徴と問題点 488
3 連邦最高裁判例における二大政党制 492
4 Timmons判決後の動向 495
おわりに 498
第4部 民主過程と司法審査
Chapter 16 イニシアティヴによる州憲法修正と人種的優遇の禁止──The Story of Schuette v. Coalition to Defend Affirmative Action, 572 U.S. 291 (2014) [藤井樹也] 501
Ⅰ 背景 502
1 Michigan州立大学の入学者選抜と人種的優遇の歴史 502
2 Hunter / Seattle法理の形成 504
Ⅱ Schuette判決 505
1 事実 505
2 ケネディ相対多数意見 506
3 ロバーツ同意意見 509
4 スカリア結論同意意見 509
5 ブライヤー結論同意意見 510
6 ソトマイヨール反対意見 510
Ⅲ 検討 512
1 本件州憲法修正はHunter / Seattle法理に反しないか? 512
2 本件州憲法修正は政治プロセスの変更にあたるか? 515
3 Schuette判決はRomer判決に反しないか? 516
4 裁判所は直接民主制プロセスによる決定を尊重すべきか? 519
Chapter 17 直接民主主義と共和政体──The Story of Pacific States Telephone & Telegraph Co. v. Oregon, 223 U.S. 118 (1912) [二本柳高信] 523
はじめに 524
Ⅰ 政治──直接民主主義運動 525
1 前史──革新主義運動 525
2 オレゴン州 525
3 他州の状況 527
Ⅱ 憲法──共和政体の保障 528
1 前史 528
2 直接民主主義との関連における保障条項 531
3 州裁判所の保障条項解釈 535
Ⅲ 連邦最高裁──Pacific States判決 537
1 The Pacific States Tel. & Tel. Co. v. Oregon連邦最高裁判決 537
2 Pacific States判決のもたらしたもの 545
3 大統領・政党・連邦最高裁裁判官 548
おわりに 551
Chapter 18 大統領の署名がなければ無効かどうかが争われた事例──The Story of Hollingsworth v. Virginia, 3 U.S. 378 (1798) [小林祐紀] 553
序 554
Ⅰ Hollingsworth判決の行方を左右した出来事 557
1 Chisholm事件に影響を与えた歴史的背景 557
2 Chisholm事件の事実の概要 563
3 Chisholm判決の内容 564
4 修正11条の成立 566
Ⅱ Hollingsworth事件 567
1 事実の概要 568
2 判決(per curium):全文 570
Ⅲ Hollingsworth事件の検討 574
1 訴訟提起から判決までの時間的空白 574
2 本判決の意義と必然性 575
3 本判決の影響 576
4 違憲審査権の行使? 576
Ⅳ 憲法修正過程における大統領の役割 578
1 憲法修正手続 578
2 大統領に対する非送付の歴史 580
3 立法府からみる大統領の関与 580
4 行政府からみる大統領の関与 581
5 憲法修正過程に大統領が関与する規範的意義 581
結 582
Chapter 19 合衆国憲法修正の承認に州民投票を課すことの合憲性──The Story of Hawke v. Smith, 253 U.S. 221 (1920) [君塚正臣] 585
はじめに 586
Ⅰ Hawke v. Smithに至る事情 587
1 憲法修正について 587
2 禁酒法について 590
Ⅱ Hawke v. Smith, 253 U.S. 221 (1920) 593
1 事案 593
2 デイ(William R. Day)裁判官法廷意見 594
Ⅲ Hawke v. Smithの影響 596
1 同日に判決の下された事案について 596
2 禁酒法のその後 597
3 Hawke v. Smith判決以降の連邦最高裁の動向 601
4 検討 603
5 憲法修正の困難性・再論 605
おわりに 607
Preface i
第1部 投票権および投票権法の展開
Chapter 1 投票の資格要件と投票税──The Story of Harper v. Virginia Bd. of Elections, 383 U.S. 663 (1966) [小谷順子] 3
はじめに 4
Ⅰ アメリカにおける選挙と投票 5
1 アメリカで投票するためには 5
2 投票の権利と憲法,連邦制 7
3 投票税とは 8
Ⅱ 投票権と投票税の歴史 9
1 人種に基づく投票権の否定や制限を禁止する修正15条の成立(1870) 9
2 投票税に関するBreedlove判決(1937年) 11
3 連邦の選挙における投票税を禁止する修正24条の成立(1964) 12
4 修正24条に対抗するバージニア州の試みとHarman判決 13
5 1965年連邦投票権法の成立 14
Ⅲ Harper判決――Harper v. Virginia Bd. of Elections, 383 U.S. 663 (1966) 15
1 争点,原告の主張 15
2 連邦地裁判決――Harper v. Virginia Bd. of Elections, 240 F. Supp. 270 (1964). 16
3 連邦最高裁への飛躍上告 16
4 ダグラス裁判官執筆の法廷意見 17
5 反対意見 19
Ⅳ Harper判決の評価とその後の判例動向 21
1 Harper判決の意義と影響 21
2 投票資格の設定に関する連邦議会の権限 24
3 財力等に基づく投票権付与の合憲性をめぐる判例 25
Ⅴ 投票権の資格制限についての今日の論点――重罪の有罪判決を受けた者の投票資格:バージニア州を題材に 27
1 重罪の有罪判決を受けた者の投票資格の制限 27
2 Richardson v. Ramirez判決(1974年) 29
3 バージニア州憲法の重罪判決者の資格喪失規定 30
おわりに 32
Chapter 2 Voter ID法の合憲性──The Story of Crawford v. Marion County Election Board, 553 U.S. 181 (2008) [山本健人] 35
はじめに 36
Ⅰ Voter ID法の登場 37
1 HAVA法 37
2 カーター=ベーカー報告書 38
3 インディアナ州のVoter ID法 38
Ⅱ Crawford判決 40
1 訴訟の流れ 40
2 先例の枠組み 41
3 下級審 42
4 スティーブンス相対多数意見 44
5 スカリア結論同意意見 49
6 スーター反対意見 50
Ⅲ 分析 53
1 審査枠組み 53
2 Voter ID法の効果 57
3 Crawford判決以降のVoter ID法 61
おわりに 65
Chapter 3 意義ある投票をする権利とバロット・アクセス法の合憲性審査──The Story of Burdick v. Takushi, 504 U.S. 428 (1992) [佐々木くみ] 67
Ⅰ Burdick判決以前の状況 68
1 投票制度の変遷 68
2 Burdick判決以前の連邦最高裁判例における投票権の保障 69
Ⅱ Burdick判決 75
1 事実の概要・下級審の判断 75
2 法廷意見 ホワイト裁判官執筆。レーンキスト,オコナー,スカリア,スーター,トーマス裁判官同意。 77
3 反対意見 ケネディ裁判官執筆。ブラックマン,スティーブンス裁判官同意。 81
Ⅲ 意義ある投票をする権利 85
1 投票権の連邦憲法上の根拠条文 85
2 意義ある投票をする権利 86
Ⅳ Anderson-Burdick審査 87
1 投票権に関する合憲性審査の変遷 87
2 Anderson-Burdick審査の解釈 88
3 Anderson-Burdick審査の残された課題 93
Chapter 4 1965年投票権法の合憲性──The Story of South Carolina v. Katzenbach, 383 U.S. 301 (1966) [小竹 聡] 97
はじめに 98
Ⅰ 1965年投票権法の制定 99
1 1965年投票権法の制定までの出来事 99
2 1965年投票権法の制定過程 104
Ⅱ South Carolina v. Katzenbach判決 109
1 事実の概要 109
2 本件で争われた規定 110
3 法廷意見 113
4 個別意見 120
Ⅲ 判決の評価 122
1 ウォーレンとブラック 122
2 投票権法のその後 125
おわりに 127
Chapter 5 政治的平等と州権──The Story of Shelby County, Alabama v. Holder, Attorney General, et al. (2013) 570 U.S. ___, 133 S. Ct. 2612, 186, L.Ed. 2d 651 (2013) [横濱竜也] 129
Ⅰ 1965年投票権法 130
1 VRA Sec.2・Sec.3における投票差別の是正措置 130
2 VRA Sec.4・Sec.5における適用法域指定方式 130
Ⅱ 前史 132
1 修正15条と投票差別 132
2 VRAの延長と適用範囲拡大 132
Ⅲ Shelby判決まで 133
Ⅳ Shelby判決 134
1 下級審の判決 134
2 連邦最高裁判決法廷意見(ロバーツ長官執筆) 135
3 トーマス裁判官同意意見 139
4 ギンズバーグ裁判官反対意見(ブライヤー裁判官,ソトマイヨール裁判官,ケイガン裁判官同調) 139
Ⅴ 論点整理 142
1 本判決の骨格 142
2 若干の考察 143
Ⅵ 政治的平等とは何か 145
1 運平等主義による政治的平等論 145
2 関係的平等主義と政治的平等 149
Ⅶ シティズンシップ論と政治体の適正規模 151
1 ステークホルダー・シティズンシップとは何か 152
Ⅷ なぜまたどの範囲で州権は重要なのか 160
第2部 選挙制度および選挙資金規正の合憲性
Chapter 6 選挙区再編成革命の幕開け──The Story of Baker v. Carr (1962) [黒澤修一郎] 165
はじめに 166
Ⅰ 当時のアメリカにおける投票価値較差問題の状況 168
Ⅱ Baker判決の概要 170
1 事実の概要 170
2 連邦最高裁判決の概要 171
Ⅲ 先例 174
1 19世紀後半から1930年代まで 174
2 Colegrove判決 176
3 Colegrove判決以後 178
Ⅳ 審理の経過と判決形成過程 181
1 原告団および訟務長官コックスの主張 181
2 連邦最高裁における審理の経過 184
3 法廷意見および個別意見の形成 186
Ⅴ Baker判決へのリアクション 187
1 裁判の動向──各州における動き,差戻し後のBaker事件の経過 187
2 政治的動向 190
Ⅵ 考察 192
1 Baker判決の行動戦略とその形成要因 192
2 選挙区再編成判決の成功を条件づける外在的要因 194
3 日本への示唆 196
おわりに 198
Chapter 7 両院制州議会と「1人1票」原則──The Story of Reynolds v. Sims, 377 U.S. 533 (1964) [見平 典] 199
はじめに 200
Ⅰ 判決の前史 201
1 投票価値の格差に関する先例 201
2 投票価値の格差をめぐるポリティクス 204
Ⅱ 判決の概要 206
1 事実の概要 206
2 法廷意見 208
3 クラーク裁判官同意意見 215
4 ステュワート裁判官意見 216
5 ハーラン裁判官反対意見 216
Ⅲ 判決の考察 217
1 本判決の意義 217
2 議席配分の合憲性の判断基準 218
3 政治部門の動向 229
おわりに 230
Chapter 8 人種的ゲリマンダリング──The Story of Shaw v. Reno, 509 U.S. 630 (1993) [溜箭将之] 231
はじめに 232
1 アメリカにおける選挙と人種 232
2 1965年投票権法 233
3 Shaw判決までの人種的ゲリマンダリング連邦最高裁判決 234
4 南部の人種政治とノースカロライナ 235
Ⅰ 事実と下級審判決の概要 236
1 連邦最高裁判決の適示 236
2 政治的背景 237
3 下級審判決 238
Ⅱ 判決の概要 239
1 法廷意見 239
2 ホワイト(Byron White)反対意見 241
3 ブラックマン単独反対意見 242
4 スティーブンス単独反対意見 242
5 スーター(David Souter)単独反対意見 243
Ⅲ 本判決の意義・特徴 243
1 保守派による 243
2 新たな訴訟原因 245
3 オコナーの法廷意見 247
4 残された問題 247
Ⅳ 1990年代の保守5対リベラル4による判例形成 248
1 人種ゲリマンダリングの再定式化――Miller v. Johnson (1995) 248
2 厳格審査の手法――Shaw v. Hunt (Shaw II) (1996) 249
3 損害と原告適格──Bush v. Vera (1996) 250
4 事実審判断の審査──Hunt v. Cromartie (Cromartie I) (1999) 251
Ⅴ 2000年代の鎮静化 252
1 人種的ゲリマンダー 252
2 党派的ゲリマンダー 253
3 ロバーツコートと投票権法 255
Ⅵ 2015年以降の再活性化 256
1 民主党の巻き返し 256
2 ノースカロライナの泥仕合 258
3 戦線の移動:党派的ゲリマンダリングへ 260
おわりに 261
Chapter 9 選挙区画定の主体としての「立法府」要件と独立委員会──The Story of Arizona State Legislature v. Arizona Independent Redistricting Commission (2015) [紙谷雅子] 263
Ⅰ 合衆国憲法の選挙規定 264
1 選挙周期と選挙区の画定 264
2 選挙区画定委員会の出現 265
Ⅱ アリゾナの場合 268
1 1912年から2000年「提案106」Proposition 106まで 268
2 2000年の人口調査と委員会の選挙区案 270
3 委員会と2010年人口調査結果 277
4 委員会と連邦最高裁判所 Arizona State Legislature v. Arizona Independent Redistricting Commission 280
5 委員会の作成した選挙区案の党派性 Harris v. Arizona Independent Redistricting Commission 285
Ⅲ キャリフォーニアの場合 287
最後に 289
Chapter 10 マッチング資金方式による選挙活動公費助成制度の合憲性──The Story of Arizona Free Enterprise Club’s Freedom Club PAC v. Bennett, 564 U.S. 721 (2011) [築山欣央] 291
はじめに 292
Ⅰ 選挙資金の規制とマッチング資金方式公費助成制度の位置 293
Ⅱ Arizona Free Enterprise事件──その背景と下級審 295
1 アリゾナ州における政治スキャンダルと州の制度改革 295
2 Arizona Free Enterprise事件の下級審までの流れ 299
Ⅲ Arizona Free Enterprise事件──連邦最高裁判決 304
1 法廷意見 304
2 ケイガン裁判官の反対意見 311
Ⅳ 分析 316
1 マッチング資金方式助成制度の捉え方 316
2 修正1条に含まれる利益に関する理解 317
3 選挙資金規正の目的 319
おわりに 321
Chapter 11 寄付金の総額規制──The Story of McCutcheon v. FEC, 572 U.S. 185 (2014) [福井康佐] 323
はじめに 324
Ⅰ FECA以降の政治資金に係る判例の推移 325
1 スタートラインとしてのBuckley判決 325
2 Buckley判決以降その1(レンキストコート時代) 326
3 Buckley判決以降その2(ロバーツコート時代) 328
Ⅱ 事実関係 329
1 寄付に係る法規制 329
2 原告のプロフィール 331
3 地裁判決 331
Ⅲ 判旨 332
1 ロバーツ相対多数意見(スカリア,ケネディ,アリート参加) 332
2 トマス結論同意意見 340
3 反対意見(ブライヤ裁判官執筆 ギンズバーグ,ソトマイヨール,ケーガン参加) 341
Ⅳ 政治資金の規制の正当化事由 344
Ⅴ 政党中心の見返りの概念と総額規制 352
Ⅵ 今後予想される問題 354
1 政府との契約に係る寄付金規制(Pay-to-Play Laws) 354
2 政党のソフトマネー(party soft money) 355
3 政党が設置・運営するスーパーPAC(party-sponsored Super PAC) 356
むすび 357
第3部 政党と選挙制度
Chapter 12 半閉鎖型予備選挙と政党の結社の権利──The Story of Clingman v. Beaver, 544 U.S. 581 (2005) [大沢秀介] 361
はじめに 362
Ⅰ アメリカにおける予備選挙の展開 364
1 大統領候補の選出方法の変化 364
2 オクラホマ州の予備選挙 366
Ⅱ Clingman判決 370
1 事実の概要 370
2 下級審の判断 372
Ⅲ 連邦最高裁の判断 376
1 トーマス裁判官執筆一部法廷意見・一部相対多数意見 377
2 オコナー裁判官法廷意見一部同意・結果同意意見 382
3 スティーブンス反対意見 384
Ⅳ 若干の検討 388
1 先例との関係 388
2 審査基準との関係 397
3 二大政党保護主義と少数政党の関係 401
Ⅴ 結びに代えて 402
Chapter 13 予備選挙は誰のものか?──The Story of California Democratic Party v. Jones, 530 U.S. 567 (2000) [勝田卓也] 405
はじめに 406
Ⅰ 背景 408
1 政党と予備選挙 408
2 カリフォルニア州における予備選挙制度の推移 409
Ⅱ Jones判決 412
1 事実と訴訟の経過 412
2 判旨 413
3 検討 430
Ⅲ 政治的背景とその後の展開 433
1 政治的背景 433
2 その後の展開 436
3 政治的含意 438
おわりに 440
Chapter 14 共和政理念と政党の自律性──The Story of Eu v. San Francisco County Democratic Central Committee, 489 U.S. 214 (1989) [大林啓吾] 441
序 442
Ⅰ 政党の自律 443
1 政党の位置づけ 443
2 政党と法 444
3 政党の両面性──自由と規制 446
4 政党と代議員資格 447
Ⅱ Eu v. San Francisco County Democratic Central Committee 448
1 事案の概要 448
2 連邦最高裁の判断 449
3 スティーブンス裁判官の同意意見 453
Ⅲ 考察 453
1 Eu判決の意義 453
2 司法判断適合性 454
3 本件規制と権利侵害 455
4 州の裁量と審査基準 457
5 政党の自律性に関するモデル 458
6 Eu判決の影響とその後の下級審の動向 461
7 再びマディソンへ 464
8 政党の自律性 466
後序 467
Chapter 15 複数政党による同一候補者指名の禁止と小政党の結社の自由──The Story of Timmons v. Twin Cities Area New Party, 520 U.S. 351 (1997) [青野 篤] 469
はじめに 470
Ⅰ アメリカの選挙とフュージョン 471
1 フュージョンの歴史 471
2 フュージョンが影響を与えた選挙の例 472
3 現在の規制状況 472
4 フュージョンの機能・類型・批判 473
Ⅱ Timmons判決以前の判例 475
1 州最高裁判例 475
2 連邦高裁判例 476
Ⅲ Timmons判決 478
1 事案の概要 478
2 連邦最高裁の判断 479
Ⅳ 考察 487
1 Timmons判決の意義と射程 487
2 Timmons判決の特徴と問題点 488
3 連邦最高裁判例における二大政党制 492
4 Timmons判決後の動向 495
おわりに 498
第4部 民主過程と司法審査
Chapter 16 イニシアティヴによる州憲法修正と人種的優遇の禁止──The Story of Schuette v. Coalition to Defend Affirmative Action, 572 U.S. 291 (2014) [藤井樹也] 501
Ⅰ 背景 502
1 Michigan州立大学の入学者選抜と人種的優遇の歴史 502
2 Hunter / Seattle法理の形成 504
Ⅱ Schuette判決 505
1 事実 505
2 ケネディ相対多数意見 506
3 ロバーツ同意意見 509
4 スカリア結論同意意見 509
5 ブライヤー結論同意意見 510
6 ソトマイヨール反対意見 510
Ⅲ 検討 512
1 本件州憲法修正はHunter / Seattle法理に反しないか? 512
2 本件州憲法修正は政治プロセスの変更にあたるか? 515
3 Schuette判決はRomer判決に反しないか? 516
4 裁判所は直接民主制プロセスによる決定を尊重すべきか? 519
Chapter 17 直接民主主義と共和政体──The Story of Pacific States Telephone & Telegraph Co. v. Oregon, 223 U.S. 118 (1912) [二本柳高信] 523
はじめに 524
Ⅰ 政治──直接民主主義運動 525
1 前史──革新主義運動 525
2 オレゴン州 525
3 他州の状況 527
Ⅱ 憲法──共和政体の保障 528
1 前史 528
2 直接民主主義との関連における保障条項 531
3 州裁判所の保障条項解釈 535
Ⅲ 連邦最高裁──Pacific States判決 537
1 The Pacific States Tel. & Tel. Co. v. Oregon連邦最高裁判決 537
2 Pacific States判決のもたらしたもの 545
3 大統領・政党・連邦最高裁裁判官 548
おわりに 551
Chapter 18 大統領の署名がなければ無効かどうかが争われた事例──The Story of Hollingsworth v. Virginia, 3 U.S. 378 (1798) [小林祐紀] 553
序 554
Ⅰ Hollingsworth判決の行方を左右した出来事 557
1 Chisholm事件に影響を与えた歴史的背景 557
2 Chisholm事件の事実の概要 563
3 Chisholm判決の内容 564
4 修正11条の成立 566
Ⅱ Hollingsworth事件 567
1 事実の概要 568
2 判決(per curium):全文 570
Ⅲ Hollingsworth事件の検討 574
1 訴訟提起から判決までの時間的空白 574
2 本判決の意義と必然性 575
3 本判決の影響 576
4 違憲審査権の行使? 576
Ⅳ 憲法修正過程における大統領の役割 578
1 憲法修正手続 578
2 大統領に対する非送付の歴史 580
3 立法府からみる大統領の関与 580
4 行政府からみる大統領の関与 581
5 憲法修正過程に大統領が関与する規範的意義 581
結 582
Chapter 19 合衆国憲法修正の承認に州民投票を課すことの合憲性──The Story of Hawke v. Smith, 253 U.S. 221 (1920) [君塚正臣] 585
はじめに 586
Ⅰ Hawke v. Smithに至る事情 587
1 憲法修正について 587
2 禁酒法について 590
Ⅱ Hawke v. Smith, 253 U.S. 221 (1920) 593
1 事案 593
2 デイ(William R. Day)裁判官法廷意見 594
Ⅲ Hawke v. Smithの影響 596
1 同日に判決の下された事案について 596
2 禁酒法のその後 597
3 Hawke v. Smith判決以降の連邦最高裁の動向 601
4 検討 603
5 憲法修正の困難性・再論 605
おわりに 607