刑法の分化史

刑法の分化史

安藤泰子 著
定価:18,700円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2023年06月02日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    800頁
  • ISBN:
    978-4-7923-5395-7
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内容紹介

《目 次》

はしがき


一 問題の所在 3
二 諸点に関する研究状況および本研究の視座 5
 1 国際刑法および国際刑事訴訟理論の構築の必要性 (5)
 2 国際刑法の把握(6)
 3 国際公秩序に関する研究(7)
 4 「刑法の分化」に関する考察(8)
三 研究方法 9
四 刑法の連続性と同質性 13
五 責任の分化 ―概説― 14
六 本書の構成 31


第一篇 刑法の分化史

第一章 バビロニア ―古代バビロニアのハムラビ法典― 49
はじめに 49
第一節 ハムラビ法典に先立つ三法典 50
 一 ウル・ナンム法典 51
 二 リピト・イシュタル法典 53
 三 エシュヌンナ法典 54
第二節 ハムラビ法典 58
 一 概説 58
  1 法典制定の沿革(58)
  2 内容(59)
  3 特徴(60)
  4 形式(61)
 二 裁判 63
 三 証拠 65
 四 刑罰および賠償 66
  1 両者の根底にある王権神授思想(66)
  2 主だった刑罰および賠償規定(67)
  3 タリオの実行主体と刑罰権の法的性格(69)
 五 強制執行 78
 六 現代法への示唆 80
  1 契約・約款の起源―売主の瑕疵担保責任(80)
  2 被害者救済制度の嚆矢(80)
  3 タリオと罪刑法定主義(82)
第三節 ハムラビ法典に現れたタリオ 84
 一 法制史学からの位置づけ 84
 二 問題の所在 85
 三 考察 86
 四 三法典における「刑」に関する見解 88
 五 三法典における「刑」の法的性格および意義 90
 おわりに 97

第二章 ヒッタイト ―ヒッタイト法書― 121
はじめに 121
第一節 概観 122
第二節 特徴 124
第三節 奴隷に関する諸規定 127
第四節 問題の所在 129
第五節 検討 130
第六節 恩赦と刑の執行 139
おわりに 141
 
三章 イスラエル ―古代イスラエルにおけるモーセ法― 147
はじめに 147
第一節 モーセ法の概観 148
第二節 十戒 151
第三節 裁判 154
第四節 モーセ法における人道原則 156
第五節 安息年 158
第六節 タリオと賠償 159
第七節 賠償と刑罰 160
 一 概観 161
 二 申命記 162
 三 出エジプト記 163
第八節 避難 所 164
 一 過失の殺人と避難所 164
 二 避難所と裁判 166
 三 私的制裁から公的制裁へ 167
おわりに 168

第四章 ギリシア―古代ギリシアにおける刑罰観と訴訟観― 181
はじめに 181
第一節 古代ギリシア法の法源 182
第二節 私的訴追と民事訴訟制度 183
 一 私的訴追と私力救済 183
 二 民事訴訟制度の濫觴 185
 三 不文慣習法から成文法へ 187
  1 ドラコン法(187)
  2 民衆裁判所と陪審員(189)
 四 ソロンの改革と民衆訴追制度 191
  1 ソロンの改革(191)
  2 民衆訴追制度(193)
 五 殺人の穢れ 195
  1 穢れと復讐の制限(195)
  2 私的訴権から公的訴権へ(196)
  3 刑罰や刑の執行に現れた穢れ(198)
 六 私的訴権と異なる性質の制裁 201
  1 私人訴追(201)
  2 異なる性質の制裁(201)
  3 奴隷の不法行為に対する責任(203)
第三節 古代ギリシアの刑事訴訟法論 205
 一 古代ギリシアの刑事訴訟法論と私的訴訟 205
 二 私的訴訟から公的訴訟へ 207
 三 古代ギリシアの刑法論における責任 208
第四節 ゴルティン法 209
 一 公的刑罰権と私的刑罰権の混淆 209
 二 贖罪金の本質とその変容 211
 三 賠償金の法的性格 213
 四 ゴルティン法における民刑分岐 214
 五 私的刑罰から公的刑罰へ 217
第五節 総括 219
おわりに 223

第五章 ローマ ―不法から犯罪へ― 237
はじめに 237
第一節 一二表法 238
第二節 私法的刑法から公法的刑法へ 240
第三節 刑法の発展 246
第四節 古代ローマにおける自力救済 250
おわりに 252

第六章 ロシア ―最古の法典:ルースカヤ・プラウダ― 263
はじめに 263
第一節 概説 264
第二節 研究の視座 266
 一 刑法学的観点からの考察の必要性 266
 二 考察の方法 268
第三節 簡素編纂 269
 一 ヤロスラフ・プラウダ 269
  1 復讐規定(270)
  2 復讐規定における責任論(275)
  3 復讐規定に対する評価(277)
  4 復讐規定の意義(280)
  5 第二条の訳出および解釈(283)
  6 他の諸規定(287)
 二 ヤロスラフの子等のプラウダ 293
  1 人命金概念の顕在化― blood wite(294)
  2 公的「罰金」概念の形成と「分岐」現象― fine(301)
  3 「公」概念の形成― prince(306)
  4 その他の特徴(309)
 小括―一 311
第四節 拡大編纂 312
 一 改訂ヤロスラフの子等のプラウダ他 312
  1 検討の方法(312)
  2 復讐規定の廃止の意義(315)
   (一) 第二条の意義(315)
   (二) 検討(321)
  3 「氏族・部族の血讐」と「国家の刑罰権」(325)
   (一) 血讐の禁止と責任主体(325)
   (二) 血讐と刑罰権(328)
 二 考察 333
  1 規定の拡充化(334)
   (一) 改訂ヤロスラフの子等のプラウダ他(335)
   (二) その他の法令(342)
  2 ‘blood wite’に関する諸規定(348)
  3 ‘fine’に関する諸規定(354)
  4 公的罰金の創設(358)
  5 分岐現象と解し得る諸規定(360)
  6 犯罪概念の形成― offense から crime へ(367)
  7 その他の特徴(368)
 三 “dark”blood wite の解釈 370
 四 共同体が支払う人命金 378
 小括―二 383
第五節 私的制裁から公的制裁へ 385
 一 勝田見解 385
 二 検討 386
 三 階級刑法と厳罰主義 389
  1 階級刑法(389)
  2 厳罰主義(393)
 四 私的賠償金から公的刑罰へ 394
 五 分岐に関する論理的展開 395
第六節 血讐と責任論 396
 一 罰金と責任 396
 二 血讐と責任 397
 三 責任論の変遷 400
 四 血讐の禁止 403
 五 血讐の行方 406
第七節 分岐論と個人責任論 406
 一 分岐論 406
 二 分岐論と人命金概念の変遷 408
 三 権力構造の変化とルースカヤ・プラウダ 410
 四 権力の統一化と個人責任論 414
おわりに 417

第七章 ドイツ ―私的制裁から公的制裁へ― 439
 一 概説 439
 二 ゲルマン古代 440
 三 フランク時代 446
 四 中世時代 449
 五 近世時代以降 454

第八章 イギリス ―私犯から公犯へ― 467
はじめに 467
第一節 概括 468
第二節 「不法」と「犯罪」の未分化 468
第三節 「私犯」と「公犯」の区別 470
おわりに 471

第九章 フランス ―私刑から公刑へ― 475
はじめに 475
第一節 概観 476
第二節 民事責任と刑事責任の分化 477
 一 責任の分化思想 477
 二 民事賠償責任理論の発展 478
第三節 私的司法の展開とその限界 479
 一 私的司法 479
 二 国家の台頭と復讐の制限 480
 三 社会秩序の維持と刑罰 481
第四節 公刑の形成 482
 一 公刑の形成と民刑分化 482
 二 民刑分化と刑法の発展 483
第五節 フランス治罪法 484
 一 フランス治罪法における私訴権と公訴権 484
 二 フランス治罪法の日本法への影響 486

第一〇章 日本 ―我が国における民刑分化の沿革― 491
はじめに 491
第一節 復讐に対する諸見解 492
第二節 復讐と民刑分化 495
第三節 民刑分化の沿革―概観 498
 一 上古 498
 二 中世 499
 三 近世 500
第四節 私的刑罰権 503
第五節 復讐の起源と賠償 504
 小括 507
第六節 付帯私訴 508
おわりに 511


第二篇 刑法の連続性と同質性

第一章 「責任の分化」の本質 525
 一 刑法の連続性と同質性 525
 二 責任の分化と公秩序 528

第二章 「刑法の分化史」における国際刑法の位置づけ 535
 一 「国際共同体」概念の形成と裁判所の創設―国際社会から国際共同体へ― 535
 二 国際共同体における賠償と刑罰 537
 三 賠償と刑罰の分化現象 542
 四 人類の平和的共存と国際刑法の分化現象 549
 おわりに 551


第三篇 国際公秩序の探究

第一章 共通利益 Common Interests と国際公秩序 565
はじめに 565
第一節 国際公秩序の探究 566
第二節 国際法と国際司法機関 568
第三節 「国際社会全体の共通利益」概念の顕在化 571
第四節 共通利益と国際共同体 573
第五節 共通利益と国際公秩序 576 
 一 合意原則を破る法規範 576
 二 国家責任に関する条文草案 577
 三 人権条約 583
第六節 共通利益と国際刑法 589

第二章 強行規範 Jus Cogens と国際公秩序 605
はじめに 605
第一節 条約法条約と国際共同体における公秩序 608
 一 条約法条約 608
第二節 国際共同体における公秩序 611
第三節 国際公秩序の形成 613
 一 国際公秩序形成の萌芽 613
 二 国際公秩序の形成期 617
 三 国際公秩序の確立期 619
第四節 強行規範と合意法の限界 622

第三章 国際共同体における公秩序二元論 ―国際法秩序と国際刑法秩序の峻別― 633
はじめに 633
第一節 強行規範と二元的公秩序論 634
 一 強行規範 634
 二 公秩序の二元化 638
 三 公秩序に関する研究状況 641
 四 二元的公秩序論 643
第二節 古谷論文の検討 647
 一 検討の対象 647
 二 問題の所在 647
 三 検討 648
  1 秩序に対する認識(648)
  2 所論における帰結(649)
  3 垂直的秩序の水平的秩序に対する侵食現象(650)
  4 制度の姿を通して認識する秩序と、その侵食の帰結(652)
  5 所論における例示(652)
  6 構造的矛盾(654)
  7 「秩序」に関する定義の妥当性(655)
  8 本研究の立場(656)
  9 責任論との整合性(657)
  10 秩序の侵害主体(661)
  11 一元的秩序に生じ得る「侵食」ないし「駆逐」現象(662)
  12 二元的公秩序論(664)
 四 結論 665
おわりに 666


第四篇 国際刑法理論の精緻化 ―国際公秩序の検討を踏まえて―

第一章 国際刑法理論への対世的義務 Obligations Erga Omnes の導入可能性 679
はじめに 679
第一節 対世的義務 682
第二節 対世的義務に関する国際司法裁判所判決 688
第三節 国際公秩序と合意原則 691
第四節 国際刑法の機能 693
 一 国際刑法の秩序維持機能 693
 二 第一二条第二項と対世的義務 698
 三 国際刑法の規制的機能 701
 四 国家に対する義務 703
第五節 対世的義務と国際刑法 706
 一 対世的法規範 706
 二 コア・クライムと国際公秩序 711
 三 対世的義務概念に対する疑念への克服 715
 四 国際刑罰権の基礎づけ 717

第二章 国際刑法における二元的刑罰権論727
はじめに 727
第一節 問題の所在 729
第二節 「国際刑罰権の基礎づけ」への探究 734
第三節 考察の方法 737
第四節 検討の対象 738
第五節 原始社会からゲルマン社会 739
第六節 封建制社会 744
第七節 我が国の明治初期社会 748
第八節 国際共同体 749
 一 国際刑法理論の精緻化 749
 二 主権概念の変容 752
 三 二元的刑罰権論 754
 四 「超」国家的刑罰権概念が有する多義性への克服 756
おわりに 758