名誉毀損訴訟と表現の自由
吉野夏己 著
定価:13,200円(税込)-
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発行:
2023年12月01日
-
判型:
A5判上製 -
ページ数:
516頁 -
ISBN:
978-4-7923-0724-0
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内容紹介
《目 次》
はしがき(i)
初出一覧(iv)
序章 なぜ表現の自由なのか? 1
第1章 コモン・ロー上の名誉毀損
第1節 名誉毀損とコモン・ロー 5
1 ライベルとスランダー(5)
2 イギリスの名誉毀損法(6)
第2節 アメリカにおけるコモン・ロー上の名誉毀損 10
1 名誉の定義(10)
2 損害賠償の類型(12)
3 ライベルの成立要件(15)
4 免責事由(18)
5 アラバマ州法上の名誉毀損(20)
第3節 コモン・ロー上の名誉毀損と表現の自由 24
1 検閲からの自由(24)
(1) ブラックストーン理論(24)
(2) 植民地時代のアメリカ(25)
(3) 独立宣言(1776年)後のアメリカ(26)
2 表現の自由に対する事後規制と修正1条(29)
(1) クーリィ理論(29)
(2) チェイフィー理論(31)
(3) 連邦最高裁の表現権論(34)
3 名誉毀損的言論は「表現」なのか(38)
(1) 絶対主義的アプローチ(38)
(2) 「表現」と「行動」二分論(39)
(3) 二層理論(二段階説)(41)
(4) 連邦最高裁と二層理論(43)
(5) 内容規制・内容中立規制(46)
第2章 公的関心テストの形成
第1節 New York Times事件 49
1 事実(49)
2 判決内容(51)
3 New York Times事件の特異性(53)
4 現実の悪意の意味(56)
(1) 「現実の悪意」と「悪意」(56)
(2) 証拠開示と現実の悪意(57)
(3) 情報源の改竄と「現実の悪意」(58)
(4) 現実の悪意の認定(61)
(5) 「現実の悪意」の証明の程度(62)
第2節 New York Times判決の意義 63
1 自己統治論(63)
2 萎縮効果論(69)
3 思想の自由市場論(71)
第3節 公的関心テストの形成 72
1 刑事事件への拡大(72)
2 公務員の範囲の限定と拡大(73)
3 公的人物への拡大(76)
4 公的関心テスト(79)
第3章 公的人物テストの形成
第1節 Gertz事件 82
1 判決内容(82)
2 Gertz判決の基礎原理(85)
(1) 公的関心テスト否定(85)
(2) 損害賠償の制限(86)
(3) 思想の自由市場論(88)
(4) 対抗言論の法理(93)
(5) コモン・ロー上の「危険の引受」理論(95)
3 公的人物の意義(97)
(1) 連邦最高裁の公的人物テストの展開(97)
(2) 連邦最高裁の自発的限定的公的人物の考慮要素(101)
第2節 全面的公的人物 103
第3節 自発的限定的公的人物 106
1 下級審における自発的限定的公的人物の展開(106)
(1) Waldbaum判決(106)
(2) Fitzgerald判決(108)
2 自発的限定的公的人物の判断要素(111)
(1) 判断要素(111)
(2) 「公的論争」の意義(112)
(3) 「自発性」の意義(114)
(4) 「自発性」の拡大(116)
3 小括(119)
第4節 非自発的公的人物 120
1 非自発的限定的公的人物の起源(120)
2 著名人の反射的効果(121)
3 非自発的限定的公的人物概念の蘇生(124)
(1) Dameron判決(124)
(2) Dameron判決の拡大(126)
(3) 自発性と非自発性の競合(130)
4 「非自発的限定的公的人物」概念は生き残ったのか(133)
5 危険の引受と非自発的限定的公的人物(136)
(1) 自発性と危険の引受(136)
(2) 危険の引受と自発的限定的公的人物(137)
(3) 危険の引受と非自発的公的人物(139)
(4) 危険の引受理論の問題点(140)
(5) 小括(140)
第5節 「公的人物」概念のジレンマ 142
第4章 公的人物テストの展開
第1節 法人と公的人物 144
1 国・地方公共団体等の名誉毀損訴訟(144)
(1) 政府による民事名誉毀損訴訟(144)
(2) 政府法人(governmental entity)への拡張(150)
(3) 財産権の主体と統治権の主体の区別の否定(153)
(4) 日本の事情(154)
2 私法人と公的人物(158)
(1) 法人の名誉(158)
(2) 法人と公的人物(159)
(3) 法人と公的人物の現在(172)
(4) 議論の縮小化(180)
第2節 公的人物と「時の経過」の理論 181
1 はじめに(181)
2 プライバシー権と「時の経過」(182)
(1) プライバシー権の「放棄理論」(182)
(2) 「ニュース価値」論(185)
(3) 再公表時における「ニュース価値」(190)
(4) 「ニュース価値」論の行方(192)
3 名誉毀損訴訟における「時の経過」(194)
(1) 名誉毀損訴訟における「時の経過」理論の萌芽(194)
(2) ブラックマン裁判官の「時の経過」の理論(197)
(3) 公的関心テストの復活(200)
(4) Street事件後の展開(203)
4 時の経過の理論(206)
(1) 公的人物の地位の永続性の否定(206)
(2) 時の経過と非自発的公的人物(212)
5 小括(214)
第5章 公的関心テストの再生
第1節 公的関心テストの復活 217
1 Gertz判決の回避(217)
2 公的一般的関心テストの復活(219)
(1) Dun & Bradstreet事件(219)
(2) Hepps事件(227)
3 四類型テスト(228)
第2節 連邦最高裁における公的関心テストの形成と展開 230
1 公的関心事項の意味(230)
2 公務員の表現と公的関心テスト(233)
(1) 利益衡量論と公的関心事項(233)
(2) 公的関心テストの生成(235)
(3) 公的関心テストの展開(237)
(4) 公的関心テストのラチェット機能(238)
3 プライバシーと公的関心テスト(239)
(1) IIEDと公的人物テスト(239)
(2) Bartnicki判決と公的関心テスト(241)
(3) Snyder判決と公的関心テスト(243)
4 公的関心テストの基準(246)
(1) 判例理論(246)
(2) 公的関心テストの限界(249)
第3節 小括 251
第6章 公的関心テストと表現の自由の価値
第1節 民主主義的価値からのアプローチ 253
1 自己統治論(253)
(1) New York Times判決と自己統治(253)
(2) マイクルジョン理論(255)
(3) 自己統治のプログラム(256)
(4) 自己統治のプログラムと表現の自由(257)
(5) 自己統治のモデル―タウンミーティング(259)
(6) 名誉毀損について(261)
(7) マイクルジョン理論の評価(261)
2 解釈主義的アプローチ(265)
3 ブラシ教授の監視価値論(269)
4 サンスティン教授の熟慮民主主義(271)
5 公的対話(public discourse)と話し手の価値(274)
(1) ポスト理論(274)
(2)ウェスティン理論(279)
6 小括(281)
第2節 自律性・自己実現からのアプローチ 282
1 自律性・自己実現の理論(282)
(1) はじめに(282)
(2) スキャンロン教授の自律性(284)
(3) レディッシュ教授の自己実現(289)
(4) ベーカー教授の「自由モデル」(293)
(5) 小括(296)
2 自律性・自己実現の限界(296)
(1) 表現の特殊性(296)
(2) 選択的アプローチ(298)
(3) 消極的正当化理論(299)
3 自律性と司法審査(304)
(1) 利益衡量テスト(304)
(2) 自律性と公的人物テスト(306)
第3節 公的関心テストと表現の自由の価値基底論 307
1 自律性・自己実現と公的関心テスト(307)
2 情報の「送り手」/「受け手」(308)
第7章 日本における名誉毀損法と憲法化
第1節 刑法上の名誉と表現の自由の調整 311
1 刑法上の名誉概念(311)
2 刑法上の名誉保護(312)
(1) 戦前の立法(312)
(2) 真実性の証明(315)
(3) 真実性の誤信(316)
3 憲法論の欠如・欠落(317)
(1) 真実性・相当性の法理と表現の自由(317)
(2) 刑法学と表現の自由(319)
第2節 民事上の名誉と表現の自由の調整 323
1 民法上の名誉(323)
2 民事法上の名誉概念の変遷(324)
(1) 人格権としての名誉(324)
(2) 名誉とプライバシーの分離(326)
(3) 私人のイッシュー化されない権利(329)
第3節 情報社会における名誉 330
(1) 情報状態保護説(330)
(2) 個人情報コントロール権説(331)
(3) 情報化社会と名誉(334)
第4節 名誉毀損法の憲法化 334
1 はじめに(334)
2 虚名の保護(337)
3 相当性の法理の限界(340)
(1) 相当性の法理と表現の自由の関係(340)
(2) 公共の利害に関する事実(343)
(3) 相当性の法理の判断基準(351)
(4) 相当性の法理と現実の悪意(356)
4 日本における「現実の悪意」の法理の展開(359)
(1) 公的言論保護の必要性(359)
(2) 裁判例(361)
(3) 学 説(364)
(4) 公的人物テストの背後にあるもの(368)
(5) 「公的人物の抗弁」―「現実の悪意」の法理の再検討(375)
第5節 小括 380
第8章 スラップ(SLAPP)と表現の自由
第1節 スラップとは何か 382
1 はじめに(382)
2 典型的なスラップ(385)
(1) 公聴会等での開発許可への反対(385)
(2) 自然保護運動(386)
(3) 公職人事への批判(387)
(4) 政府への請願(388)
(5) 労働争議の救済(389)
3 スラップの定義の困難性(391)
4 スラップによる被侵害利益(393)
第2節 スラップに対する実体的規制 394
1 New York Times判決ルール(394)
(1) New York Times判決ルールの生成(395)
(2) New York Times判決ルールの欠点(396)
2 Omni基準(396)
(1) Noerr判決(396)
(2) Pennington判決(398)
(3) 不実の例外(399)
(4) Omni判決 ― 「プロセスv結果」テスト(399)
(5) 反トラスト法以外への拡大(401)
(6) ノア・ペニントン法理の優越性(404)
3 POME基準(405)
4 連邦民事訴訟規則による救済策(407)
5 スラップ被害防止法の必要性(409)
第3節 スラップ被害防止法の展開 411
1 スラップ被害防止法の制定(411)
2 スラップ被害防止法の適用(412)
(1) 提訴者(412)
(2) ターゲット(412)
(3) 適用の範囲(414)
3 スラップ被害防止法の救済手段(420)
(1) 免 責(420)
(2) 特別の訴え却下の申立(420)
(3) 迅速な進行(422)
(4) 証拠開示の一時停止(423)
(5) 立証(424)
(6) 弁護士費用等の賠償(425)
(7) 上訴(427)
(8) 政府の介入(428)
4 スラップ被害防止法の「勝訴の蓋然性」(428)
5 「統一公的表現保護法」の制定(431)
(1) スラップ被害防止の拡大傾向(431)
(2) スラップ被害防止法の制限の動き(433)
第4節 スラップ被害防止法の矯正 433
1 スラップ被害防止法の問題点(433)
(1) 平等権(434)
(2) デュー・プロセス(435)
2 スラップ被害防止法の救済の調整的関心(437)
3 州籍相違事件とスラップ被害防止法(438)
第5節 スラップ被害の防止対策に向けて 441
第9章 日本におけるスラップ対策
第1節 日本におけるスラップの現状 443
1 はじめに(443)
2 スラップの要素(445)
3 スラップが疑われる事例(445)
(1) 政治家(445)
(2) 環境問題(449)
(3) 企業批判(456)
(4) その他団体等(462)
(5) 地方公共団体(466)
4 スラップが否定された事例(471)
第2節 日本におけるスラップ対策 479
1 スラップ概念の曖昧性(479)
2 スラップ対策(482)
(1) 不当訴訟を理由とする反訴の提起(482)
(2) 訴えの却下(485)
(3) 立証責任の転換(488)
(4) 現実の悪意の採用(489)
3 日本におけるスラップ被害防止法の可能性(491)
(1) 日本でのスラップ被害防止法の必要性(491)
(2) 適用対象(493)
(3) 特別の訴え却下の申立(494)
(4) 審理手続(495)
(5) 弁護士費用等(496)
(6) 公的介入(497)
第3節 終わりに 497
第10章 終章 499