新 消費者法研究
「第4回津谷裕貴・消費者法学術実践賞」受賞

新 消費者法研究

脆弱な消費者を包摂する法制度と執行体制
菅 富美枝 著
定価:4,400円(税込)
  • 在庫:
    在庫があります
  • 発行:
    2018年02月28日
  • 判型:
    A5判
  • ページ数:
    236頁
  • ISBN:
    978-4-7923-2712-5
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内容紹介

目 次


はしがき i
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第1章 「脆弱な消費者」と包摂の法理 1
1 本書の基本的立場
――消費者法と成年後見制度との連関を意識して―― 1
2 さまざまな消費者脆弱性と「包摂的な」解決の可能性
――イギリス法を素材として―― 4
⑴ 「取引方法に関する脆弱性」と消費者保護のあり方――「2008年不公正な取引行為からの消費者の保護に関する(2014年改正)規則」 6
⑵ 契約締結場面における「状況・関係性に関する脆弱性」と立証責任のあり方 10
⑶ 情報の取得,理解,及び,情報を用いた意思決定など「選択・決定に関する脆弱性」と支援のあり方――「自己決定支援」と社会的包摂 16


第2章 EU法と「脆弱な消費者」概念 21
1 はじめに 21
2 2005年不公正な取引方法に関するEU指令における「脆弱な消費者」 22
3 「社会的排除」,「社会的包摂」概念との関連性 25
4 情報提供のあり方との関連性 28
5 小括――「脆弱な消費者」の包摂的統合に向けて 29


第3章 2015年消費者権利法の新体制⑴
――不公正な取引行為をめぐる
契約法上の効果―― 35
1 はじめに 35
2 背景にあるEU法及びその解釈
――「完全なる調和」,「商品の移動の自由」との関係 37
3 民事救済を受けるための要件 38
4 救済内容
――3つの権利 42
⑴ 撤回権 43
⑵ 代金減額請求権 44
⑶ 損害賠償請求権 45


第4章 2015年消費者権利法の新体制⑵
――不公正契約条項の規制,及び,契約への不適合における消費者の権利―― 47
1 はじめに 47
2 不公正な条項の規制 48
3 契約への適合が認められない場合の救済手段 53
⑴ 物品の販売・供給契約 53
⑵ サービス供給契約 56
4 小括 57


第5章 イギリスにおける広告規制のメカニズム
――自主規制から公的機関による
監視・抑止・救済まで―― 61
1 はじめに 61
2 刑事的規制
――誤解を与える広告を処罰する法律―― 62
⑴ 2006年詐欺法 63
⑵ 不公正な取引行為からの消費者保護に関する2008年規則 63
⑶ 広告に対する刑事規制の執行を担う組織――取引基準局 64
3 私法的救済 66
⑴ 誤解を生じる広告によって契約締結に至った場合の救済の可能性 66
⑵ 広告通りの品物やサービスが受けられなかった場合の救済の可能性 70
⑶ 価格・追加料金の不明瞭,不透明な広告によって契約を締結した場合の救済の可能性――不公正な取引行為と不公正な契約条項の交差する場面 74
4 自主規制を基礎としたメカニズム
――広告基準機構 76
5 小括
――自主規制メカニズムの確立―― 82


第6章 イギリス消費者法における執行メカニズム
――消費者被害の抑止と救済―― 87
1 はじめに 87
2 イギリス消費者法の執行体制 88
⑴ 概要 88
⑵ 執行モデル 89
⑶ 執行主体 91
3 行政的執行メカニズム 99
4 民事的執行メカニズム 102

5 刑事的執行メカニズム
――取引基準局の役割と機能 106
⑴ 概要 106
⑵ 営業所外で行われる契約勧誘行為の規制 110
⑶ 被害回復のための縦断的,横断的連携の実践 112
⑷ 地域共同体における被害抑制政策 114
6 小括 119


第7章 自己決定支援と成年後見制度 123
1 はじめに 123
2 自己決定支援を保障するイギリスの法制度
――2005年意思決定能力法の概要 124
⑴ 2005年意思決定能力法の基本原則 124
⑵ 2005年意思決定能力法の代行決定規定にみる「主観的」最善の利益論 126
⑶ 「本人を中心に置く(person-centred)」代行決定――「本人中心主義」の提唱 128
3 自己決定支援体制と代行決定制度の統合的連関
――自己決定支援の発想から引き直した,代行決定制度の再生 130
4 小括――日本法における自己決定支援システム導入の実現に
向けて 132


第8章 判断能力の不十分な者との取引と
公序良俗違反――日本法の場合―― 139
1 はじめに 139
2 判断能力の不十分な者との取引と民法90条との関係
――最近の学説と下級審裁判例 140
⑴ 暴利行為論――概観 141
⑵ 最近の裁判例の分析 144
3 判断能力低下状況で繰り返された売買契約における
公序良俗違反の成立要件 150
⑴ 公序良俗論における主観的要件に関する検討――濫用の対象 150
⑵ 公序良俗論における客観的要件に関する検討Ⅰ――「不要性」の判断 153
⑶ 公序良俗論における客観的要件に関する検討Ⅱ――「不相当性」の問題 155
⑷ 考察 158
4 過量販売取消権の導入と今後の展望 160
5 小括
――「包摂的な」消費者法制をめざして 162


第9章 契約当事者間における
交渉力格差へのつけ込みと契約の有効性
――イギリス法における「非良心的取引」及び
「過度な影響力の行使(不当威圧)」
取消法理の現代的機能への着目―― 165
1 はじめに 165
2 当事者間に「格差」(有利・不利)が生じている場合における「状況・関係性の濫用」と契約の有効性 166
⑴ イギリスの判例法における「非良心的取引」取消法理の淵源 166
⑵ 「非良心的取引」取消法理の理論的考察〈1〉 169
⑶ 「非良心的取引」取消法理の理論的考察〈2〉――「過度な影響力の行使(不当威圧)」取消の法理との峻別と統合 176
3 契約締結過程における助言の法的位置づけ
――影響力の中和と解消に向けて 183
⑴ イギリス判例法における助言の位置づけ――概要 183
⑵ 「非良心的取引」取消の法理の拡大の可能性 185
⑶ 契約リスク(配分)論
――助言を組み入れるための法的理論構成 189
4 小括
――日本法への示唆 193


最終章 「脆弱な消費者」を包摂する社会へ 203
1 本書のまとめ 203
2 消費者法体制,成年後見法体制,虐待保護体制の連関 205
⑴ 行為能力制限を理由とする取消権の行使と消費者法上の取消権の行使 205
⑵ 被害の予防・抑止≡早期発見≡被害拡大の阻止≡被害回復のメカニズムの構築 206
⑶ 事例紹介 208
3 結語 211


事項索引 215
イギリス制定法,EU法,条約一覧 220