中国夢の法治
―その来し方行く末―但見 亮 著
定価:6,600円(税込)-
在庫:
在庫があります -
発行:
2019年09月20日
-
判型:
A5判上製 -
ページ数:
320頁 -
ISBN:
978-4-7923-3391-1
書籍購入は弊社「早稲田正門店インターネット書店」サイトでの購入となります。
内容紹介
[目 次]
はしがきi
初出一覧xiv
第1章 「中国夢」 ―習時代が求める「信仰」のかたち
はじめに 1
第1節 テキストから見る「中国夢」 2
1 「夢」のはじまり 2
2 「中国夢」演説 3
第2節 「中国夢」の世界像 5
1 国家=「富強」 5
2 社会=「公平・正義・法治」 6
3 人民=偉大な民族(の一員) 6
第3節 「中国夢」の目的と効果 8
1 「信仰」と「真善美」 8
2 「敵」の摘出=「普遍的価値」 9
3 「専制」と「寛容」 11
4 「中国夢」と「共産夢」 13
第4節 「夢」のゆくえ 15
1 社会主義の偶像化 15
2 アンビバレンスと中庸 16
3 「信仰」の険しい道 18
おわりに 20
第2章 「案例指導」の現状と機能 ―中国的司法の「権威」と「信頼」
はじめに 22
第1節 「案例指導」の形成 23
1 最高人民法院による「案例」の内部発布 23
2 「最高人民法院公報」による「案例」の定期的公布 24
3 「案例指導」書の出版とその広がり 26
4 「案例指導」の制度化への模索 28
第2節 「案例指導」の現状と理論 30
1 「案例」と「判例」 30
2 抽象化と原文性 32
3 「指導」―「案例」の拘束力 34
4 「指導」の範囲と方法 37
5 まとめ 38
第3節 「案例指導」の問題と可能性 39
1 権威と実用のジレンマ 39
2 司法行政とルールの潜在化 41
3 「法官造法」と司法解釈の矛盾 44
4 「同案同判」の猛威と司法改革の行方 46
おわりに 49
第2章 補足資料 52
最高人民法院「指導性案例」(解題) 52
指導性案例「O某の故意殺人事件」 54
(1)裁判要旨 54
(2)基本的裁判事実 54
(3)裁判結果 55
(4)裁判理由 55
(5)評釈 56
第3章 「依法治国」と司法改革 ―中国的司法の可能性
はじめに 58
第1節 党による「依法治国」の推進 59
1 「重大決定」の概要 59
(1)「総目標」 59
(2)原 則 60
(3)憲法の実施 60
(4)「依法行政」 61
(5)「大衆」と「法治工作隊列」 62
(6)党と党員 63
2 「重大決定」における司法 63
(1)「合法・独立・公正」 63
(2)管轄改革 64
(3)公開と監督 65
3 まとめ=党が示すもの 65
第2節 人民法院による「改革意見」 67
1 「改革意見」の経緯 67
(1)沿 革 67
(2)「正式に公布」の謎 68
(3)「政法機関」の統合的協調 69
2 「改革意見」の内容 70
(1)構造と目的 70
(2)「地方要素」の排除 71
(3)公判中心主義 72
(4)管理と責任 72
(5)公開と「説理」 73
3 まとめ=司法への信頼? 73
第3節 司法の行方 74
1 改革の射程 74
2 「反腐敗」と司法 76
3 「安定維持」と司法 77
4 司法がめざすもの 79
おわりに 81
第4章 宅地使用権問題とその周辺 ―物権法制定における議論を中心に
はじめに 83
第1節 宅地使用権概観 85
1 宅地使用権を巡る制度史 85
2 現行規定概観 87
(1)憲法と法律 87
(2)行政法規,地方性法規,規則及び政策 88
(3)司法解釈 90
3 理論的位置づけ 90
第2節 物権法の限界 93
1 制定過程の議論 93
2 現状の問題と変化の兆し 95
3 まとめ 96
第3節 「小産権房」と集団土地使用権 97
1 「小産権房」問題 97
2 集団土地使用権の直接譲渡 99
第4節 宅地使用権再考 102
1 社会保障の虚と実 102
2 理論的重点の変化 104
おわりに 107
第4章 補足資料 ─宋庄画家村事件─
はじめに 事件の背景 110
1 一審の経緯と判決 111
(1)事実の概要 111
(2)原告・被告の主張 111
(3)一審判決 112
2 二審判決 112
(1)契約の有効性について 112
(2)「損失の賠償」について 112
(3)別訴の結果 113
3 分析と評釈 113
(1)問題の所在 113
(2)判決の論理的枠組み 113
(3)判決に対する批判 115
4 若干の検討 117
第5章 中国における公法と私法の関係 ―「美濃部理論」を手がかりに
はじめに 120
第1節 中国における「美濃部理論」 121
1 引用の頻出と価値 121
2 引用の傾向とその理由 122
(1)「公法と私法」への集中 123
(2)権威のつまみ食い 124
(3)引用・言及の時期 125
3 まとめ―契機としての「公法と私法」 125
第2節 公法私法論の様相 126
1 公法私法関係論の沿革 126
(1)計画経済下の私法の欠缺 126
(2)市場経済下の私法の可否 128
(3)公法私法区分論の興隆 131
2 物権法違憲論争と公私法融合論 134
(1)「姓社姓資」の実像 134
(2)「姓公姓私」の限定性 136
(3)物権法「公私法融合」論 138
3 公私法融合と公法私法の区分 142
4 現状が求める理論的枠組み 144
5 まとめ―公法学という問い 147
第3節 「統一公法学」の課題と可能性 147
1 「統一公法学」の様相 147
2 「民主集中制」と「統一公法学」 150
3 共産党と公権力 152
おわりに─「美濃部」の輝きとその意味 154
第6章 中国における住民参加の現状と機能
はじめに─「公衆参与」熱の示すもの 158
第1節 住民参加手続─規定の内容 159
1 規定の基調―宣言・綱領的性格 160
2 参加の主体 160
3 参加の対象(領域) 161
4 参加の態様(形式) 162
5 効果ないし保障 162
6 まとめ 163
第2節 住民参加の現状とその原因 163
1 運用の現実―規定スタンスの反映と拡大 163
2 「参加」をとりまく環境 165
3 まとめ 167
第3節 「公衆参与」の意義ないし機能 168
1 理念的側面 168
2 中国法の住民参加手続の機能 170
3 現実と理想の架橋 171
第4節 住民参加を巡る新たな動き 172
1 「広州市規則制定住民参加方法」の制定 172
2 行政側の意識の変化 173
3 住民参加の機能―「調和社会」に向けて 174
4 住民参加の試金石―環境・開発領域 177
おわりに 178
第7章 「信訪」の二面性 ―制度と現実が示すもの
はじめに 180
第1節 信訪制度の構造 181
1 基本法規=信訪条例 181
2 具体化・拡大=「地方性法規」と「規章」 184
3 権威による担保・促進=「党規」 186
第2節 「信訪」の二面性 188
1 「信訪工作」の二面性―暴力と懇願 188
2 「信訪者」の二面性―騒乱と信仰 190
3 「信訪評価」の二面性―賞賛と痛罵 192
4 「信訪」の日常と「非正常」 193
5 構造的原因と改革の不可避 195
第3節 「信訪」の改革と展望 198
1 意識の変化 198
2 分化の兆し―「渉訴信訪」と司法 200
3 改革の展望 202
おわりに─「信訪」とマイノリティー 203
第8章 中国の行政不服審査制度改革 ―上海市行政不服審査委員会の調査を中心に
はじめに 206
第1節 制度概要 207
1 法規の構造 207
2 規定の概要 208
(1)目 的 208
(2)「審査機関」と「審査機構」 208
(3)申立の対象 210
(4)審理・裁決 211
第2節 問題状況 212
1 規定上の問題 212
(1)大量の審査機関と形骸的審査機構 212
(2)「具体的行政行為」と解釈の多義性 213
(3)原則・目的と規定のズレ 214
2 運用の現実 215
(1)申立の少なさ 215
(2)維持率の読み方 217
(3)公信力のなさ 218
第3節 改革の現状と課題 219
1 改革の概況 219
(1)導入の経緯 219
(2)改革の目的と手段 220
2 上海市行政不服審査委員会の調査 221
(1)制度の概要 221
(2)聞き取り調査から 225
3 課題と展望 230
(1)委員会制度の問題点 230
(2)陳情・訴訟とのすみわけ 234
(3)調和最優先への疑義 237
(4)全体構造からの懸念 239
おわりに 240
第9章 「中国夢」的「一国二制度」 ―香港の「宣誓風波」事件をめぐって
はじめに 242
第1節 事件の概要 242
1 争点と双方の主張 243
2 「解釈」と「説明」 244
3 判決の内容 245
4 小括―「解釈」の示すもの 247
第2節 「解釈」の特徴と問題点 248
1 請求(主体)と時期 248
2 解釈の遡及効 250
3 解釈の根拠とその範囲 250
4 解釈の実質・程度 252
5 解釈の合理性 253
6 まとめ―「解釈」の万能性 255
第3節 問題の所在と展望 256
1 権限と権力 256
2 正当性と正統性 258
3 主権と主権者 260
4 法系と法治 262
5 「中国夢」と「一国」 265
おわりに 268
第10章 協商民主と信用社会 ―中国夢の「人民」と「公民」
はじめに 270
第1節 協商民主の道 271
1 人民の求める民主 271
2 不思議な質問と結論 272
3 「中国特色」的「協商民主」 274
4 まとめ―「人民の意思」としての協商民主 278
第2節 「社会」の枠組み 279
1 「社会」の構築 279
2 「社会」の機能 281
3 社会の「公」性 283
4 まとめ―「公民」はどこに 284
第3節 新たな公民像の展望 285
1 アプローチの変化 285
(1)代議民主への幻滅 285
(2)「参加」の二面性 286
(3)「公民社会」の死 287
2 あるべき「公民」 289
(1)公民の教育 289
(2)公民と「法治」 290
3 「信用社会」の建設 291
4 展望―信用なき「信用社会」の行方 294
おわりに 296
参考文献 299
事項索引 302