独禁法事件・経済犯罪の立証と手続的保障

独禁法事件・経済犯罪の立証と手続的保障

日米欧の比較と民事・行政・刑事分野の横断的研究
越知保見 著
定価:7,150円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2013年01月10日
  • 判型:
    A5版上製
  • ページ数:
    562頁
  • ISBN:
    978-4-7923-2630-2
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内容紹介

目  次
はしがき…ⅰ
本書掲載・関連著者論文の初出掲載誌・本書における略語表… ⅹⅸ
第1部 カルテル・入札談合における審査の対象・
要件事実・状況証拠
はじめに2
第1章 カルテル・入札談合における審査の対象・
要件事実・状況証拠4
Ⅰ 日米欧のカルテルの事実認定の現状と日本の問題の概観 4
1 ハードコアカルテルの成立要件についての日米欧の比較 4
2 合意の立証対象についての日米欧の比較 6
3 合意を推認する間接事実・状況証拠からの事実認定 8
Ⅱ 欧米の事実認定手法,協調行動理論 12
1 アメリカにおける合意の立証対象 12
2 ECにおける立証対象と状況証拠からの事実認定 24
Ⅲ 行政事件におけるハードコアカルテルの事実認定の現状と
その課題 36
1 不当な取引制限の意義 36
2 カルテル契約的発想の実務・学説への影響と先例の展開 37
3 共同行為(合意又は意思の連絡)の対象・成立時期についての
実務の現状 48
4 不当な取引制限の解釈論の再検討 55
5 共同行為又は意思の連絡の証拠,間接事実・状況証拠からの
事実認定 59
Ⅳ 入札談合の事実認定 71
1 入札談合の要件・審査の対象 71
2 入札談合と一定の取引分野における競争の実質的制限 81
3 入札談合における状況証拠からの事実認定についての方法 82
4 課徴金審判実務及び損害賠償請求訴訟をめぐる個別調整の
立証 92
Ⅴ 要件事実論と独禁法の事実認定 100
1 要件事実論の整理 100
2 主要事実・間接事実の区別と弁論主義・証明責任 102
3 要件事実をカルテル・入札談合の事実認定に適用する場合の
注意点 102
4 具体的事例におけるブロックダイヤグラムによる事実整理 104
Ⅵ 刑事事件の事実認定の現状とその課題 109
1 公訴時効の起算点と罪質 109
2 刑事事件における共同行為の立証 111
第2章 平成20年審判決の総合的研究114
はじめに 114
Ⅰ 入札談合 115
1 大石組事件東京高裁判決 115
2 下水道ポンプ事件東京高裁判決 117
3 ゴミ焼却炉事件東京高裁判決 119
4 郵便区分機事件東京高裁判決 126
5 多摩地区談合事件審決 128
6 港町管理事件審決―最低入札価格での落札と具体的競争制限
効果 142
7 多摩地区談合事件損害賠償請求事件判決 143
Ⅱ 価格カルテル事件 145
1 種苗事件東京高裁判決 145
2 ポリプロピレン事件審決 147
Ⅲ 刑事事件 150
鋼橋談合宮地鐵工所等刑事事件東京高裁判決 150
Ⅳ 共同の取引拒絶(グループ・ボイコット) 150
着うた事件審決 150
Ⅴ 補論:意識的並行行為と共同認識説 158
第3章 多摩談合事件・郵便区分機事件・ポリプロピレン
事件の総合的検討―情報交換活動の評価と
公取委の事件処理のあり方166
はじめに 166
Ⅰ 多摩談合事件東京高裁判決の総合的検討 167
1 事実の概要・争点・判決の概要 167
2 多数判決 170
3 第5判決 176
4 第5判決をどう評価すべきか 182
Ⅱ ポリプロピレン事件(PP事件)東京高裁判決 183
1 PP事件の事実と判決の概要 183
2 実質的証拠法則の意義 185
3 将来のナフサ価格の見通しについての情報交換の評価 189
4 将来価格の情報交換がある場合の要証事実 191
5 審決の事実認定・証拠の活用の在り方 192
Ⅲ 区分機事件東京高裁差戻審判決 193
1 事実・事件の推移と判決の概要 193
2 何が重要な事実か―問題の所在 196
3 分 析 197
4 市場環境要因の評価 199
5 事実認定における間接事実の取り上げ方(まとめ)と論争の
意義 202
6 競争の存在の論点について 203
Ⅳ 多摩談合事件・PP事件と手続問題 204
1 手続の問題の重要性 204
2 審判における主張の変更(理由の差し替え)の許容範囲 205
3 審決取消訴訟の段階での主張の追加的変更 207
4 PP事件と多摩談合事件における釈明権行使・争点整理の
問題 210
5 争点整理の誤りと主張変更 212
6 多摩談合事件の第5判決の教訓 213
7 多摩談合事件のその他の問題 215
第4章 多摩談合(新井組)最高裁判決といまだ客観証拠を
十分に活用できていない最近の判審決例217
Ⅰ 多摩談合事件最高裁判決 217
1 証拠評価の誤りか法解釈の誤りか 219
2 事業活動の拘束の意義―競争の停止という考え方を排し,
東芝ケミカル高裁判決の考え方を追認した意義 220
3 「共同して,…相互に」,の解釈―相互拘束という考え方からの
離脱 222
4 3条後段の垂直的関係への適用可能性 224
5 競争の実質的制限についての新たな定義の意義 225
6 個々の入札に一定の取引分野が成立するとの考え方の否定 226
7 基本合意の拘束力の範囲で市場を画定する考え方との関係 228
8 基本合意と競争の実質的制限の因果関係を問題としなかった
こと 228
9 不自然な価格形成という状況証拠からの基本合意の拘束力の
認定 229
10 課徴金賦課要件に関する具体的競争制限効果 229
11 情報交換活動の評価 230
12 訴訟維持活動実務の現代化の問題 231
Ⅱ 大森工業事件東京高裁判決 232
Ⅲ 金商法事件で供述が覆ったことにより主観的要件の
成立が否定された事例―ビックカメラ事件 243
1 ビックカメラ事件の意義および事実の概要 243
2 虚偽記載の有無 245
3 「知りながら」の要件についての問題 251

第2部 違法行為是正措置のための執行制度の研究
第1章 独禁法改正法案
:聴聞手続としての性格の明確化の意義258
Ⅰ 第2部と本章の背景 258
Ⅱ 手続の在り方論 262
1 議論の整理 262
2 事後審判手続の評価 263
3 裁判手続指向型事前審判手続の問題 264
4 新手続とB案・C案の比較 274
5 新手続の理由づけのレベル(D1案かD2案か) 277
6 C案に対する批判 279
Ⅲ 意見聴取手続についての解説 280
1 手続主宰者の資格等 280
2 手続の公開 280
3 証拠開示 281
4 意見陳述に関する手続内容 281
5 関係人参加 282
6 調書・報告書と参酌義務 283
7 命令書の記載事項と公表 283
8 今後の課題 283
Ⅳ その他の意義 285
1 行政法先例の蓄積に貢献できるという意義 285
2 課徴金の裁量化等の今後の改正との関係との連動性 285
結 語 285
第2章 行政裁量と明白の原則・実質的証拠法則287
Ⅰ EU判例の展開と加盟国行政法のコンバージェンス 287
Ⅱ 裁量の意義 288
Ⅲ 日本の伝統的な行政裁量論のアプローチと実質的証拠法則 290
1 裁量の逸脱と濫用 290
2 効果裁量の「裁量の逸脱と濫用」 290
3 要件裁量の「裁量の逸脱と濫用」 291
4 要件裁量の統制手法 291
5 実質的証拠法則と明白の原則(manifest error rule) 292
Ⅳ 欧米の行政裁量 293
1 欧米と日本の行政裁量論の枠組の違い 293
2 欧米の要件裁量(事実認定)についての審査 294
3 欧米の効果裁量についての審査 299
4 欧米の行政裁量に関する従来の理解に対するコメント 301
Ⅴ 裁量統制の基準の再検討 303
1 行政裁量についての欧米の理論の応用可能性 303
2 「実質的証拠」の意義 304
3 日本流の合理性の基準・明白の原則 306
4 行政機関の事実認定に賛同できないが,違法との心証は
得られた場合の取扱 307
5 専門技術的な事項への裁量統制のあり方 308
6 経済分析の評価と裁量統制についての最近のEUの事例 309
7 効果裁量についての裁量統制 310
第3章 欧州委員会の事前聴聞手続313
Ⅰ はじめに 313
Ⅱ 調査の端緒 315
1 苦情申立人の位置付 315
2 苦情申立人の秘密保護 316
Ⅲ 欧州委員会の調査手続 317
1 情報収集権限 317
2 調査権限 317
3 供述調書を取る権限 317
Ⅳ 欧州委員会の聴聞手続 318
1 EUの事件処理手続とデュープロセス 318
2 防御権の保障 318
3 異議告知書の交付と答弁書 319
4 欧州委員会のファイルにアクセスする権利 320
5 共同防衛契約 321
6 口頭聴聞期日 322
7 利害関係人の告知聴聞を受ける権利 325
8 聴聞官の報告書(暫定版) 327
9 勧告委員会 327
10 仮差止命令 328
Ⅴ 共同体裁判所での審理 328
1 明白な違反の原則 328
2 立証水準 329
3 手続上の瑕疵の取扱 330
4 法務調査官制度 330
第4章 英独仏及び米国FTCの最新の競争法執行手続331
Ⅰ 欧州の聴聞手続の概要と最新動向 331
1 英独仏の執行手続の概要 331
2 フランスの執行手続 332
3 英国競争法の執行手続 333
4 ドイツの執行手続 335
Ⅱ 米国FTCの審判手続 341
1 米国FTCの審判手続の概要と最近の動向 341
Ⅲ 米国モデルと欧州モデルの比較 343
1 審判官の独立 343
2 公開・対審構造 344
3 行政処分の決定権限についての思想の違い 345
4 共通点 346
5 欧州モデルの合理性 346
第5章 日本の執行手続の比較法的観点からの評価348
Ⅰ 平成17年改正前の審判手続の問題点 348
1 審理の遅延の問題 348
2 独特の制度設計に対する独特の理論と批判 349
Ⅱ 平成17年改正後の事後審判手続の評価 351
1 平成17年改正後の事後審判手続についての2通りの評価 351
2 事後手続化に対する批判(手続的保障の後退論)についての
上杉教授の反論 352
3 現行手続における事前手続と欧州の事前手続の比較 354
Ⅲ 平成22年改正案とその評価 356
1 平成22年改正案 356
2 手続管理官を置いたことの意義 357
3 準司法的性格とルール・メーキング機能の問題 358
4 独立の審判官による判断を排除したことの意義 359
5 特例手続ではなく,通常の行政手続法の延長で
位置づけられることの意義 361
第6章 Quasi-judicialとは何か―準司法的手続・審判・
準司法的機関の意義の再構築363
Ⅰ 問題の所在 363
Ⅱ 審判・準司法的手続の伝統的意義と比較法的見地からの検討 364
1 「審判」・「準司法的手続」の伝統的意義 364
2 「審判」と「準司法的手続」の意義の再構成の必要 366
3 比較法的見地からの検討 367
4 控訴審が専属管轄になる場合の審判ないし準司法的手続の
意義 370
Ⅲ 審判・準司法的手続の意義の再構築 371
1 審判手続をとるメリットの面からの審判手続の意義の検討の
必要性 371
2 専門性の観点―行政裁量の回避 371
3 実質的証拠法則との関係 372
4 柔軟性・効率性・迅速性の観点と公開・対審構造の要否 373
5 裁定者の独立とルール・メーキング機能の観点 375
6 「審判」「準司法的手続」の意義の再構築 376
Ⅳ 準司法的機関の意義の再構築 377
1 準司法的機関の意義 377
2 準司法的機関と準司法的手続の関係 378
3 新手続と独立行政委員会制度の関係 379
Ⅴ 伝統的理論の功罪 380
結 語 383
第7章 行政調査における防御権と調査妨害384
はじめに 384
Ⅰ 問題の所在 385
Ⅱ EUの調査手続 386
1 証拠収集手段 386
2 調査権限の範囲と調査妨害に対する対抗手段 386
3 立入調査における弁護士の立会権 388
4 立会における弁護士の役割 388
5 欧州委員会の質問権と回答義務 389
6 ドイツの黙秘権・自己負罪拒否特権についての考え方と日本の
議論への示唆 390
7 弁護士依頼者特権 395
Ⅲ 日本の調査手続 396
1 強制調査と任意調査 396
2 刑事手続における保障の適用可能性 398
3 事情聴取と供述調書の位置づけ 399
4 事情聴取における弁護士の立会 403
5 調書の閲覧・謄写 407
6 弁護士依頼者特権 407
7 検査に対する不協力・妨害に対する制裁 414
Ⅳ 犯則調査手続 415
1 犯則調査手続の存在理由 415
2 犯則調査の場合の供述調書の意味 416
3 行政事件と犯則事件間の事件処理の移行 416
Ⅴ 弁護士立会を認める場合に必要な実務の改革 418
結 語 421
第3部 経済犯罪における証拠収集・立証手法・
サンクションのあり方―日米欧の独禁法事件の
執行の経験からの示唆
はじめに424
第1章 経済事件についてのサンクションのあり方―刑事罰へ
の過度の依存と裁量的課徴金ドグマの克服―426
はじめに 426
Ⅰ 現行制度のサンクションの枠組み 426
1 行政処分による金銭的制裁の例外性と非裁量性 426
2 「罰金」と「過料」「課徴金」その他の金銭的制裁の異同 428
Ⅱ 刑事罰中心の制裁体系がもたらす歪み 429
1 金銭的制裁は,刑事罰であるという考え方の不合理性 430
2 規制緩和による許認可権限(事前規制権限)の喪失―制度設計の
前提の変化 435
3 経済のグローバル化に対応する執行制度―国際的執行―の
観点 438
4 課徴金の非裁量性がもたらすゆがみ 439
5 小 括 445
Ⅲ 制裁についての比較法的検討 446
1 欧州の考え方 446
2 ドイツの考え方 446
3 米国の考え方 448
Ⅳ 行政事件と刑事事件の役割分担のあり方 449
1 行政による裁量的金銭的制裁を制度設計する場合の仕組み 449
2 刑事事件として取り上げる案件の射程 452
3 国際的執行における公取委と検察庁の連携のあり方 455
結 語 456
第2章 経済犯罪における司法取引的手法の不可欠性458
Ⅰ 村木事件の教訓と問題の概観 458
1 供述調書依存の刑事司法実務を維持することの限界性 458
2 村木事件の教訓 458
3 村木事件の事件処理のアプローチの問題 459
4 供述調書依存の立証方法が行政事件に拡散されている問題 460
5 裁判所の側の問題 461
6 司法取引の意義(和解型と訴追免除合意型)と必要性 462
Ⅱ 供述調書依存の刑事司法実務と黙秘権・自己負罪拒否特権
との関係 463
1 行政事件と刑事事件の証拠収集手法の相違 463
2 なぜ供述調書に依拠する実務が可能なのか―取り調べ受忍
義務を肯定する実務 464
3 逮捕勾留を前提とすることの問題 467
4 自白調書と検面調書の特信情況を安易に認める問題 468
5 直接主義・公判中心主義に反するという問題 469
6 取調べ受忍義務を肯定する実務の論理 470
7 黙秘権・自己負罪拒否特権についての欧米の考え方 474
8 黙秘権の淵源 477
9 弾劾主義か糾問主義かという思想の位置づけ 482
10 供述調書に頼る実務がもたらしたもの―「精密」司法かラフ・
ジャスティスか 485
Ⅲ 司法取引的手法の有用性とカルテル事件の経験 486
1 経済事件処理手法としての不可欠性 486
2 国際的執行における不可欠性 487
3 カルテル事件の経験 488
Ⅳ 司法取引に関する解釈論の再検討 491
1 日本の学説・判例の状況 491
2 ロッキード事件最高裁判決 493
3 ロッキード事件をどのように解釈すべきか 494
4 約束による自白についての判決 496
Ⅴ 訴追免除の撤回 499
1 訴追免除合意型の司法取引で,訴追免除される要件と撤回 499
2 米国の経験―ストルト・ニールセン事件 500
結 語 501
第3章 経済事件における情況証拠・客観証拠の活用
―刑事事実認定の現代化の方向性―502
Ⅰ 刑事事実認定の構造的問題点 502
Ⅱ 刑事事件一般での問題 502
1 情況証拠・客観証拠からの立証がほとんど行われないのは
なぜか 502
2 犯行態様まで,「合理的疑いを入れない程度」の立証対象と
考えがちであること 503
3 主観的要件の立証は供述によらなければ立証できないと
考えがちであること 506
4 立証水準が高くなりすぎていることが疑われる問題 506
5 情況証拠からの認定の不確実性 511
6 裁判官の側の問題 512
Ⅲ 経済事件・独禁法事件の立証 514
1 経済事件の立証対象と目撃者のいない殺人事件の立証の
困難性との比較 514
2 独禁法のカルテル事件の教訓 518
Ⅳ ポリプロピレン事件とごみ焼却炉事件 523
1 ポリプロピレン事件とごみ焼却炉事件の意義 523
2 ポリプロピレン事件(PP事件) 524
3 ゴミ焼却炉入札談合事件 528
4 主張変更・訴訟手続上の問題 533
終わりに539