憲法と非常事態の法理
日本大学法学部叢書 第47巻

憲法と非常事態の法理

不文の緊急権としての「必要性の原理」の立憲化
東 裕 著
定価:6,050円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2023年04月28日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    296頁
  • ISBN:
    978-4-7923-0717-2
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内容紹介


《目 次》

はしがき i
初出一覧 xvii

序章 対象・目的および構成  1

第Ⅰ部 現代国家と緊急権
第一章 緊急権の類型 ―戒厳・緊急命令・フランス第五共和制憲法一六条―  9
はじめに  9
一 近代型緊急権  10
(一) 戒厳(合囲状態)  10
(二) 緊急命令  11
二 現代型緊急権  13
(一) 緊急措置権の場  14
(二) 緊急措置権の発動手続  17
(三) 緊急措置権発動中のコントロール  18
おわりに  19

第二章 緊急権の行使要件 ―フランス第五共和制憲法一六条の行使要件の分析―  23
はじめに  23
一 緊急権の行使要件の意義  24
(一) 緊急権規定の明確化の意義と限界  24
(二) 緊急権規定の詳細化の意義と限界  25
(三) 緊急事態における政治の論理  26
二 一六条の緊急措置権の行使要件  27
(一) 実体要件  28
(二) 形式要件  32
三 行使要件の機能と限界  45
おわりに  46

第三章 緊急事態と国会 ―国会による緊急権コントロール―  51
はじめに  51
一 緊急事態における国会の関与  51
二 国会による緊急措置の承認  54
(一) 国会意思への服従の保障  55
(二) 国会の意思表明の保障  55
(三) 緊急措置の承認が行われない場合  57
二 一六条適用中の国会の役割  58
三 国会よりも仲裁者としての大統領の自己制約  60
おわりに  61

第四章 緊急権行使主体の地位と権能 ―仲裁者としての大統領とその使命―  65
はじめに  65
一 「使命」(misssion)の概念  66
二 「仲裁」(arbitrage)の概念  67
三 仲裁と大統領権限  71
(一) 大統領権限の分類と仲裁  71
(二) 仲裁と緊急措置権  73
(三) 仲裁と国民議会解散権  74
(四) 仲裁と国民投票付託権  76
おわりに  77

第五章 緊急命令の憲法史的起源 ―一八一四年憲章一四条の解釈と適用―  83
はじめに  83
一 一八一四年憲章について  84
(一) 君主制を採用した理由  84
(二) 「憲法」ではなく「憲章」の意味  85
(三) 国王の地位と権能  87
二 一四条をめぐる議論  87
(一) 一般的基礎  88
(二) 憲法明文の規定  89
(三) 歴史的解釈  91
(四) 政府および議会の実際  91
三 一八三〇年七月勅令の性格  92
(一) 七月勅令の内容と根拠  93
(二)七月勅令の法的性格  94
おわりに  96


第Ⅱ部 不文の緊急権「必要性の原理」
第六章 緊急権とクーデタ ―緊急権の濫用としてのクーデタ―  103
はじめに  103
一 クーデタの法的定義  104
(一) クーデタの定義に関する学説  104
(二) クーデタの要件  106
(三) クーデタと革命  107
(四) ケルゼン理論におけるクーデタと革命  108
(五) クーデタを定義する  109
二 クーデタと憲法―英連邦を中心に  110
(一) クーデタ・革命と憲法廃止  110
(二) 憲法廃止をともなうクーデタ・革命  111
(三) 憲法廃止をともなわないクーデタ  112
三 「必要性の原理」(doctrine of necessity)  113
(一) 「必要性の原理」の形成  113
(二) 「必要性の原理」の適用要件  113
四 「成功したクーデタの原理」(The "successful coup" doctrine)  115
(一) 「成功したクーデタの原理」の形成  115
(二) 「成功したクーデタの原理」の適用要件―「実効性のテスト」  115
五 成文憲法主義における不文法理の位置づけ  116
(一) 成文憲法主義と緊急権  116
(二) 超憲法的緊急権の発動と統制  117
おわりに  120

第七章 不文の緊急権法理 ―「必要性の原理」(doctrine of necessity)―  125
はじめに  125
一 日本国憲法と不文の緊急権  126
(一) 不文の緊急権否定説  126
(二) 不文の緊急権肯定説  127
(三) 不文の緊急権として「必要性の原理」  128
二 緊急権としての「必要性の原理」の形成と展開  129
(一) わが国における「必要性の原理」の紹介  129
(二) 英連邦諸国における「必要性の原理」の形成と展開  131
三 フィジーにおける「必要性の原理」の適用  134
(一) フィジー独立後の憲法政治  134
(二)フィジーの判決にみる「必要性の原理」  137
四 英連邦諸国の事例からみた「必要性の原理」の適用要件  144
(一) 「必要性の原理」の適用が求められる状況(実体要件)  144
(二) 「必要性の原理」の下にとられる措置の程度・性格  144
(三) 「必要性の原理」によってとられる措置の目的  144
五 日本国憲法と「必要性の原理」の適用  146
おわりに  149

第八章 非常事態と司法権 ―非常事態における司法権の地位と機能―  153
はじめに  153
一 クーデタと司法権の関係  154
(一) クーデタと司法審査  154
(二) クーデタ実行者と司法権  155
(三) 「暗黙の取引」の理論  156
二 判決の潮流  160
(一) 「危険な判決」の出現  160
(二) 「成功したクーデタの原理」の適用要件  162
(三) 判例の新傾向―ケルゼン理論の放棄  163
三 ケルゼン理論の援用または誤用  164
(一) 革命とクーデタ  164
(二) 革命の現行法への影響  166
四 フィジーにおけるクーデタと司法審査  167
(一) 争点としての「必要性の原理」  167
(二) クーデタと三つの判決  168
(三) 「必要性の原理」の適用要件の確立  170
おわりに  172


第Ⅲ部 日本国憲法と緊急権
第九章 緊急権の立憲化案の比較検討 ―各種改憲草案における緊急権制度―  181
はじめに  181
一 各改憲案の比較  182
(一) 緊急事態の類型  182
(二)緊急事態宣言の主体・要件・手続  183
(三) 緊急事態宣言の効果  185
(四) 緊急事態の民主的統制  187
二 改憲反対論からの評価―自民党改正草案批判  191
(一) 緊急権規定を置くこと自体への反対  191
(二) 緊急事態条項への批判―事実の曲解・論理の飛躍  193
三 緊急権論議の「不毛」?  195
おわりに  197

第一〇章 国家緊急権論の新展開 ―日本国憲法と緊急権論の限界―  205
はじめに  205
一 国家緊急権の論じられ方  206
(一) 国家緊急権の忌避  206
(二) 国家緊急権規定の不存在の理由と解釈  207
(三) 国家緊急権論における憲法と国家  210
二 国家緊急権の場  211
(一) 憲法上の国家緊急権  212
(二) 緊急事態法制  214
(三) 立憲主義と国家緊急権  215
三 自民党改憲案における緊急権  217
(一) 緊急事態宣言の要件  217
(二) 緊急事態宣言の効果  218
(三) 緊急事態の民主的統制  220
おわりに  221

第十一章 戦後憲法学と国家緊急権 ―日本国憲法と超憲法的緊急権の可能性―  229
はじめに  229
一 戦後憲法学の特徴  230
(一) 憲法学=憲法典解釈学  230
(二) 憲法の前提=国家の存立  232
(三) 憲法の前提=非常事態なき「平和」  233
二 日本国憲法と非常事態  235
(一) 国家緊急権の目的=国家の存立・憲法秩序の維持  235
(二) 超憲法的国家緊急権の存在理由  236
(三) 国際法の考え方  237
三 超憲法的国家緊急権の適用要件  238
(一) 学説の見解  239
(二) 国際法の視点  241
(三) 「必要性の原理」の考え方  241
(四) 超憲法的国家緊急権の適用の場とその要件  243
四 超憲法的緊急権規定の立憲化とその留意点  244
(一) 不文の緊急権法理の立憲化の危険性と必要性  244
(二) コロナ禍の教訓  245
おわりに  247

終章 「不文の緊急権」の立憲化とその課題  253

参考文献  259
事項索引  (1)