管理監督過失処罰
刑事法研究 第四巻

管理監督過失処罰

米田泰邦 著
定価:6,600円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2011年12月25日
  • 判型:
    A5版上製
  • ページ数:
    264頁
  • ISBN:
    978-4-7923-1927-4
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内容紹介

目   次
はしがき
文献略称
序章 法技術的処理の限界 1
1 抵当権規定と刑法 1
(1) 刑法規範の特殊性(1)  (2) 法技術と刑法(1)
(3) 得られたもの(1)
2 立法と解釈運用 2
(1) 法律家の特権(2)  (2) 可罰性と法技術(2)
(3) 民事処理と法技術(2)
3 賠償法の動向 3
(1) 賠償拡大(3)  (2) 拡大の技術(3)
4 司法過誤 4
(1) 差別的処理(4)  (2) 追求してきたもの(4)
5 体系的思考と批判的思考 5
(1) 適正な処理のため(5)  (2) 刑事過失の技術的処理(5)
 追記 5
第1章 組織活動と未知の事故
―北大電気メス事件第1審判決― 7
第1節 現代型災害と過失犯理論 7
1 現代型医療事故 7
(1) 大学病院の心臓外科手術(7)  (2) チーム医療事故(7)
2 過失犯理論の今日的問題 8
(1) 2つの問題(8)  (2) 森永ミルク事件(8)
第2節 北大電気メス事件の概要と一審判決 9
1 概要 9
(1) 手術部と診療科(10)  (2) 電気メス器(10)
(3) ケーブル誤接続の可能性(11)  (4) 本件手術関与者(12)
(5) 手術準備(13)  (6) 手術経過と電気メスの効き(13)
(7) 事故原因究明(14)  (8) 本件事故の新規性(14)
2 一審判決 15
(1) 争点と認定事実(15)  (2) 本件事故の背景(16)
(3) A看護師の責任(16)  (4) S医師の事故の予見可能性(16)
(5) 手術部への信頼(17)  (6) 接続の二重点検義務の有無(17)
(7) 執刀医と補助者の任務(17)  (8) 慣行の効果(18)
(9) 刑事過失の特殊性(18)
第3節 医療裁判の今日的状況 19
1 民事医療裁判の動向 19
(1) 量の増加と質の変化(19)  (2) 民事医療裁判の問題点(20)
2 刑事医療裁判の問題状況 21
(1) 医療と刑事問題(21)  (2) 刑事医療裁判の増加(22)
(3) 刑事医療裁判の問題点(23)
第4節 「新」過失犯理論と未知の事故 24
1 新過失犯理論と旧過失犯理論 24
(1) 新過失犯理論のレッテルと中味(24)
(2) 過失犯の二重の義務違反(25)  (3) 新過失犯理論の新しさ(26)
(4) 構造論としての限界(26)  (5) 信頼の原則(27)
2 もうひとつの「新」過失犯理論 28
(1) 刑罰拡大原理としての「新」過失犯理論(28)
(2) 結果予見可能性の稀薄化(29)  (3) 未知の災害の処罰(31)
(4) ベルサリ責任の再来(32)  (5) 結果の予見可能性(35)
(6) 間接的危険と直接的危険(37)
第5節 チーム医療と信頼の原則 40
1 作集分担と信頼の原則 40
(1) 個人モデル過失犯理論の修正(40)  (2) 監督上の過失費任(41)
(3) 信頼の原則の適用域(44)  (4) 信頼の原則と分業の原則(46)
(5) 信頼の原則の法的機能(48)
2 刑事裁判における医師の監督責任追及の実情 49
(1) 医師と看護師らの刑事責任の落差(49)
(2) 補助者の間接的な過誤(50)  (3) 補助者の直接な過誤(51)
(4) 事例の分析(53)
3 チーム医療における信頼の限界 54
(1) 道路交通と医療(54)  (2) 医療機関など(55)
(3) 看護師など有資格者(56)  (4) 無資格者(57)
(5) 補助行為(58)  (6) 医師のコントロール(59)
(7) 信頼を動揺させる事情(61)  (8) 信頼可能な範囲の確立へ(62)
第6節 過失犯処罰の限界 64
(1) 刑罰目的と過失犯処罰(64)  (2) 処罰対象の選択(65)
 追記 66
第2章 刑事過失の限定法理と可罰的監督義務違反
―北大電気メス事件二審判決― 67
第1節 一審判決の反響と結末 67
1 北大電気メス事件の特殊性 67
2 一審判決の反響と2審判決 68

第2節 二審の争点と判決 70
1 争点 70
(1) 看護師有罪部分(70)  (2) 医師無罪部分(71)
2 判決 73
(1) ケーブル誤接続(73)  (2) 医師のケーブル誤接続認識可能性(73)
(3) 看護師の結果予見可能性(74)  (4) 看護師の量刑(75)
(5) 看護師の補助行為と医師の監督責任(75)  (6) 執刀医側の事情(76)
(7) 二重の点検確認と危険の予兆(76)  (8) 執刀医の刑事過失責任(77)
第3節 刑事過失の予見可能性 78
1 「新」過失犯理論と結果責任 78
(1) 「新」過失犯理論批判の現状(78)
2 「新」過失犯理論における不可罰的事故 79

第4節 予見可能性による刑事過失制約の限界 81
1 予見可能性と危惧感 81
2 予見可能性による制約の限界 84
(1) 医療行為のリスク(84)  (2) 確率の差(84)
(3) 因果関係(85)  (4) 予見可能性の多義性(85)
(5) 問題の始まり(86)
第5節 刑事過失の限定法理 86
1 事実的・量的限定の限界 86
(1) 予見可能性の規範的・質的限定(86)
(2) 「新」過失犯理論からの限定(87)  (3) 信頼の限界(87)
(4) 将来予測(87)  (5) 未必の故意の蓋然性説(87)
(6) 問題の整理(88)  (7) 結果発生の確率(88)
(8) 制約の規範性(88)  (9) 危険から遠ざかる義務(89)
(10) 概括性(89)  (11) 刑法的予見可能性(89)
2 行為の危険性の限定の規範化 90
(1) 危険性による限定(90)  (2) 危険のさまざま(90)
(3) 許容性への転化(91)  (4) 選別基準(91)
(5) 制御との関係(92)
3 制御手段と許された危険 92
(1) 動的過失犯理論(92)  (2) 制御手段の動的性格(93)
(3) 制御手段の信頼性(93)  (4) 許された危険(94)
(5) 直接的危険(94)  (6) 許容可能性(95)
(7) 判断構造の多様性(95)
4 制御手段と信頼の原則 95
(1) 許された危険の条件(95)  (2) 信頼の条件(96)
(3) 信頼の限界(97)  (4) 経験の意味(98)
(5) 悪しき慣行(98)  (6) 許されない危険の選別(99)
第6節 可罰的監督義務違反 99
1 分業と許された危険 99
(1) 分業と信頼の原則(99)  (2) 否定説の存在(100)
(3) 医師と看護師(100)  (4) 社会的必然性(101)
(5) 信頼許容レベル(102)
2 有資格者の過誤 102
(1) 信頼許容の条件(102)  (2) 本件の対立(103)
(3) 過誤のリスク(104)  (4) 司法過誤(104)
(5) 作業自体の過誤リスク(105)
第7節 行為者責任と監督者責任 105
1 二重の点検確認義務の根拠と限界 105
(1) 医師と看護師(105)  (2) 義務の集約(106)
(3) 手段の多様性(106)  (4) 点検の難易度(106)
(5) 要求の限界(107)  (6) 階層性(107)  (7) 点検の効果(107)
(8) 裁判システムの過誤是正機能の限界(108)
(9) 点検要求の限界(108)
2 可罰的監督者責任の条件と限界 108
(1) 道路交通と組織活動の差(108)  (2) 監督者と行為者(109)
(3) 使用者責任など(109)  (4) 刑事過失の場合(110)
(5) 公害犯罪処罰法の場合(110)  (6) 信頼の前提要件(111)
(7) 信頼の動揺(111)  (8) 異なるアプローチ(112)
(9) カルメッテ事件(112)  (10) 裁判長の悲劇(113)
(11) 感情に流れる法処理の危険(114)  (12) 監督過失処罰の条件(114)
第8節 刑事過失の可罰的評価 115
1 医療刑事事件の増勢 115
(1) 看護師検事控訴の重罰志向(115)  (2) 検察官の犯罪化志向(115)
(3) 英米刑法の謙抑性(115)
2 医療事故と法的評価 116
(1) 判断姿勢(116)  (2) 評価の視点(116)
(3) 非難・叱責要件(117)  (4) 感情移入と自制(117)
(5) 法学情報への対応(118)  (6) 司法過誤との対比(119)
(7) 事後的判断の限界(119)  (8) 国家賠償の聖域(120)
(9) 医療の同質性(120)
3 可罰的過失(刑事過失の最終的限定) 121
(1) 可罰性の限定(121)  (2) 「新」過失犯論者との共通性(121)
(3) 裁判の社会的インパクト(122)  (4) 司法遅延の弁解(122)
(5) 保身医療(123)  (6) 本件2判決の意義(123)
 追記 124
第3章 管理監督責任論の諸相 125
第1節 1986刑法学会関西部会 125
1 問題意識 125
2 不作為犯論との関係 125
3 白石病院火災事件判決の再検討 126
4 ドイツの状況 127
5 管理過失と監督過失 127
6 事後制裁と予防 128
 追記 129
第2節 監督過失と管理過失 130
1 1990段階の監督過失処罰 130
2 監督・管理過失論の出自 131
3 新過失犯論と西原・米田の対応 132
4 旧過失犯論の対応 132
5 信頼の原則 133
6 理論状況 134
 追記 135
第3節 過失共犯論 135
1 過失従犯論の前史 135
2 構成要件論レベルの対立 136
3 拡張的過失犯論 137
4 行為支配 138
5 制限的過失共犯論 138
6 過失共犯論の課題 139
 追記 140
第4節 企業システム過失 141
1 企業犯罪論 141
2 法人処罰の沿革と推移 141
3 米国の経済犯罪と対策 142
4 法遵守プログラムと法人過失責任 143
5 法人責任と個人責任 144
6 残された課題 144
 追記 145
第4章 大洋デパート事件最高裁判決が残したもの 149
第1節 判決の反応と社長有罪論 149
1 判決のインパクト 149
(1) 法律側の反応(149)  (2) マスコミの反応(149)
(3) 社長有罪論(150)
2 判決の意義と残された問題 151
(1) 防火管理過失と判例(151)  (2) 本判決の意義(152)
(3) 残された問題(153)
第2節 防火管理責任拡大の限界 154
1 防火管理義務者の限定 154
(1) 法人と防火管理権原者(154)  (2) 防火管理者の資格・権限(154)
(3) 火元責任者(155)
2 役職員の個別的防火管理義務 155
(1) 消防法令外の注意義務(155)  (2) 取締役会と取締役の責任(156)
(3) 個別的職務権限と責任(157)  (4) 意識的違法行為の是正義務(158)
第3節 刑事過失と人間的能力 159
1 応急消防義務と過失 159
(1) 応急消防義務と業務性(159)  (2) 原判決の過失判断(160)
(3) 秒単位の過失(160)
2 緊急事態と過失 161
(1) 人間的能力の限界(161)  (2) 事後的判断の禁止(162)
(3) 従業員らの過失問題(163)
3 過失の判断基準 163
(1) 過失要件の形骸化(163)  (2) 過失判断の基準(163)
(3) 通常の刑事過失(164)
第4節 企業トップの防火管理過失 166
1 経営統括者の責任範囲 166
(1) 機能的防災刑法(166)  (2) 企業と防火管理権原者(167)
2 防火管理体制と信頼の原則 168
(1) 組織分業と信頼の原則(168)  (2) 社長の責任(169)
3 体制不備の帰責事由 170
(1) 工事中建物の安全性(170)  (2) 建築基準違反免責例(170)
(3) 訓練義務違反免責と限界(171)
4 防火管理と信頼の原則 172
(1) 従業員(172)  (2) 警備員(173)  (3) 防火施設業者など(173)
(4) 来客など(175)  (5) 予見可能性の下限(175)
5 結果回避可能性 175
(1) 消防訓練の効果(175)  (2) 訓練の限界の確認(176)
(3) 避難可能性(177)  (4) 回避可能性の程度(178)
(5) 避難器具と避難可能性(178)
(6) 防火防災体制不備と管理過失(180)  (7) 予見可能性の上限(180)
第5節 防火管理過失と過失限定法理 181
1 管理過失と過失要件 181
(1) 予見可能性(181)  (2) 監督過失と管理過失(181)
2 防火管理過失と予見可能性 183
(1) 違法性の認識ある過失(183)  (2) 予見対象(183)
(3) 医療事故と管理過失(184)  (4) 火災事故の実情(185)
(5) 防火管理過失の非故意性(185)
3 防火管理過失の実質 185
(1) 安全管理処罰の背景(185)  (2) 管理・監督責任の従犯構造(186)
(3) 行政責任(187)  (4) 比較法事情(188)
4 防火管理過失の限界 188
(1) 限定的方向(188)  (2) 実質的危険の多義性(189)
(3) 営業停止義務(190)
第6節 残された課題 192
1 防火管理と刑事政策 192
(1) 処罰効果(192)  (2) 事後処罰の限界(192)
2 本判決の残したもの 193
(1) 管理過失処罰と消防行政(193)  (2) 事前処罰と非刑罰的抑制(194)
(3) 処罰すべきもの(194)
 追記 195
第5章 刑事法の可罰的評価の現状と課題 197
第1節 戦後刑法史と可罰的評価 197
(1) 行為論(197)  (2) 刑法改正問題(198)
第2節 期待可能性論と可罰的責任論 199
1 期待可能性論の独自性と可罰的評価 199
(1) 期待可能性の理論(199)  (2) 日本の期待可能性論の独自性(200)
2 可罰的責任論 201
(1) 可罰的責任論(201)  (2) 可罰的責任の機能(201)
(3) 責任阻却機能(202)
第3節 可罰的違法性論による非犯罪化 202
1 可罰的違法性論の実践化 202
(1) 可罰的違法性の理論(202)  (2) 実践的機能の拡大(203)
2 最高裁の転回と到達点 204
(1) 最高裁判例の転回の評価(204)
(2) 三教組事件最高裁判例の位置付け(205)
(3) 再転回の可能性(206)
3 可罰的違法性論の実践的機能 206
(1) 無罪判決と実践的機能(206)  (2) 個別問題(206)
第4節 過失犯の可罰的評価 207
1 過失犯罪化・重罰化と刑法理論 207
(1) 刑事過失の積極的犯罪化(207)  (2) 自己矛盾(208)
2 判例の可罰的評価 208
(1) 信頼の原則と可罰的違法性(208)
(2) 防火防災対策過失と可罰的違法性(209)
第5節 第四の犯罪要件と手続的非犯罪化 211
1 実体法的非犯罪化 211
(1) 第4の犯罪要件(211)  (2) ことば論の限界(211)
2 手続的可罰評価による手続的非犯罪化 213
(1) 手続的非犯罪化(213)  (2) 裁判形式(213)
3 起訴猶予制度の非犯罪化機能 214
(1) 交通刑法の非犯罪化(214)  (2) 手続的非犯罪化(215)
第6節 変化の時代の中の課題 216
(1) 事態の流動性(216)  (2) 謙抑化の方向(217)
(3) 理論の指導性回復へ(218)
 追記 219
終章 可罰的管理監督過失の理論史と展望 221
第1節 理論史的考察 221
1 システムの欠陥 221
2 管理監督過失論の動き 221
3 理論史研究 222
4 到達点 223
5 監督過失理論の沿革 223
6 刑罰の機能 224
7 医療の抱える問題 226
8 可罰的評価 226
 追記 227
第2節 待ち受けているもの 229
1 多様化 229
(1) 組織信頼否定説(229)  (2) 予見可能性不要説(230)
(3) 流動性(231)
2 刑事法学の課題 231
(1) 研究と実務(231)  (2) 実務家研究の多様性(231)
(3) 法技術的処理の限界(232)
(4) 火災事件経営者処罰の位置づけ(233)
3 比較法研究 233
(1) 研究の遅れ(233)  (2) 非現実的な犯罪論(234)
4 不処罰例の再検討 234
(1) 大量不起訴(234)  (2) 物言わぬ被害者(235)
(3) 起訴猶予と非犯罪化(235)  (4) 可罰評価の目線(236)
(5) 処罰基準の探求(236)
5 管理社会の中の過失論 237
(1) 安全管理システムの拡大(237)
(2) システム内個人処罰の当否(238)  (3) 安全管理の限界(238)
(4) 目指すべきもの(239)

事項索引 241