憲法判例のエニグマ

憲法判例のエニグマ

大林啓吾/柴田憲司 編
定価:7,150円(税込)
  • 在庫:
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  • 発行:
    2018年04月25日
  • 判型:
    A5判
  • ページ数:
    418頁
  • ISBN:
    978-4-7923-0632-8
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内容紹介

目  次
第1部 変更をめぐるエニグマ
第1章 立法事実の変更――立法事実を変更することはできるのか?[武田芳樹]3
Ⅰ 本章の課題……3
1 素材となる最高裁判決……3
2 規制目的の認定と立法事実の審査……5
3 本章の結論……7
Ⅱ 3つの最高裁判決を読み直す……7
1 昭和30年大法廷判決……8
2 平成元年の2つの小法廷判決……10
3 最高裁判例の再整理……16
Ⅲ 規制目的の認定と立法事実……18
Ⅳ 規制手段としての必要性と合理性の審査……20
Ⅴ 結びに代えて……23
第2章 平等違反基準の変更なき変更――目的手段審査か総合衡量か?[白水 隆]27
Ⅰ 問題意識……27
Ⅱ 人格価値の平等に基づく判断枠組みと目的手段審査の登場……29
1 尊属傷害致死罪合憲判決(最大判昭和25年10月11日刑集4巻10号2037頁)……29
2 待命処分判決(最大判昭和39年5月27日民集18巻4号676頁)……30
3 尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭和48年4月4日刑集27巻3号265頁)……31
Ⅲ 目的手段審査の進展……32
1 サラリーマン税金訴訟判決(最大判昭和60年3月27日民集39巻2号247頁)……32
2 平成7年非嫡出子法定相続分合憲決定(最大決平成7年7月5日民集49巻7号1789頁)……34
3 国籍法違憲判決(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁)……35
Ⅳ 総合衡量と目的手段審査の拮抗……38
1 平成25年非嫡出子法定相続分違憲決定(最大決平成25年9月4日民集67巻6号1320頁)……38
2 再婚禁止期間一部違憲判決(最大判平成27年12月16日民集69巻8号2427頁)……40
Ⅴ まとめと今後の課題……42
第3章 政教分離違反基準の変更なき変更――政教分離違反の審査基準は本当に変更されていないのか?[坂田隆介]47
はじめに……47
Ⅰ 先例の確認……48
Ⅱ 従来の判断枠組みとの関係……52
1 空知太神社事件判決及び富平神社事件判決以降の判決の特徴……52
2 審査基準から着眼点への解体……54
Ⅲ 政教分離違反事案の類型化……58
1 学説による事案の類型化……58
2 目的効果基準の使い分け?……60
3 「目的効果基準」から総合的判断の類型化へ……65
むすび……69
第2部 言葉をめぐるエニグマ
第1章 消えた言葉のゆくえ――判決の文言をどこまで信じていいのか?[巻美矢紀]73
はじめに――森林法違憲判決という迷宮……73
Ⅰ 森林法違憲判決と証券取引法判決……74
1 森林法違憲判決の概要……74
2 証券取引法判決の概要……77
Ⅱ 両判決の判断枠組みに関する考察――判断枠組みは異なるのか?……78
1 第3期の問題提起……78
2 合憲性審査の判断枠組みとしての適格性……79
Ⅲ 財産権論と諸判決との反照的均衡……81
1 証券取引法判決以降の諸判決の検討……81
2 財産権の特性――薬局距離制限違憲判決との比較……83
3 日本流の判断枠組みの構築?……84
Ⅳ 残された謎……87
1 置き去りにされた森林法違憲判決……87
2 森林法違憲判決の判断枠組みの厳格度……88

第2章 「尊重」の意味――「尊重に値する」ことは権利が認められたことにはならないのか?[御幸聖樹]91
はじめに……91
Ⅰ 判例における「尊重」の用法の類型……93
Ⅱ 憲法が特定の権利・利益を尊重するという用法……94
1 包括的基本権……94
2 精神的自由……95
3 経済的自由……101
4 人身の自由……102
5 社会権……103
6 小括……105
Ⅲ 法律が憲法上の権利・利益を尊重しているという用法……107
1 判例の整理……107
2 小括……108
Ⅳ 裁判所が特定の機関・団体を尊重するという用法……108
1 立法裁量……108
2 法廷警察権……110
3 司法権の限界……111
4 小括……112
おわりに……113

第3章 言葉の違いの意味――「法律上の争訟」と「法律上の係争」は何が違うのか?[柴田憲司]115
Ⅰ 問題の所在――司法権の範囲(概念・内在的限界)と限界(外在的限界)……115

Ⅱ 「法律上の争訟」と「法律上の係争」,「部分社会」論……117
1 「法律上の争訟」の定式……117
2 「法律上の係争」という概念……120
3 「法律上の争訟」と「部分社会論」の関係……123
4 「法律上の係争」と「法律上の争訟」との関係……125
Ⅲ 「部分社会論」のその後――判例の全体傾向……127
1 部分社会論は司法権の「範囲(法律上の争訟)」論か「限界」論か……127
2 地方議会の内部問題……129
3 政党の内部問題……131
Ⅳ 宗教団体の内部問題……132
Ⅴ 司法権の「限界」論とは……134
1 裁量論……134
2 統治行為論……134
3 自律権論……135
Ⅵ まとめ……136
第3部 時をめぐるエニグマ
第1章 時の変化――社会状況の変化は違憲の理由になるか?[櫻井智章]141
はじめに……141
Ⅰ 判例の状況……141
1 主要な判例……141
2 判例の傾向……144
Ⅱ 判例の検討……145
1 立法事実論……145
2 憲法訴訟論……148
3 違憲審査論……153
おわりに……160

第2章 終わらない事情――いつになれば無効になるのか?実際に無効となればどうなるのか?[山本真敬]161
序……161
Ⅰ 判例の概観……163
1 基点――1976年判決……163
2 その後の展開……165
Ⅱ 検討――いつになれば無効になるのか?実際に無効となればどうなるのか?……174

1 現在も「憲法の所期するところに反する」事態は生じるか?……175
2 無効の基準と無効の効果をどう考えるか……179
結……185

第3章 技術の進歩に対する温度差――インターネットの存在をどうみるか?[西土彰一郎]187
はじめに……187
Ⅰ 出発点としての在外邦人選挙権訴訟(判例①)――自縄自縛?――……188
Ⅱ インターネット上の名誉毀損……188
1 名誉毀損の判断枠組みと論点……188
2 最1小決平成22年3月15日刑集64巻2号1項(判例②):刑事事件……189
3 最2小判平成24年3月23日集民240号149頁(判例③):民事事件……192
4 「プロの法」と「アマチュアの法」?……194
結びにかえて……197
第4部 裁量統制をめぐるエニグマ
第1章 裁量の主体――行政裁量と立法裁量は同じなのか?[阿部純子]203
はじめに……203
Ⅰ 堀木訴訟を引用した老齢加算最判……204
1 老齢加算最判が堀木訴訟を引用したことの意味とは……204
2 憲法25条の「裁量」の不明確性……207
Ⅱ 憲法25条による行政裁量の「枠」づけ論の不在……212
1 憲法25条と判断過程統制手法……212
2 老齢加算最判の裁量論……216
おわりに……220

第2章 制度審査――制度審査とは何を審査するのか?[佐々木くみ]223
はじめに……223
Ⅰ 婚姻の自由……225
1 婚姻の自由の制約の問題か制度構築の合理性の問題か……225
2 前\_r・\/国\_r・\/家\_r・\/的\_r・\/自\_r・\/由\_r・\/としての婚姻そのものと法\_r・\/制\_r・\/度\_r・\/としての婚姻の自由……225
3 婚姻の自由の直接的な制約……226
4 婚姻内容決定の自由……228
Ⅱ 氏の変更を強制されない自由……228
1 「名」から切り離された「氏」と,「意思」……228
2 憲法上の権利性の否定の背景……229
3 「氏の変更を強制されない自由」の憲法上の権利性の否定……230
Ⅲ 制度準拠的思考……231
1 制度準拠的思考……231
2 法廷意見が示した,家族制度に関する立法裁量の憲法24条適合性審査……231
3 制度準拠的思考の指標?……232
4 法廷意見の制度準拠的思考の限界と可能性……234
5 審査する制度の範囲の設定――過剰と過小――……235
6 望ましい選択肢と例外……236
7 司法の役割とベースライン論……237
おわりに……239

第3章 行政裁量統制――委任の範囲を逸脱したかどうかを問う際に憲法的配慮はなされているのか?[太田航平]243
Ⅰ 問題の所在……243
Ⅱ 裁量の逸脱濫用が認められなかった事例……244
1 銃刀法違反事件(最1小判平成2年2月1日民集44巻2号369頁)……244
2 老齢加算廃止訴訟(最3小判平成24年2月28日民集66巻3号1240頁)……247
Ⅲ 裁量の逸脱濫用が認められた事例……251
1 14歳未満接見禁止違法事件(最3小判平成3年7月9日民集45巻6号1049頁)……251
2 児童扶養手当施行令違法事件(最1小判平成14年1月31日民集56巻1号246頁)……255
3 薬事法ネット事件(最2小判平成25年1月11日民集67巻1号1頁)……258
Ⅳ 結語……261
第5部 採否をめぐるエニグマ
第1章 自己情報コントロール権のゆくえ――最高裁は自己情報コントロール権を認めているのか?[高橋和広]267
はじめに……267
Ⅰ 公権力による個人情報の取扱いと自己情報コントロール権……269
1 公権力による個人情報の収集と憲法との関連性……269
2 「私生活上の自由」の内実……270
3 公権力による個人情報取得行為に対する制限……271
4 住基ネット判決……276
まとめ……280
Ⅱ 私人による個人情報の取扱いと自己情報コントロール権……282
まとめ……287

第2章 神出鬼没の私人間効力――私人間効力はどのような場合に登場するのか?[榎 透]289
Ⅰ 私人間効力とは何か……289
Ⅱ 基本判例としての三菱樹脂事件最高裁判決……290
1 三菱樹脂事件最高裁判決を読む……290
2 私人間効力と価値充填……293
Ⅲ 三菱樹脂事件判決を引用する諸判決について……294
1 引用箇所について……294
2 憲法上の人権規定の対公権力性の確認……295
3 「社会的に許容しうる限度を超える侵害行為」の確認……296
4 国の私法的行為……299
5 小括……300
Ⅳ 私人間効力の場面と思われるのに,三菱樹脂事件判決を引用しない諸判決……301

1 憲法に言及する判決……301
2 憲法に言及しない判決……303
Ⅴ 私人間効力が登場しない場面……303
1 団体vs構成員:八幡製鉄事件と南九州税理士会政治献金事件……303
2 表現の自由vsプライバシー……306
Ⅵ まとめ……307

第3章 気まぐれの「参照」――どのような場合にいかなる意味で外国法や条約を「参照」するのか?[手塚崇聡]309
はじめに……309
Ⅰ 日本の最高裁判例における外国法や条約の「参照」……311
1 外国法の「参照」……311
2 条約の「参照」……316
Ⅱ 最高裁における「参照」の特徴と意義……321
1 外国法や条約の「参照」の特徴……321
2 外国法と条約の「参照」の類似点と両「参照」事例……325
3 一連の非嫡出子関連訴訟にみる「参照」の意義……326
4 補足意見や反対意見等における「参照」……328
おわりに……330

第4章 主張適格の疑問――違憲主張の適格は問題になっているのか?[柴田憲司]331
Ⅰ 議論枠組み……332
Ⅱ 第三者所有物没収事件(最大判昭和37・11・28刑集16巻11号1593頁)……335
Ⅲ その後の判例の展開……338
1 岐阜県青少年保護育成条例事件(最判平成元・9・19刑集43巻8号785頁)……338
2 宗教法人解散命令事件(最決平成8・1・30民集50巻1号199頁)……339
3 裁判員制度の合憲性(最大判平成23・11・16刑集65巻8号1285頁)……341
Ⅳ 「法令の不明確性・過度広範性」に関する判例……342
1 当事者(被告人)に適用される限り不明確なところはないとした判例……343
2 不明確・過度広範の主張をとりあげて審査した判例……344
3 若干の分析……345
Ⅴ 違憲主張の適格という問題設定の適否・要否……347
1 実体法の解釈論に還元されうる「法律上の主張」……347
2 裁判所の職権での憲法判断と,裁判所の応答義務……348
3 まとめにかえて――憲法解釈上の要請か否か……349

第5章 回避の回避――憲法判断回避のルールは使われているのか?[大林啓吾]353
序……353
Ⅰ 純粋型憲法判断回避――判例(裁判例)の実態……354
1 下級審の判断……355
2 最高裁……363
Ⅱ 違憲判断回避のルール……368
1 最高裁……368
2 憲法適合的解釈……371
後序……373
第6部 判断方法をめぐるエニグマ
第1章 合憲違法の意味――適用違憲と適用違法の区別は可能か?[山田哲史]377
はじめに……377
Ⅰ 用語の整理……378
1 適用審査・文面審査……378
2 適用違憲・処分違憲・処分違法……379
Ⅱ (裁)判例の分析……382
1 医療類似行為事件最高裁判決……382
2 猿払事件第一審判決……386
3 堀越事件最高裁判決……389
おわりに……392