医事刑法概論II

医事刑法概論II

先端医療の比較規範体系
山中敬一 著
定価:17,600円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2021年12月20日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    1014頁
  • ISBN:
    978-4-7923-5345-2
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内容紹介

《目 次》

まえがき
第1章 臓器・組織の法的地位と身体・死体の侵襲
はじめに ......... 3
1.切り離された身体の一部 ......... 5
 1.身体の概念 ......... 5
 (1)全体としての身体  5
 (2)切り離された身体の一部  5
 (3)人工移植器具・移植された臓器等 6
 2.切り離された身体の一部および組織 ......... 7
 (1)切り離された身体の一部の増大する利用可能性  7
 (2)切り離された身体の一部等に関する法律関係  9
 (3)機能的統一性説  15
 (4)物権と人格権の中間領域と立法上の解決  17
 (5)わが国の判例  17
 3.研究目的による人体組織の摘出と利用 ......... 24
 (1)人体組織の意義と機能  24
 (2)ドイツにおける人体構成物質の採取と利用に関する説明と同意の原則論  25
 (3)わが国における人体構成物質の研究目的利用の在り方に対する答申  28

2.身体内の異物たる移植人工器官・人の組織 ......... 30
 1.問題の所在 ......... 30
 2.移植された人工器官等 ......... 30
 3.移植された人の組織等 ......... 31

3.生体からの組織・臓器の移植と輸血 ......... 33
 1.生体からの臓器移植とドイツ移植法案 ......... 33
 (1)臓器移植の発展  33
 (2)ドイツの(臓器)移植法の成立  33
 2.ドイツの移植法 ......... 34
 (1)規制の対象  34
 (2)生者からの臓器・組織摘出  35
 (3)生体からの移植の要件  36
 (4)臓器・組織売買の禁止・処罰  37
 (5)臓器の分配  39
 3.わが国における生体からの移植 ......... 39
 (1)生体からの移植の現状  39
 (2)生体移植の正当化根拠  41
 (3)臓器移植法の運用指針における生体臓器移植  42
 (4)臓器売買の禁止  44
 4.ドイツ法における輸血 ......... 48
 (1)輸血の意義と法的構造  48
 (2)輸血法の制定と内容  49
 5.わが国における輸血 ......... 52
 (1)法的規制とガイドライン  52
 (2)輸血療法における医療関係者の責務  54
 (3)輸血療法に関する説明と同意  54
 (4)院内における輸血用血液の採取  55

4.人体実験(臨床試験)と身体の傷害 ......... 56
 1.ドイツにおける人体実験に関する立法 ......... 56
 (1)国際規制  57
 (2)ヨーロッパ内の規制  57
 (3)国内規制  58
 2.医薬品臨床試験における事故と医薬品法の改正 ......... 59
 3.研究の自由と治療の目的 ......... 60
 4.治療概念と実験概念 ......... 61
 5.医学上の「実験」概念の体系化 ......... 62
 (1)標準治療と医療実験行為  62
 (2)試験の段階性  63
 6.刑法典による刑法上重要な前提条件 ......... 64
 (1)治療的実験  65
 (2)実 験  66
 7.わが国における医療実験行為 ......... 68
 (1)わが国における医療実験治療の分類  68
 (2)私 見  70
 (3)わが国の民事判例  71
 (4)人体実験に関するわが国の倫理指針  78
 8.医薬品の臨床試験(klinische Prufung) ......... 79
 (1)医薬品法における「臨床試験」の沿革  79
 (2)1976年の医薬品法における臨床試験規定  80
 (3)2004年の医薬品法における臨床試験規定の改正  81
 (4)臨床試験の規定の適用範囲  81
 (5)40条と41条の適用範囲の区別  82
 (6)臨床試験の様々な位相への医薬品法40条の適用可能性  83
 (7)医薬品法の制裁規定と一般刑法  86
 9.わが国における薬事法 ......... 91
 (1)非臨床試験と臨床試験  91
 (2)臨床試験の成立過程  92
 (3)臨床研究に関する倫理指針におけるインフォームド・コンセント  93
 (4)薬事法における「治験」の意義  95
 (5)罰 則  96
 10.わが国における判例 ......... 96
 (1)愛知県がんセンター事件  96
 (2)金沢大学医学部附属病院無断臨床試験事件  100
 (3)キセナラミン事件  102

5.美容整形手術と身体の傷害 ......... 104
 1.美容整形手術における医学的適応と同意 ......... 104
 (1)現代社会の多様性と願望充足医学の発展  104
 (2)美容手術の沿革  105
 (3)統 計  106
 (4)倫理的・法的問題提起  110
 2.美容整形手術における厳格な説明義務 ......... 111
 (1)ドイツにおける美容整形手術の正当化  111
 (2)ドイツの民事判例  112
 (3)有界合理性理論とその批判  113
 (4)わが国における美容整形手術の正当化  115
 (5)美容整形手術の必要性と緊急性  116
 (6)わが国の民事判例  116
 3.わが判例における美容整形手術の医学的適応 ......... 117
 4.美容手術の正当化と新たな課題 ......... 120
 (1)美容手術の正当化根拠  120
 (2)再生医療による美容手術の新たな課題と法規制の必要性  121
 5.「女性器切除」の犯罪化と処罰 ......... 123
 (1)「女性器切除」の意味とドイツ刑法  123
 (2)意義と実態  124
 (3)アフリカ諸国におけるFGMの数  126
 (4)アフリカ諸国における刑事法上の対処  127
 (5)ドイツに居住する被害(の虞れのある)女性の数  128
 (6)ドイツにおける刑事立法とその問題点  130
(7)オーストリア・スイスの刑法上の規定  132

6.性転換手術(性別適合手術)と身体の傷害 ......... 134
 1.はじめに ......... 134
 2.ドイツにおける問題点 ......... 134
 3.医学上の性転換の沿革 ......... 135
 (1)初めての性転換手術  136
 (2)服装倒錯症  136
 (3)治療をめぐる論争  137
 4.性転換の医学的・法的問題 ......... 139
 5.性転換の刑法上の意義 ......... 140
 6.ドイツの性転換法 ......... 141
 (1)性転換法の内容  141
 (2)ドイツ性転換法の改正  143
 (3)戸籍法の改正  143
 7.わが国における性転換手術 ......... 144
 (1)判 例  144
 (2)法改正後の「不妊手術」  147
 (3)性同一性障害特例法の成立  149
 (4)性別変更手術数  150
 (5)性転換手術と刑法  151
 (6)性別変更・名前の変更に関する判例  151
 (7)その他の参考判例  158

7.断種と去勢 ......... 160
 1.ドイツにおける「断種」(不妊手術) ......... 160
 (1)強制断種  160
 (2)任意の断種  160
 2.ドイツにおける「去勢」 ......... 162
 (1)任意の去勢  162
 (2)去勢の不可罰根拠  163
 (3)その他の去勢  164
 3.わが国における「断種」 ......... 164
 (1)国民優生法  165
 (2)優生保護法  166
 (3)優生思想への批判と優生保護法の改正  168
 (4)優生手術に対する損害賠償訴訟  169
 (5)ハンセン病患者に対する断種  171

8.死体の侵襲と死因の究明 ......... 173
 1.死体の法的地位 ......... 173
 (1)樹脂加工死体の展示に対するドイツにおける議論  173
 (2)樹脂加工死体の展示に対するわが国における議論  174
 2.ドイツにおける死者からの臓器・組織の摘出 ......... 175
 (1)死者からの臓器および組織の摘出  175
 (2)死亡後の胎児・胚の臓器および組織の摘出  177
 3.死者の法的保護 ......... 177
 (1)死者に対する刑法上の保護  177
 (2)死者の人格権の延長  178
 (3)死体に対する実験  179
 4.死体からの臓器・組織の採取に関する判例 ......... 180
 (1)臓器等の標本の引渡請求事件  180
 (2)個別承諾のない臓器採取事件  182
 (3)遺族の同意のない解剖事件  184
 (4)中絶胎児と「廃棄物」  185
 5.死因の究明 ......... 187
 (1)ドイツ法制  188
 (2)日本法制  190
 小 括 ......... 199

第2章 生殖医療・遺伝子治療・ヒト胚研究
1.問題の所在 ......... 203
 1.遺伝子研究・治療の開く可能性 ......... 203
 (1)遺伝子研究の進展  203
 (2)遺伝子技術の将来の可能性  205
 (3)ヒト胚を用いた生殖医療技術の発達  205
 2.生殖医療の可能性と危険 ......... 207
 (1)生殖医療技術がもたらす将来と現在の危険  207
 (2)生殖技術の発展に基づく「生命の選択」の危険  207
 (3)ヒトの「生命の萌芽」の侵害  207
 (4)人の自己最適化  208
 (5)人間の改良と優生学の復活?  209
 3.法的規制の意義 ......... 209
 (1)法規制の方式  209
 (2)遺伝子治療・生殖医療の制限の意義  210
 4.本章の目的 ......... 212

2.生殖医療の基礎 ......... 213
 1.生命現象と遺伝子 ......... 213
 2.出生前におけるヒトの発達段階 ......... 215
 3.生殖細胞と体外受精 ......... 216
 4.ヒト胚とヒト受精胚 ......... 216
 5.ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の樹立 ......... 218
 (1)ヒトES細胞とEG細胞  218
 (2)iPS細胞  220
 6.クローン胚とキメラ胚......... 221
 (1)クローン胚の作成  221
 (2)クローンとハイブリッドの意義  223

3.ドイツにおける未出生段階の生命の法的保護 ......... 225
 1.ヒト胚をめぐるドイツの立法の沿革の概観 ......... 225
 2.人の生命の萌芽の法的地位 ......... 227
 (1)ヒト胚の倫理的・法的地位をめぐる論争  227
 (2)基本法における人間の尊厳と生命に対する権利  228
 (3)連邦憲法裁判所堕胎判決  229
 (4)人間の尊厳と生命権の射程の考察  232
 (5)出生前のヒトの生命の法的保護に関する若干の考察  241
 (6)段階説の考察  243

4.わが国における母胎内のヒト胚および胎児の法的保護 ......... 246
 1.ヒト胚と胎児の憲法上の地位とその保護 ......... 246
 2.ヒト胚と胎児の民法上の保護 ......... 247
 3.ヒト胚と胎児の刑法上の保護 ......... 247
 4.クローン技術規制法の保護 ......... 248

5.わが国における母胎外のヒト受精卵・受精胚の法的保護 ......... 249
 1.ヒト受精卵・ヒト受精胚の民法上・刑法上の保護 ......... 249
 2.ヒト受精卵・ヒト受精胚の行政命令上・ガイドライン上の保護 ......... 250
 (1)ヒト胚の取扱いの基本原則  250
 (2)研究目的のヒト受精胚の作成・利用  252
 3.ヒト受精胚・ヒトES細胞に関する規制 ......... 253
 (1) ヒト受精胚の作成・利用  253
 (2) ヒトES細胞の樹立  256
 (3) クローン技術規制法上ないしガイドライン上の規制  257

6.ドイツにおける胚保護法 ......... 258
 1.胚保護法の概要 ......... 258
 2.第1条1項 ......... 259
 (1)第1条1項1号の法益  260
 (2)第1条1項2号の法益  261
 (3)第1条1項3号の法益  262
 (4)第1条1項4号の法益  262
 (5)第1条1項5号の法益  263
 (6)第1条1項6号の法益  263
 (7)第1条1項7号の法益  264
 3.第1条2項 ......... 264
 4.第1条3項の法益 ......... 265
 5.第2条の法益 ......... 265
 6.第3条(性の選択の禁止) ......... 265
 (1)第1文  265
 (2)第2文  266
 7.第4条(専断的受精・専断的胚移植および死後の人為的受精) ......... 267
 8.第5条(ヒト生殖系胚の人為的変更) ......... 268
 9.第6条(クローニング) ......... 269
 10.第7条(キメラおよびハイブリッドの樹立)の法益 ......... 270
 11.第8条 概念の定義 ......... 270

7. わが国におけるクローン技術規制法 ......... 273
 1.胚・胎児の意義 ......... 273
 (1)人に対するクローン技術の応用に関する規制の端緒  273
 (2)クローン技術等規制法と指針の成立  274
 (3)クローン技術等規制法の定義規定  275
 2.クローン技術規制法の目的 ......... 275
 3.ヒト受精胚と同等の「特定胚」の移植・作成等の禁止・処罰 ......... 276
 (1)特定胚の一部の「移植」の禁止・処罰  277
 (2)特定胚の一部の「作成」「譲受」「輸入」の届出義務違反の処罰  278
 4.クローン技術規制法の規制の意義 ......... 279
 5.禁止・処罰規定の「保護法益」 ......... 281

8.ドイツにおける幹細胞法 ......... 282
 1.幹細胞の種類とその採取 ......... 282
 (1)全能性幹細胞  283
 (2)胚性幹細胞  284
 2.幹細胞を用いた医学研究の発展の可能性 ......... 285
 3.幹細胞法成立の経緯と立法理由 ......... 286
 4.幹細胞法の目的 ......... 288
 5.幹細胞研究の刑事法的規制の在り方 ......... 289
 (1)成体幹細胞の獲得と研究  289
 (2)胚性幹細胞の採取・獲得と研究  291
 6.幹細胞法第13条による刑事規制 ......... 292
 (1)幹細胞法13条の規定  292
 (2)幹細胞法13条の保護法益  292
 (3)幹細胞法6条による許可要件  294
 (4)幹細胞法4条による胚性幹細胞の輸入及び使用  294
 (5)幹細胞法5条による胚性幹細胞の研究  295
 7.幹細胞法の合憲性(研究の自由の侵害) ......... 295
 (1)人間の尊厳の「侵害」  296
 (2)侵害の正当化  297

9.わが国における遺伝子治療・遺伝子治療等臨床研究・ゲノム編集 ......... 300
 1.遺伝子治療に関する規制体系 ......... 300
 2.遺伝子治療等臨床研究 ......... 300
 (1)遺伝子治療等臨床研究に対する指針  300
 (2)臨床研究法  302
 (3)再生医療規制  303
 3.ゲノム編集の規制 ......... 310
 (1)ゲノム編集技術の課題  311
 (2)ゲノム編集の規制の現状  312
 (3)ゲノム編集の規制をめぐる課題  314

10.ドイツにおける遺伝子診断法と出生前診断規制 ......... 316
 1.遺伝子検査の発達とその危険 ......... 316
 2.出生前診断の発展過程 ......... 318
 3.遺伝子診断の可能性と危険 ......... 318
 4.遺伝子診断法と着床前診断法の成立 ......... 319
 5.遺伝子診断法の概要 ......... 320
 6.本法の目的・適用範囲および概念規定 ......... 323
 7.出生前診断の要件 ......... 324
 8.出生前診断の実際 ......... 325

11.ドイツにおける着床前診断に関する胚保護法第3条a ......... 327
 1.着床前診断の意義 ......... 327
 (1)着床前診断の法的意義  327
 (2)着床前診断の適応症  329
 2.着床前診断のドイツにおける端緒と問題点 ......... 329
 3.着床前診断の方法 ......... 330
 4.着床前診断の禁止か否かに関する胚保護法の解釈 ......... 331
 (1)2010年連邦裁判所判決の事案  332
 (2)地裁および連邦裁判所の判断  333
 (3)ベルリン控訴院の見解  335
 (4)妊娠させる目的以外の目的  335
 (5)胚保護法第1条1項5号、2条1項違反等  336
 5.胚保護法第3条aの立法の沿革 ......... 339
 6.着床前診断の禁止および許可の論拠 ......... 341
 (1)着床前診断禁止の根拠  341
 (2)着床前診断肯定の根拠  342
 7.胚保護法第3条aの概要 ......... 342
 (1)胚保護法3条aによる例外的許容  342
 (2)胚保護法3条aの規定内容   343
 8.胚保護法第3条aに対する批判 ......... 344
 (1)3条aの不明確性  344
 (2)重篤な遺伝病の高い危険・高い蓋然性  345
 (3)胚の重大な損傷  346
 9.胚保護法第3条aの解釈 ......... 347
 (1)危行犯  347
 (2)3条aの新設による解釈の変化  348
 10.生殖医療法ミュンヘン・アウグスブルク対案 ......... 348
 (1)草案起草者の3条aに対する批判  348
 (2)草案における着床前診断の規定  351

12.わが国における出生前診断・着床前診断の規制 .........353
 1.出生前診断の目的と方法 ......... 353
 2.出生前診断に関する自主規制 ......... 355
 (1)日本産科婦人科学会  355
 (2)いわゆる新型出生前診断に関する指針  356
 (3)母体血清マーカー検査に関する見解  358
 3.着床前診断 ......... 360
 (1)着床前診断と着床前スクリーニング  360
 (2)着床前診断の問題点  360
 4.学会会告(ガイドライン) ......... 361
 (1)日本産科婦人科学会会告  361
 (2)平成10年10月の会告  361
 (3)平成27年会告  363
 (4)令和3年の改正  364

13.まとめ ......... 366
 1.法律による規制と法律による行政の原則 ......... 366
 2.行政指針ないしガイドラインによるソフトな規制の憲法上の問題性 ......... 367
 3.価値衡量による相対的・段階的規制 ......... 368
 4.「人の生命の萌芽」の棄滅禁止(生命権保護)の原則と例外的許容の原則 ......... 369
 5.人間の尊厳および人類の種の保護と段階的保護規制 ......... 371

第3章 移植医療と脳死
はじめに ......... 375
1.臓器移植と脳死論議の史的展開 ......... 377
 1.臓器移植術の発展過程 ......... 377
 (1)従来の四段階の発達過程   377
 (2)古代から実験期(1900年以前)  378
 (3)停滞期(1900年以降)  378
 (4)再出発期(1950年~1970年頃)  379
 (5)普及期(1960年代末期以降)  380
 2.心臓移植と脳死概念の端緒と展開 ......... 380
 (1)死の定義の初期発展過程  380
 (2)脳死説の登場と心臓死説の普遍化  381
 (3)心臓移植術の確立と脳死  382
 (4)わが国における脳死論議の展開と臓器移植  383

2.臓器移植・脳死論議の最近の展開 ......... 387
 1.アメリカ大統領評議会白書(2008年)の衝撃 ......... 387
 2.わが国における臓器移植の停滞と脳死説への抵抗 ......... 388

3.脳死説への批判とその現状 ......... 390
 1.アメリカ合衆国大統領評議会・生命倫理白書 ......... 390
 2.全脳死説と心臓死説の対立の新たな様相 ......... 390
 3.ヨーロッパ、とくにドイツ語圏諸国における対立する見解 ......... 392
 4.わが国の脳死論議に対する影響 ......... 393

4.臓器移植をめぐるその他の主要論点の概観 ......... 395
 1.臓器移植の基本理念と関係者の責務 ......... 395
 2.提供者の意思 ......... 396
 (1)提供者意思尊重の原則  396
 (2)年少者・幼児の提供意思  397
 (3)親族優先提供の意思   397
 3.提供の任意性 ......... 398
 4.移植の適切施術 ......... 398
 (1)臓器移植機会の公平性・適正  399
 (2)生体臓器移植  400

5.臓器移植の現状・課題および展望 ......... 403
 1.ドイツにおける臓器移植の法的構造 ......... 403
 2.臓器移植の形態と実際上の課題 ......... 404
 (1)臓器移植の形態  404
 (2)脳死移植(提供)・心停止下移植(提供)  404
 (3)脳死判定・心臓死判定と観察期間・摘出準備期間  406
 (4)心停止判断の不明確性  406
 (5)時間短縮と移植成功率  407
 3.わが国の臓器移植の現状 ......... 408
 (1)臓器の意義  408
 (2)臓器移植全体の現状と動向  408
 (3)2009年臓器移植法改正による変化  410
 (4)生体臓器移植  416
 (5)個別臓器の移植の問題点  418
 4.欧米主要国における臓器移植の現状 ......... 427
 (1)アメリカ合衆国  428
 (2)ドイツにおける臓器移植の現状  429
 (3)スイス  442
 (4)オーストリア  444
 (5)諸外国との比較における日本の状況と特徴  445
 5.国際比較から見える移植医療の現代的課題 ......... 446
 (1)移植医療の危険性  446
 (2)一般的危険  446
 (3)臓器移植後の最大のリスク要因  447
 (4)移植医療の課題と展望  448

6.ドイツ語圏における最近の脳死論議 ......... 453
 1.2008年以降の脳死論議の再燃の経緯 ......... 453
 2.非心拍性提供・心拍性提供・心停止後提供・脳死後提供 ......... 455
 3.ドイツ語圏における最新の脳死論の状況 ......... 457
 (1)人類学的定義の問題点  457
 (2)死の発生経路  460
 (3)「死」の概念に関する基礎視座  462
 4.ドイツ倫理評議会における脳死論議 ......... 468
 5.脳死概念 ......... 469
 (1)心理的能力に関連づけた死の定義  470
 (2)生物学的統一体としての有機的組織体という観点からの死の定義  471
 (3)全脳機能の消失という区別基準とその倫理的帰結  471
 5.死概念をめぐる論争 ......... 472
 (1)立場A(脳死は人の死の確実な徴候である)  472
 (2)立場B(脳死は人の死の十分条件ではない)  473
 (3)デッド・ドナー・ルールの意義  476
 (4)非心拍性提供(Non-heart-beating-Donation)に対する見解表明  478

7.ドイツ移植法における脳死規定と脳死判定 ......... 481
 1.ドイツ移植法 ......... 481
 2.ドイツ連邦医師会の「脳死判定指針」の最新の改訂 ......... 483
 3.スイスにおける死亡判定 ......... 489
 (1)連邦移植法における臓器等摘出に関する規定  489
 (2)スイス「医療倫理指針」における死の臨床的診断  491
 4.オーストリアにおける死亡判定 ......... 495
 (1)臓器移植法第5条  495
 (2)オーストリア集中ケア協会連合(Federation of Austrian Society of Intensive Care Medicine=FASIM)死亡判定実施のための提言  496

8.わが国における脳死説と脳死判定 ......... 500
 1.「臓器移植法」における脳死概念の生物学・医学上の基礎 ......... 500
 (1)6条1項の「脳死」の解釈の法的基礎  500
 (2)人の死の人類学的・生物学的定義の観点  501
 2.臓器移植法における脳死概念の解釈 ......... 502
 (1)臓器移植法における脳死をめぐる論点  502
 (2)心臓死説  503
 (3)脳死説  510
 3.わが国における脳死判定 ......... 524
 (1)脳死判定に関する法令  524
 (2)脳死判定の主体  524
 (3)脳死判定の条件としての意思表示(臓器移植法6条3項)  525
 (4)脳死判定基準  525

9.ドイツにおける臓器摘出の要件と同意 ......... 530
 1.臓器提供者の同意に関する諸方式の意義と特質 ......... 530
 (1)同意方式(Zustimmungslosung)  530
 (2)反対意思表示方式(Widerspruchslosung)  531
 (3)通知方式(Informationslosung)  532
 (4)宣言方式(Eklarunglosung)  533
 (5)緊急避難方式(Notstandslosung)  533
 (6)意思決定方式(Entscheidungslosung)  534
 2.意思決定方式の原則規定 ......... 537
 (1)移植法3条  537
 (2)移植法4条(他人の同意を伴う摘出)  538
 (3)移植法4条a(死亡した胚および胎児からの摘出)  540

10.ドイツにおける臓器摘出・仲介・移植システム ......... 542
 1.摘出・移植手続の概観 ......... 542
 2.臓器提供から移植への手続の基本的仕組み ......... 543
 (1)標準手続  543
 (2)修正手続  551
 (3)即決手続  551

11.わが国における臓器移植システム ......... 553
 1.拡大された意思表示の内容 ......... 553
 (1)臓器移植法6条  553
 (2)問題点  553
 2.臓器提供者・レシピエントの範囲 ......... 554
 (1)遺族・家族の範囲  554
 (2)意思表示の有効性・虐待を受けた児童・自殺者  558
 3.臓器提供施設・臓器あっせん機関 (移植コーディネーター) ......... 560
 (1)臓器提供施設  560
 (2)臓器あっせん機関(移植コーディネーター)  561
 4.記録・閲覧・帳簿・秘密保持 ......... 562
 (1)記録の作成・保存・閲覧  562
 (2)臓器あっせん機関の帳簿の備付け等  564
 (3)秘密保持義務  564

12.ドイツにおける臓器移植システムの問題点 ......... 565
 1.ゲッティンゲン大学待機リスト操作事件 ......... 565
 2.連邦裁判所2017年6月28日判決(BGHSt 62, 223) ......... 566
 (1)判決要旨  566
 (2)連邦裁判所の認定事実および規範的前提  567
 (3)故殺未遂の不成立根拠  571
 3.連邦裁判所の判決理由に対する批判 ......... 573
 4.論点の考察 ......... 575
 (1)作為犯か不作為犯か  575
 (2)因果関係の有無  576
 (3)故意の有無  577
 5.本件スキャンダルの後始末と制度の改革の動き ......... 578

13.ドイツ移植法における生体移植の問題点 ......... 580
 1.生体移植に関する法規定 ......... 580
 2.臓器摘出基準 ......... 583
 (1)基本的観点  583
 (2)具体的摘出基準  584
 3.クロスオーバー(交差)生体移植 ......... 587
 (1)定 義  587
 (2)ドイツにおける展開  588
 (3)クロスオーバー生体移植の条件   589
 (4)クロスオーバー生体移植の分配手続  591
 (5)クロスオーバー生体移植の法的諸問題  592
 (6)生体移植そのものの法的問題点  594
 (7)クロスオーバー生体提供規制の改正をめぐる議論  597
 (8)クロスオーバー生体提供の(刑事)規制の問題点  598

14.わが国における生体移植の規制 ......... 601
 1.生体移植の意義と問題点 ......... 601
 (1)わが国の生体移植の特質  601
 (2)生体移植の基本理念  602
 (3)生体移植の特殊問題(病腎移植)  603
 2.臓器移植法の運用に関する「指針」(ガイドライン) ......... 604
 3.日本移植学会倫理指針 ......... 606
 4.日本臨床腎移植学会
 「生体腎移植のドナーガイドライン」 ......... 608
 5.日本移植学会「生体肝移植ガイドライン」 ......... 609
 まとめ ......... 610
 1.脳死問題 ......... 610
 2.臓器移植規制システム ......... 614

第4章 終末期医療と臨死介助
1.自殺関与罪の処罰根拠 ......... 619
 1.はじめに ......... 619
 2.ドイツにおける自殺関与罪草案の提案理由 ......... 621
 3.自殺関与罪処罰論の根拠 ......... 622
 (1)尊厳侵害論および病的精神状態論  623
 (2)性急決断防止論  625
 4.嘱託殺(216条)の処罰根拠 ......... 627
 (1)ドイツ刑法における嘱託殺・承諾殺・自殺関与  627
 (2)自己の殺害に対する同意の意義  627
 (3)基本権保護としての生命の保護  628
 (4)公益侵害や社会的法益侵害からの保護、その他、第三者の利益の保護  629
 (5)ダム決壊論あるいは雪崩現象論およびタブー違反論  630
 5.自殺関与罪不処罰の実質的根拠 ......... 631
 (1)ドイツ法体系および欧州人権協定からの論証  631
 (2)共犯論からの論証(共犯の従属性)  631
 (3)自殺関与と嘱託殺の相違  633
 (4)嘱託殺と自殺関与の区別の合理性?  637
 6.わが国における自殺関与罪の処罰根拠 ......... 638
 (1)処罰根拠論の理論状況  638
 (2)自殺適法論  639
 (3)自殺適法論を前提とする共犯の違法根拠  642
 (4)自殺違法論  645
 (5)自殺違法論を前提とする共犯の処罰根拠  648
 7.自殺関与罪の処罰根拠に対する私見 ......... 651
 (1)自殺の違法性  651
 (2)自殺関与の違法性  654
 8.まとめ ......... 659

2.ドイツにおける自殺関与処罰の新立法成立前史 ......... 660
 1.はじめに ......... 660
 2.連邦議会における立法提案の審議 ......... 660
 (1)連邦議会における決議  660
 (2)四つの立法提案に対する専門家の意見  661
 (3)連邦司法省参事官案以降の流れ  663
 3.立法論議の背景事情 ......... 665
 (1)自殺援助組織の設立  665
 (2)ドイツにおける自殺介助に関する経験的研究  668
 (3)ラスケ・アル・ハモウドのアンケート調査  669
 (4)医師によって援助された自殺  672
 4.ドイツ初期立法史ならびに臨国における立法 ......... 674
 (1)ドイツにおける従来の立法提案  674
 (2)ヨーロッパ近隣諸国の自殺関与法制  676
 5.1970年から2005年までの立法提案 ......... 679
 (1)民法における立法論議  679
 (2)刑法における立法提案の展開  681
 6.「刑法217条」立法に関する公式草案(2006年以降) ......... 691
 (1)公式立法提案の経過  691
 (2)諸ラントの立法提案  691
 (3)2012年連邦司法省の提案  694
 7.まとめ ......... 696

3.ドイツ刑法217条の成立・批判・違憲判決 ......... 697
 1.はじめに ......... 697
 2.ドイツ刑法第217条の成立と立法理由 ......... 703
 (1)第18選挙期の立法提案における「立法目的」  703
 (2)217条の立法理由  704
 3.刑法217条の解釈上の疑問 ......... 712
 (1)刑法の基本原理からの検討  713
 (2)憲法上の基本原理からの検討  722
 4.立法理由における各構成要件要素の説明 ......... 725
 (1)第1項について  726
 (2)第2項について  729
 5.学説における217条の原理的批判 ......... 731
 (1)217条は、抽象的危険犯か  731
 (2)抽象的危険犯説批判  733
 6.217条の各構成要件要素の解釈の批判 ......... 734
 (1)「自殺の機会」の解釈(構成要件要素の不明確性)  734
 (2)「提供・調達・仲介」の概念  736
 (3)業務性概念  737
 (4)主観的要件  738
 (5)共 犯  739
 7.217条に対する法政策上の批判 ......... 741
 (1)秩序違反法による規制提案  741
 (2)手続法上の規制提案  743
 (3)自殺介助の「動機」を根拠とする処罰提案  746
 8.連邦憲法裁判所違憲判決 ......... 747
 (1)判決と事実の概要  747
 (2)指導命題(Leitungssatz)  748
 (3)217条が一般的人格権を侵害するという根拠としての自殺の自由が制限されること  749
 (4)一般的人格権の侵害を正当化する根拠はない  750
 (5)217条がなければ自殺が増えるか?  751
 (6)社会的強制によって受けた自己決定に至る危険はあるか?  751
 (7)刑法217条は、法益保護のために必要か?  752
 (8)刑法217条は、法益保護のために相当か?  753
 (9)保護義務が自己決定に優越する条件としての自己決定の危殆化  753
 (10 217条は、自律的自己決定の展開の余地を侵害する  754
 (11)職業の自由侵害等による違憲性  754
 (12)結論─違憲・無効、対案の可能性  754
 9.まとめに代えて ......... 756
 (1)将来の立法への付託  756
 (2)三形態の政策提言  756
 (3)事前相談制度  757
 (4)自由な死の保障と生命の保護のバランス  759
 (5)わが国における自殺予防と臨死介助への示唆  761

4.臨死介助と推定的同意論・緊急避難論 ......... 762
 1.はじめに ......... 762
 2.2010年および1995年連邦裁判所判決 ......... 764
 (1)2010年6月25日の連邦裁判所判決(いわゆるプッツ事件)  764
 (2)連邦裁判所1994年9月13日判決(Kemptener Fall)  768
 3.問題の前提的考察 ......... 772
 (1)同意能力の継続的・一時的不存在の場合  772
 (2)意思に反する行為の場合  773
 (3)同意の法的に不可能な場合  774
 4.推定的同意の適用に関する考察 ......... 776
 (1)一時的同意無能力  776
 (2)継続的同意無能力  777
 5.緊急避難規定の適用に関する学説 ......... 779
 (1)学説の状況  779
 (2)同一法益主体間の緊急避難規定適用を否定する見解  780
 (3)緊急避難の正当化原理からの論証  780
 6.結びに代えて ......... 786

5.わが国における終末期医療と延命措置の中止─その問題状況─ ......... 790
 1.問題の所在 ......... 790
 (1)安楽死問題から延命治療の中止問題へ  790
 (2)高齢化社会の到来を背景とした終末期医療  791
 (3)延命治療の中止の前提と中止希望者の増加  792
 (4)延命治療に関する高額医療費と補助の問題  793
 (5)延命治療の中止をめぐる法的状況に関する論述の展開方法  793
 2.安楽死・尊厳死に対する刑法上の規定と立法の必要性 ......... 794
 (1)刑法上の処罰規定  794
 (2)終末期における延命中止(消極的安楽死)の許容の立法化  795
 3.終末期医療の中止の問題点 ......... 796
 (1)終末期医療の不開始(差し控え)と中止  796
 (2)延命治療不開始の要件をめぐる問題点  796
 4.判例と事件における安楽死・延命治療中止問題 ......... 799
 (1)積極的安楽死  799
 (2)これまでの延命治療の中止事件  802
 (3)医師以外の家族等による安楽死  803
 5.近年公表されたガイドライン・勧告 ......... 804
 6.終末期医療と安楽死・尊厳死の法制化への動き ......... 805
 (1) 日本尊厳死協会の発足と活動  805
 (2) 終末期における本人意思の尊重を考える議員連盟(2015年2月)の活動  805
 7.厚生労働省 「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」 ......... 806 
 (1)終末期医療及びケアの在り方  806
 (2)終末期医療及びケアの方針の決定手続  807
 8.終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)の検討 ......... 808
 (1)終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(2012年)の内容  808
 (2)法案に対する日弁連の批判  809
 9.まとめ ......... 812

6.終末期医療における臨死介助刑事免責論 ......... 814
 1.はじめに ......... 814
 2.刑法上の問題解決の基礎視座 ......... 824
 3.判例(東海大学医学部事件・川崎協同病院事件) ......... 827
 (1)東海大学医学部事件  827
 (2)川崎協同病院事件  829
 4.治療・延命措置の不開始・中止の概念的基礎 ......... 835
 (1)治療・延命措置の不開始と中止  835
 (2)医療現場における延命措置の不開始・中止  837
 (3)人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン  841
 (4)日本透析医学会ガイドライン  843
 5.「不開始・中止」の不処罰根拠をめぐる学説の検討 ......... 844
 (1)消極的臨死介助(延命措置の不開始)  844
 (2)治療・延命措置の「中止」の意義  848
 (3)不作為犯構成説の検討  850
 (4)「治療の不開始と中止」同一扱い説  856
 (5)治療の不開始=不作為犯説  862
 (6)治療義務に関する判例  863
 (7)治療拒否による「治療義務の消滅」  865
 (8)断続的治療行為の中止  866
 6.間接的臨死介助 ......... 866
 (1)間接的臨死介助の不可罰性の根拠  866
 (2)学説の検討  867
 7.積極的臨死介助 ......... 877
 (1)積極的臨死介助に関する連邦医師会の禁止宣言  877
 (2)積極的臨死介助可罰説  878
 (3)積極的臨死介助の不処罰根拠論  880
 (4)植物状態における尊厳死に関する積極的臨死介助  891
 8.まとめに代えて(立法試案) ......... 903
 (1)立法提案の趣旨と概要  903
 (2)立法試案  906

日本語文献 ......... 911
外国語文献 ......... 946
判例索引(日本) ......... 971
判例索引(ドイツ) ......... 973
事項索引 ......... 975
初出一覧 ......... 985