正犯の本質と行為支配

正犯の本質と行為支配

クラウス・ロクシン 著/吉田宣之 訳
定価:27,500円(税込)
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  • 発行:
    2023年08月01日
  • 判型:
    A5判上製
  • ページ数:
    1120頁
  • ISBN:
    978-4-7923-5399-5
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内容紹介


《目 次》

訳者はしがき( i )
翻訳への序文(xxiii)
§1.導入1

第1章 方法論的出発点
§2.因果的正犯説5
§3.目的論的正犯説9
§4.存在論的正犯説15
§5.意味把握的および目的設定的考察方法の総合止揚としての正犯概念23
§6.行為に該当する事象の中核的形姿としての正犯30

第2章 行為支配理論以前の正犯説
§7.形式的-客観的理論39
§8.実質的-客観的理論45
 Ⅰ.因果的寄与の必然性説:「必然性理論」(45)
 Ⅱ.行為前および行為中協力説:「同時性理論」(49)
 Ⅲ.生理的かつ心理的に媒介された因果関係(53)
 Ⅳ.正犯優位説:「優位性理論」(58)
§9.主観的理論60
 Ⅰ.故意理論(61)
 Ⅱ.利益理論(65)
§10.混合理論67

第3章 行為支配説の発展と現状
§11.行為支配説の成立71
 Ⅰ.「行為支配」概念の発展(71)
 Ⅱ.行為支配理論の教義的および内容的発生の基礎(76)
§12.行為支配説の今日の主張者80
 Ⅰ.Welzel(80)
 Ⅱ.Maurach(82)
 Ⅲ.Gallas(84)
 Ⅳ.Richard Lange(89) 
 Ⅴ.行為支配説のその他の主張者(91)
  1.Niese(91)
  2.Sax(93)
  3.Busch(94)
  4.von Weber(95)
  5.Less(96)
  6.Jescheck(97)
§13.類似説とその視点98
 Ⅰ.Bockelmann(98)
 Ⅱ.Nowakowski(100)
 Ⅲ.その他の著者(102)
§14.連邦通常裁判所の判例における行為支配思想106

第4章 一般的な正犯概念の構造的基礎
序論(129)
§15.不確定的概念としての行為支配130
 Ⅰ.学 問(131)
 Ⅱ.実 務(133)
 Ⅲ.この発展の原因(134)
 Ⅳ.立場決定(136)
§16.確定的概念としての行為支配143
 Ⅰ.方法論上の反対根拠(144)
 Ⅱ.教義史上の反対根拠(145)
 Ⅲ.正犯の本質からの反論(145)
  1.過剰に形式化する抽象化の不必要性(146)
  2.意味要素の確定可能性の欠如(146)
  3.事物の内実についての概念法学的過誤の危険(147)
§17.開かれた概念としての行為支配148
 Ⅰ.開かれた概念(148)
  1.開かれた概念の第一のメルクマールとしての記述的手続(148)
  2.開かれた概念の第二のメルクマールとしての統制の組込み(150)
 Ⅱ.今後の展望(151)

第5章 狭義の行為支配
§18.故意で-自由な、自手的な構成要件の実現153
§19.故意で-不自由な、自手的な構成要件の実現158
 Ⅰ.強要事例(158)
  1.論争の状態(158)
  2.行為者の正犯のための論拠(160)
 Ⅱ.故意での、強要されていないが、しかし、責任が阻却される構成要件の実現(164)
§20.個別構成要件メルクマールの自手的で-故意による実現165
 Ⅰ.行為態様の充足と構成要件行為の実現(165)
  1.見解の状況について(165)
  2.何らかの構成要件メルクマール実現で十分か(166)
  3.構成要件行為の意味(168)
 Ⅱ.不法にとって重要な状況モメントについての錯誤(169)

第6章 意思支配
§21.強要による意思支配173
 Ⅰ.強要緊急避難〔刑法52条〕(173)
  1.強要者の行為支配と被強要者の行為支配(173)
  2.意思への影響は意思支配ではない(174)
  3.意思支配の基準(175)
  4.強要緊急避難における共犯事例(179)
 Ⅱ.単純な緊急避難、刑法54条(180)
  1.刑法54条の緊急避難の故意による惹起(180)
  2.既存の緊急状態における行為の唆しあるいは援助(181)
 Ⅲ.超法規的、責任阻却的緊急避難(185)
  1.超法規的、責任阻却的緊急避難の故意による惹起(185)
  2.責任阻却的、超法規的緊急避難行為者への唆しあるいは援助(187)
 Ⅳ.緊急避難類似の状況(188)
  1.緊急避難類似の精神的影響(188)
  2.自傷への強要的緊急避難(191)
  3.強要された、合法的に行為している第三者による結果惹起(198)
 Ⅴ.違法な拘束命令(204)
 Ⅵ.総括(205)
§22.錯誤による意思支配206
 Ⅰ.故意阻却的な、無責あるいは無意識的過失的な錯誤(207)
  1.行為媒介者が故意と責任なしで行為している(207)
  2.行為媒介者が無意識的過失的に行為している(216)
 Ⅱ.錯誤者が意識的過失的に行為している(218)
  1.問題提起(218)
  2.文献上での目的性と意識的過失(219)
  3.行為支配説の観点の下での五つの目的性概念に対する立場決定(224)
  4.結果(229)
 Ⅲ.錯誤者が違法性の意識なしに行為している(234)
  1.純粋な禁止の錯誤(234)
  2.正当化事由の事実的前提に関する錯誤について(248)
 Ⅳ.行為者が責任阻却事由の前提を誤って承認している(252)
  1.強要による意思支配か(253)
  2.錯誤の力による意思支配:行為支配の第三段階(254)
 Ⅴ.錯誤者が構成要件に該当し、違法かつ有責に行為している(256)
  1.具体的な行為意味についての錯誤(256)
  2.危険の錯誤(267)
 Ⅵ.錯誤者が、構成要件に該当せずに、あるいは、合法的に行為している(273)
  1.実行者が構成要件に該当しないで行為している(273) 
  2.実行者が合法的に行為している(279)
 Ⅶ.総括(281)
§23.責任無能力者および少年を利用する場合の意思支配282
 Ⅰ.直接的な行為者の責任能力が阻却されているか、あるいは、限定されている(282)
  1.実行者が責任無能力である(282)
  2.実行者が限定責任能力状態で行為している(288)
 Ⅱ.直接的な行為者が子供あるいは少年である(289)
 Ⅲ.総括(293)
§24.組織的権力機構による意思支配294
 Ⅰ.事例状況(294)
 Ⅱ.強要支配および錯誤支配の除外(295)
 Ⅲ.組織支配の構造的基礎(296)
 Ⅳ.Eichmann訴訟における正犯関係に対する教義的判断(298)
 Ⅴ.個別問題(301)
  1.組織内部における正犯と共犯(301)
  2.法から解放されている機構への組織的支配の限定(302)
 Ⅵ.組織支配の方法論的観点(304)
§25.故意ある道具の場合の意思支配か306
 Ⅰ.身分なき故意ある道具(306)
  1.見解の対立状況について(306)
  2.背後者が行為支配なしに、行為している(307)
  3.心理学的支配基準としての身分か(308)
  4.規範的支配基準としての身分か(310)
 Ⅱ.意図なき故意ある道具(313)
 Ⅲ.故意ある幇助道具(314)
§26.正犯前提についての錯誤316
 Ⅰ.行為支配を基礎づける事情の誤認(316)
  1.間接正犯か(317)
  2.共犯の既遂(320)
  3.共犯の未遂と過失的正犯か(326)
 Ⅱ.行為支配を基礎づける事情の誤った承認(328)
  1.諸見解(328)
  2.共犯の既遂(329)
  3.間接正犯か(331)

第7章 機能的行為支配
§27.実行段階での協力335
 Ⅰ.共同の行為支配の可能性と構造(335)
 Ⅱ.機能的行為支配としての共同正犯(338)
 Ⅲ.開かれた概念としての機能的支配(343)
 Ⅳ.個別問題(347)
  1.行為決意の共同性(347)
  2.承継的共同正犯(353)
§28.予備段階での協力356
 Ⅰ.論争状態(356)
 Ⅱ.予備行為者の共同正犯性の否定(359)
 Ⅲ.Welzelとの論争(360)
 Ⅳ.犯罪集団の首領の問題(364)
 Ⅴ.仕事の分担と共同正犯(366)
 Ⅵ.予備と実行の限定(369)

第8章 行為支配と現在の見解の状況
§29.行為支配概念の内包の決定374
 Ⅰ.行為の経過および結果への決定的な影響(375)
 Ⅱ.進行能力と阻止能力(379)
 Ⅲ.事象に決定的な方向転換を与える可能性(382)
 Ⅳ.行為力(382)
 Ⅴ.意思の従属(383)
 Ⅵ.「行為支配意思」と「張本人感情」(384)
  1.「行為支配意思」(385) 
  2.張本人感情(387)
§30.行為支配概念の構造388
§31.行為支配の教義史上の位置393
§32.行為支配概念の体系上の位置398
 Ⅰ.体系的要素としての行為支配(398)
 Ⅱ.行為支配と不法および責任との関係(400)
  1.「徴憑的正犯」の拒否(400)
  2.不法の現象形式としての行為支配(401)
  3.正犯概念の責任無関係性(402)
  4.構成要件への故意の帰属性の根拠としての行為支配説(403)
  5.正犯を基礎づける責任要素(405)

第9章 故意の作為犯の正犯概念
§33.行為支配概念の射程距離409
 Ⅰ.一般的正犯概念としての行為支配の基準(409)
 Ⅱ.行為支配、領得罪および意図なき故意ある道具の問題(413)
  1.窃盗および意図なき故意ある道具(413)
  2.横領罪(424)
  3.贓物罪と密猟罪(428)
§34.義務犯罪431
 Ⅰ.導入のために(431)
 Ⅱ.義務犯罪における共同正犯(434)
 Ⅲ.義務犯罪における間接正犯(440)
 Ⅳ.義務犯罪における非故意的主行為についての共犯の問題について(446)
  1.支配犯罪における従属性(447)
  2.義務犯罪における従属性(449)
 Ⅴ.行為支配説の発展における義務思想(463)
  1.支配犯罪および義務犯罪の正犯概念における一致と相違(463)
  2.Eb. Schmidtにおける拡張的正犯概念、義務および支配(464)
  3.LangeとGallasにおける行為支配と義務の混和(466)
  4.WelzelとMaurachにおける共通の正犯前提としての行為支配と義務(468)
  5.Hardwigにおける義務思想の支配犯罪への適用(469)
 Ⅵ.義務犯罪の拡張範囲(470)
  1.一般的な問い(470)
  2.侮辱(474)
  3.不真正な自手的犯罪(480)
 Ⅶ.体系的指摘(484)
  1.義務犯罪と体系単一性(484)
  2.不法-総合構成要件の主体としての義務犯罪の正犯(485)
§35.自手犯罪488
 Ⅰ.問題と見解の状況について(488)
 Ⅱ.文言理論(492)
  1.主要主張者(492)
  2.批判(494)
 Ⅲ.身体運動理論(495)
  1.主要主張者(495)
  2.批判(496)
 Ⅳ.強度理論(500)
 Ⅴ.私自身の解決(502)
  1.行為者刑法的犯罪(502)
  2.法益侵害のない、行態に結びつけられた犯罪(505)
 Ⅵ.自手的犯罪における従属性(514)
  1.非故意的行為に対する共犯か(514)
  2.自手的犯罪における極端従属性か(521)
 Ⅶ.若干の争われている構成要件における自手性(522)
  1.姦通罪と重婚罪(522)
  2.枉法罪(524)
  3.酩酊犯罪(527)
  4.総括的回顧(530)
§36.総括と補充531
 Ⅰ.他の正犯基準の可能性(532)
  1.正犯的事情としての心情メルクマールか(532)
  2.構成要件関係的正犯概念と犯罪グループ関係的正犯概念(540)
 Ⅱ.正犯概念の実定性と拘束性(547)
 Ⅲ.単一的正犯概念(552)
 Ⅳ.未遂犯における正犯(553)
  1.最後まで実行されなかった行為の場合の正犯基準(553)
  2.相当性、未遂および行為支配(559)

第10章 不作為における正犯と共犯
§37.不作為犯罪の正犯563
 Ⅰ.導入(563)
 Ⅱ.義務犯罪としての不作為犯(564)
  1.正犯を基礎づけるエレメントとしての結果回避義務(564)
  2.行為支配思想の除外(568)
  3.Armin KaufmannとGrünwaldにおける不作為の正犯概念(574)
 Ⅲ.不作為における共同正犯と間接正犯(576)
  1.共同正犯(576) 
  2.間接正犯(579)
 Ⅳ.不作為の自殺阻止(581)
  1.問題解決のための共犯学説の無能性(581)
  2.Gallasとの論争(582)
  3.保障人的地位の問題性について(584)
§38.不作為による共犯585
 Ⅰ.出発点の問題性(585)
 Ⅱ.不作為構成要件が欠如している場合の共犯(586)
  1.結果回避義務の存在を無視する不作為の正犯の阻却(586)
  2.結果回避義務の存在を無視する不作為の共犯の理由づけ(592)
 Ⅲ.結果回避義務が欠如している場合の共犯(595)
  1.積極的な行為の援助としての不作為(595)
  2.不作為による行為の困難化は幇助か(600)
 Ⅳ.異なる意見(601)
  1.連邦通常裁判所の判例(601)
  2.Armin Kaufmann(605)
  3.GallasとKielwein(609)
  4.Schröder(621)
  5.保障人的地位の段階づけの試み(Gallas, Schröder)(625)
§39.不作為行為に対する教唆および幇助626
 Ⅰ.不作為故意の欠如は不作為に対する教唆の可能性を阻却するのか(626)
 Ⅱ.正義と当罰性の考慮は不作為への教唆の承認に反対するのか(631)
  1.偶然の結果か(631)
  2.不作為犯罪における教唆は、作為犯罪の場合と比較して、より当罰的であるのか(634)
 Ⅲ.不作為への教唆は直接的な作為正犯と把握できるのか(637)
  1.Armin Kaufmann説とWelzel説(637)
  2.正犯性を阻却するファクターとしての行為支配要件(639)
  3.作為正犯としての解決の実践的非貫徹可能性(641)
  4.作為正犯としての解決にある可罰性の間隙(644)
 Ⅳ.不作為への幇助(645)

第11章 正犯説における問題、体系および法典編纂
§40.正犯説の体系についての思想649
 Ⅰ.結果の要約(649)
 Ⅱ.正犯概念の弁証法について(650)
 Ⅲ.教義上の帰結(654)
  1.共犯教義の二つの主たる誤謬(655) 
  2.内容的な正当性の基準としての「事物の抵抗」(656)
  3.対立の平均化に代わる作出(658)
 Ⅳ.正犯説における問題と体系(660)
§41.正犯説の編纂について663

第12章 最終章 2019 ―正犯と共犯についての学説の最新状況―
§42.立法における正犯と共犯の発展671
 A.自手的な構成要件の実現671
 B.故意による行為の場合のみの共犯680
 C.故意と誤解されている行為に対する関与684
§43.判例における正犯と共犯についての学説の発展687
 A.1962年から2019年迄の判決687
 B.レジュメ822
 C.最近の判例の法政策的な、体系的な、そして教義的な背景827
§44.学問上の正犯と共犯についての学説の発展837
 A.正犯説の最近の展開についての原則837
 Ⅰ.今日の行為支配説(837)
 Ⅱ.Schmidhäuserの全体性理論(842)
 Ⅲ.Steinの関与形式説(844)
 Ⅳ.KöhlerとKlesczewskiの観念的な構想(846)
 Ⅴ.Freundによる形式的-客観的理論の復活(849)
 Ⅵ.M. Heinrichにおける決断の担い手性(853)
 Ⅶ.Haasの構想における主観的理論の「合理的核」(854)
 Ⅷ.Lampeにおける行為力と支配力(856)
 Ⅸ.Sánchez Lázaroにおける「危険の源泉に対する権限」(857)
 Ⅹ.Rotschの規範的-機能的正犯説(858)
 Ⅺ.Weiserの「規範的正犯モデル」(861)
 Ⅻ.博士号請求論文(863)
 Ⅼ.結果(866)
 Ⅽ.方法論についての覚書(866)
  1.Renzikowski(867)
  2.Klesczewski(868)
 B.支配的犯罪870
 Ⅰ.狭義の行為支配(870)
 Ⅱ.意思支配(874)
  1.間接正犯の構造の原則(874)
  2.強要支配(884)
  3.責任無能力者の行為、子供、少年および限定責任能力者の行為の場合の協力(895)
  4.錯誤支配(898)
  5.組織的な権力機構による意思支配(912)
  6.意図なき故意ある道具(932)
 Ⅲ.機能的行為支配(934)
  1.共同正犯の構造について(934)
  2.共同の行為決意(939)
  3.共同の実行(941)
  4.実行段階における行為寄与の重大性(950)
  5.付加的共同正犯(951)
  6.択一的行為寄与(953)
  7.人に関する錯誤と承継的共同正犯(954)
  8.過失共同正犯(956)
 C.義務犯罪958
 Ⅰ.義務犯罪説の継受について(958)
 Ⅱ.義務犯罪説の今後の発展について(961)
  1.過失構成要件は義務犯罪ではない(961)
  2.行為支配を基礎づける義務は、必ずしも、刑法外の規則に基づいてはいない(961)
  3.社会的な役割から生じた特別義務は、誰の犯罪にあっても、正犯を基礎づける(963)
 Ⅲ.SchünemannとJakobsによって主張された義務犯罪説との相違点(963)
  1.Schünemannとの論争(963)
  2.Jakobsとの論争(965)
 Ⅳ.判例における義務犯罪(968)
 Ⅴ.義務違反は、行為支配と共同でのみ、正犯を基礎づけるのか(970)
 Ⅵ.身分なき故意ある道具(972)
 Ⅶ.不作為による正犯と共犯(977)
  1.義務犯罪説に従っての正犯解決(977)
  2.判例についての覚書(978)
  3.単一的幇助の理論(979)
  4.保障人的地位の種類に従った区別(980)
  5.相当性条項を超える解決(981)
  6.結果回避の困難性に従った区別(「潜在的行為支配」)(982)
  7.要約(984)
 D.自手的犯罪985
 E.可罰的な、人的な意思表示992

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事項索引1025
事項索引(最終章2019)1066