錯誤とリスク負担

錯誤とリスク負担

古谷英恵 著
定価:9,350円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2022年03月25日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    426頁
  • ISBN:
    978-4-7923-2781-1
カートに入れる

書籍購入は弊社「早稲田正門店インターネット書店」サイトでの購入となります。

内容紹介


《目 次》

はしがき(i)
初出一覧(xv)

序章1
第1節 はじめに   1
1 問題の所在(1)
2 本書の課題(5)
第2節 研究方法と研究対象   5
1 分析の方法と視角、対象(5)
(1)分析の方法(5)  
(2)分析の視角(7)  
(3)分析の対象(9)
2 本書の展開(11)

第1章 我が国の錯誤要件をめぐる議論状況と問題の再確認   13
第1節 序論13
第2節 旧民法典における錯誤法準則   13
1 概観(13)
2 合意の成立(14)
3 合意の解釈(16)
4 錯誤(17)
(1)概 説(17)  
(2)錯誤の分類と要件(18)  
(3)錯誤の効果(21)
5 小括(21)
第3節 明治民法典における錯誤法準則   22
1 概説(22)
2 明治民法典における錯誤の取扱い(22)
(1)審議過程(22)  
(2)立法理由(24)  (
3)要素の錯誤(24)
3 旧民法典と明治民法典の修正案理由書における契約解釈及び錯誤法準則の相違(27)
(1)契約の解釈(27)  
(2)錯誤の構成(27)  
(3)動機錯誤の取扱い(28)
第4節 明治民法典及び改正前民法における判例・学説の動向と民法改正   28
1 契約の解釈(28)
(1)初期の学説(28)  
(2)一元的な客観的解釈説(29)  
(3)二元論(30)
(4)改正民法(33)
2 錯誤要件の構成と「動機錯誤」の定義(33)
(1)概説(33)  
(2)一元論(34)  
(3)二元論(35)
(4)改正民法(35)
3 「動機錯誤」を顧慮する追加的要件(36)
(1)初期の学説・判例(36)  
(2)客観主義の台頭と動機表示構成(39)
(3)改正民法(40)
4 「要素」概念の判断基準(43)
(1)従来の判例・学説(43)  
(2)改正民法(47)
5 無重過失(48)
(1)従来の判例・学説(48)  
(2)改正民法(49)
第5節 問題の再確認   50

第2章 アメリカ契約法における錯誤法理の概観   55
第1節 序論   55
第2節 英米法における錯誤の位置付け―コモン・ローとエクイティ   55
1 法源(55)
2 判例法―コモン・ローとエクイティ(56)
(1)沿革―1066年ノルマン人の征服から1873年及び1875年最高法院法まで(56)
(2)コモン・ローとエクイティの関係(58)
3 現代におけるコモン・ローとエクイティの融合(59)
第3節 現代アメリカ契約法とリステイトメント   61
1 現行法としてのリステイトメント(61)
2 リステイトメントとは何か(61)
(1)意義と起草主体(61)  
(2)起草過程(62)  
(3)起草方針と形式(63)
3 アメリカ法におけるリステイトメントの位置付け(64)
4 リステイトメントを研究対象とする意義(65)
第4節 現代アメリカ契約法における錯誤法理の概観   66
1 契約(66)
2 錯誤(67)
(1)意義(67)  
(2)要件と効果(68)
3 小括―錯誤要件の特徴(74)
第5節 錯誤法理の歴史的概観   74
第6節 総括   76

第3章 19世紀初頭のイギリス契約法における錯誤の取扱い   79
第1節 序論   79
第2節 19世紀初頭のコモン・ロー裁判所における訴訟手続・証拠準則と錯誤の取扱い   79
1 概 説(79)
2 19世紀初頭のコモン・ロー裁判所における訴訟手続と証拠準則(80)
(1)訴訟方式(80)  
(2)訴答手続と抗弁(81)
3 コモン・ロー裁判の証拠方法(87)
(1)証拠方法の特徴(87)
(2)正式文書以外の証拠の不採用―口頭証拠排除準則と1677年詐欺防止法(87)
(3)当事者及び利害関係人の証人適格(89)
4 小括(90)
第3節 19世紀初頭のエクイティにおける錯誤の救済方法   91
1 概説(91)
2 エクイティ裁判所の裁判(91)
(1)エクイティの補充性と法領域(91)  
(2)エクイティ裁判所の訴訟手続(92)
(3)エクイティ裁判の特徴(93)
3 エクイティにおける錯誤の救済手段(94)
(1)概説(94)  
(2)文書補正命令(96)  
(3)特定履行の拒絶(101)
(4)取消し(107)  
(5)その他の救済方法と錯誤(108)
4 小括(109)
第4節 総括   110

第4章 アメリカ契約法上の錯誤法理の生成とポティエの影響   111
第1節 序論   111
第2節 アメリカ法形成時代   111
1 背景(111)
2 イギリスのコモン・ローによる大陸法の借用と契約法(113)
(1)大陸法の借用(113)  
(2)契約法と意思理論(115)
3 アメリカ法の形成と大陸法(118)
第3節 エヴァンス版におけるポティエの錯誤理論   119
1 エヴァンス版のポティエ『債務法概論』(119)
2 契約(120)
3 錯誤(121)
4 小括(123)
第4節 アメリカ契約法における錯誤理論の継受―約因滅失の法理と錯誤理論の接合   124
1 学説(124)
(1)ケント『アメリカ法釈義』(124)  
(2)ストーリー『エクイティ釈義』(128)
2 判例―アレン事件(134)
(1)序論(134)  
(2)アレン事件(135)  
(3)小括―法律構成(136)
3 約因滅失の法理と錯誤理論の接合(137)
第5節 総括―初期の錯誤法理と大陸法   138

第5章 アメリカ契約法上の錯誤法理の発展とドイツ法の影響   141
第1節 序論   141
第2節 アメリカ法における指導的判例と判例法理の確立   142
1 背景(142)
2 ウッド事件・シャーウッド事件の指導的立場の確立の経緯(144)
3 ウッド対ボイントン事件(145)
4 シャーウッド対ウォーカー事件(146)
5 指導的判例における錯誤法理(147)
(1)序 論(147)  
(2)ケネディ対パナマ等王立郵便会社事件(148)
(3)リーク(151)  
(4)ベンジャミン(154)
(5)ウィリアム・ストーリー(158)
(6)小括―指導的判例における錯誤法理(161)
第3節 問題の所在と同時代の取組み   164
1 問題の所在(164)
2 ハフカットによる評価―ローマ法由来の錯誤類型による説明(164)
(1)『アメリカ契約判例集』における両事件の位置付け(164)
(2)アメリカ版アンソンにおける両事件の注釈(165)
3 問題の再浮上(167)
第4節 本質性要件と「異種物」基準の結合の可能性   169
1 序論(169)
2 英米法に対するドイツ法の影響(169)
3 サヴィニーの「異種物」基準(170)
4 英米契約法上の錯誤と「異種物」基準の結合の試み(172)
第5節 「異種物」基準の導入への抵抗   174
1 アメリカ契約法における主観主義的意思理論から客観理論への転換(174)
2 ホームズの錯誤法理論(177)
(1)契約と約因(177)  
(2)錯誤(178)
3 小括(182)
第6節 総括   183

第6章 法形式主義、法学リアリズムとリステイトメントにおける錯誤法理―第一次契約法リステイトメント及び第一次原状回復法リステイトメント―   185
第1節 序論   185
第2節 法形式主義とリステイトメント   186
1 概説(186)
2 ラングデル(187)
3 ホームズ(187)
4 法形式主義とリステイトメント(188)
第3節 第一次リステイトメントにおける契約の成立と解釈、そして錯誤法理   189
1 契約法リステイトメントと原状回復法リステイトメント(189)
2 契約の成立と解釈(190)
(1)契約の成立(190)  
(2)契約の解釈(190)
3 錯誤の意義と要件(191)
(1)錯誤の定義と分類(191)  
(2)要件(192)
4 救済方法(196)
5 第一次リステイトメントにおけるリスク配分(197)
6 小括―法形式主義、法学リアリズムとリスク(199)
第4節 第一次リステイトメントに対する法曹界の評価―法形式主義と法学リアリズム   203
1 概説(203)
2 パターソンによる評価(204)
3 法形式主義と法学リアリズム(205)
第5節 法学リアリズムの盛衰   206
第6節 総括   209

第7章 第二次大戦前後の錯誤法理―三つの理論的挑戦―   213
第1節 序論   213
第2節 客観主義的意思理論への批判と主観主義的意思理論の復興   214
1 第一次契約法リステイトメントにおける客観主義的意思理論(214)
2 主観主義的意思理論の復興―コービン・ウィッター論争(215)
(1)概 説(215)  
(2)ウィッターによる批判(216)
(3)コービンによる擁護(217)  
(4)ウィッターによる再批判(218)
3 コービンの契約解釈(219)
(1)背景(219)  
(2)契約法の目的(220)  
(3)契約の定義(222)
(4)契約解釈の原則(222)
(5)解釈方法―interpretationとconstruction(223)
第3節 錯誤法理とリスク概念の理論的整合性―コービンの試み   225
1 概説(225)
2 錯誤の定義(226)
3 相互的錯誤(227)
(1)要件(227)  
(2)救済手段(228)
4 一方的錯誤(229)
(1)要件(229)  
(2)救済手段(232)
5 「リスク負担」要件(233)
(1)概説(233)  
(2)「意識的なリスク負担」(233)
(3)「将来に関する意識的不知」(233)
(4)ウッド事件とシャーウッド事件の取扱い(234)
6 小括(236)
第4節 不衡平是正理論―パルマーとラビンの挑戦   237
1 概説(237)
2 不当利得法の発展(237)
3 不衡平是正理論(238)
(1)概 説(238)
(2)第一次原状回復法リステイトメントにおける錯誤法理(239)
(3)パルマーによる錯誤論(240)  
(4)ラビンによる錯誤論(242)
4 小 括(247)
第5節 総括   248

第8章 第二次契約法リステイトメントにおける契約法理論と錯誤法理   251
第1節 序論   251
第2節 契約法理論をめぐる論争   251
1 概説(251)
2 各見解の概要(253)
(1)当事者意思に着目する見解(253)  
(2)損失的信頼理論(257)
3 小括(258)
第3節 第二次契約法リステイトメント259
1 概説(259)
2 契約の成立と有効性(260)
3 相互的同意の成立と解釈(261)
(1)相互的同意の成立(261)  
(2)相互的同意の解釈(263)
4 意思の不一致(264)
5 錯誤の定義(266)
6 錯誤の要件と効果(268)
(1)序 論(268)  
(2)相互的錯誤(268)  
(3)一方的錯誤(278)
(4)救済を求める当事者の過失(285)  
(5)救済方法(292)
7 小括―契約の拘束力の根拠と第二次契約法リステイトメント(294)
第4節 総括―第二次契約法リステイトメントにおける「リスク負担」要件   295

第9章 錯誤のリスク負担とは何か   297
第1節 序論   297
第2節 リスクの意義   297
1 「リスク」(297)
2 「リスク負担」又は「リスク引受け」(298)
3 「リスク配分」又は「リスク割当」(299)
第3節 分類と手続法上の位置付け   300
1 分類―狭義のリスクと広義のリスク(300)
(1)概 説(300)  
(2)広義のリスクと狭義のリスク(300)
(3)第二次契約法リステイトメントにおける錯誤のリスク負担(301)
2 リスク負担の手続法上の位置付け(301)
第4節 リスク負担の判断基準   303
1 概説(303)
2 合意によるリスク負担(304)
3 限定された知識であると気づいていること(意識的不知)(307)
4 裁判所によるリスク配分(310)
5 小括―狭義のリスク負担と情報の不確実性(314)
第5節 総括   316

第10章 「錯誤のリスク負担」要件の理論的根拠   317
第1節 序論   317
第2節 契約法理論における位置付け―契約自由の原則と錯誤の狭義のリスク負担   317
1 概説(317)
2 契約自由の原則(317)
(1)契約自由の原則とは何か(317)  
(2)背景(318)
(3)契約自由の原則の限界(320)
(4)契約自由の原則、自己決定・自己責任と情報の収集・分析(320)
3 契約自由の原則と錯誤のリスク負担(322)
(1)契約とその解放としての錯誤(322)
(2)自己決定・自己責任と錯誤のリスク負担(322)
(3)意思、情報と狭義のリスク負担(325)
4 小括(327)
第3節 錯誤のリスク負担の指導原理―法と経済学の試み   328
1 概説(328)
2 法と経済学とは何か(329)
(1)意義(329)  
(2)「法と経済学」の法に対する観点と分析方法(330)
(3)「法と経済学」におけるクロンマン論文の位置付け(331)
3 錯誤と「法と経済学」(333)
(1)序 論(333)  
(2)「法と経済学」と合理的行為者モデル(333)
(3)錯誤、錯誤のリスク負担と「法と経済学」―クロンマンによる分析を中心として(336)
第4節 考察   351
1 問題の再検証(351)
2 クロンマン論文を前提とした「錯誤のリスク負担」の指導原理(353)
3 契約法理論と「錯誤のリスク負担」の指導原理―パラダイムシフト?(354)
4 統一的原理の妥当性の検証(355)

第11章 考究   359
第1節 序論   359
第2節 アメリカ契約法上の「錯誤のリスク負担」要件の展開と到達点   360
1 正当化根拠(360)
2 具体的判断基準(361)
第3節 アメリカ契約法における錯誤の適用領域―日米両法の比較検討から   362
1 概説(362)
2 一方的錯誤(362)
3 原始的不能との関係(365)
4 詐欺、不実表示との関係(366)
5 小括(369)
第4節 錯誤要件の日米法比較   370
1 概説(370)
2 錯誤の定義(371)
3 錯誤の対象範囲の確定と取引の安全の確保(371)
4 救済すべき錯誤の程度(372)
5 無重過失(373)
6 小括(374)
(1)狭義の「錯誤のリスク負担」要件の日本民法上の位置付け(374)
(2)狭義の「錯誤のリスク負担」と「基礎的事情の表示」要件における各説の対応関係(376)
第5節 「錯誤のリスク負担」をめぐる日米の相違   378
1 概説―我が国における「錯誤のリスク」論(378)
(1)広義のリスク負担(378)  
(2)狭義のリスク負担(379)
2 法律行為の内容化説における「錯誤のリスク負担・分配」(380)
(1)概 説(380)  
(2)規範的評価説(380)  
(3)合意説(382)
3 日米両法における「錯誤のリスク負担」の異同(382)
(1)規範的評価説と合意説の相違―アメリカ契約法との比較から(382)
(2)「法律行為の内容化」とアメリカ契約法の「錯誤のリスク負担」(383)
4 小括―「錯誤のリスク負担」の考慮要素の相違(386)
第6節 日本法への示唆   388
1 狭義の「錯誤のリスク負担」の正当化根拠(388)
(1)序 論(388)  
(2)意思原理(390)  
(3)相手方の信頼保護(390)
(4)表意者及び相手方の結果回避における帰責性(392)
2 「基礎的事情の表示」要件における判断基準(393)
(1)概説(393)  
(2)基礎的事情が合意に至っている場合の取扱い(393)
(3)基礎的事情が合意に至っていない場合の取扱い(394)  
(4)小括(395)
3 具体的事案の検討―最判平成28年1月12日民集70巻1号1頁(396)
(1)序論(396)  
(2)最判平成28年1月12日民集70巻1号1頁(396)
(3)本判決の意義(399)  
(4)本判決の判断枠組み(399)
(5)学説(400)  
(6)検討(402)
第7節 総括―情報の対称性・非対称性と基礎的事情の表示   404
結語407